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死にかけ転移者、剣の才能あったので冒険者やってます〜成り上がり冒険譚〜  作者: 寒い
第三章 交易国家ラクスティア

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ゴミ掃除②

「う、うおぉぉぉ!」


か細い声で、それでも力を振り絞って雄叫びを上げて冒険者の男を押し倒そうとタックする。

あまりに無謀だ。

相手は冒険者で、体格もよく、武器も持っており、しかも数人いる。

それに比べて男の方はやさせ細って、武器もなく、周りに味方もいない。

それでも彼は、死にに行く様な物だと分かっていても、大切な者を守る為に、立ち向かう。

彼を支える大切な存在を思い出し、勇気を振り絞る。

その姿は、見る人によっては人々や大切な故郷や仲間を守るために、暴虐無人な圧倒的強さを誇る魔王に挑む勇者のような話を思い出すかもしれない。

そして、最終的には死闘の末勇者が勝ち、平和な世界が訪れる。そんなお伽話のような話に。


「汚ねぇんだ、よっ!」

「ごはっ!」


が、現実はそんなに甘くは無かった。

男が冒険者にタックルしようと正面から向かっていくとその勢いを利用されて腹を正面から蹴られ、後ろに勢いよく倒れる。


「この状況で歯向かうとかあいつ死にてえのか?」

「ぎゃははは! お前きったねえ!」

「うるせえ! おいてめぇ、今俺に触れようとしたか? ゴミの分際でよお。お前は奴隷の様に従順に働いとけばいいんだよ!」

「ぐっ、うっ、娘は・・・娘だけは、絶対に・・・・・・」

「はっ! やっぱり娘居るんだな!」

「・・・え?」


先ほど娘を見かけたと言った男が、急に笑顔になる。


「あ? さっきのははったりか?」

「いやいや、確かに似てる奴が若い女と歩いてるのは見たけどよ。こんなに大勢の人間が暮らす街ではっきり覚えてるわけねえじゃねえか。だからもしかしたらと思って言ったんだけど、さっきの反応と言葉から、娘がいるのは確定だな!」

「やるじゃねえか! いいね! おいクソじじい。てめーは俺を怒らせたからな。てめーの大切な娘、見つけて目の前で犯してやっ」

「おらああああ!」

「ぐああっ!! いってえな! 誰だ俺を殴ったのは殺されてえのか!?」


汚い口で汚い言葉を紡いでいた冒険者の男が顔面を殴られ倒れ込む。

仲間であろう男達やギルドにいた冒険者達も驚きを隠せず、ギルド内が静まり返ると、男を殴った奴は言った。


「さっきから話聞いてたけどもう我慢できねえ! エリックいいよな!?」

「ふぅ・・・ああ、いいよ。ライナー。僕もムカついていた所だ」


ライナーだった。

男の人が蹴られた時点でほぼ立ち上がっていて、止めていた筈のエリックは最後にはライナーを離した。

エリックも相当苛立っていたのだろう。

正直俺もだが、マナやセラもいるのに、勝算が有るのかも分からないのに突撃するのはよくないな。

まぁ、今回は俺が居るから大丈夫だろう。

恐らくリーダー格である戦闘の男の身のこなし的にも、戦えば楽勝だろう。


「クソガキ共が! 英雄気取りか!? 調子のんじゃねえぞ! やれ! お前ら!」

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