交易都市ラクスティア③
ダスティン家の紋章を見せると、特に確認も無くあっさりと中へと入れてくれた。
他の街よりも検問が雑だ。
他の街は紋章を確認してからだけど、ここではそれすら無かった。
少し疑問に思いながらも、街の中へと入っていく。
どんな光景が広がっているのだろうと思っていたが、想像よりかは他の街で見てきた光景とあまり差異がないように感じる。
違うところと言えば冒険者や商人、そして亜人が多い事だろうか。
それに、中に入ってみると案外人も多い事が分かった。
「何か、思ってたより普通ですね」
「・・・・・・まぁ今の所はそうだね。とりあえず全員が休める宿を確保しに行こうか」
「ですね」
と言う事でまずは宿を確保しに行こうと思う。
ーーー
「この辺宿多いわね! すぐに見つかって良かったわ!」
「そうだな。ガルドさん達も同じ宿で部屋を取れたようだし良かった」
この街はやけに宿が多いな。
街中を歩いていると、頻繁に宿を見かける。
それでも殆どが満室だったから、それほど需要があるのだろう。
全員が一緒の宿を取れたのは運が良かった。
部屋割りはオルディアに居た時同じだ。
「アレス君、ご飯食べに行こうか」
ドアをノックされ、部屋の外からガルドの声が聞こえる。
「すぐ行きます! アルト、アリサ、準備するものあるか?」
「今すぐ行くわ!」
ドンっとアリサが勢いよく扉を開ける。
「アルト君とアリサちゃんも居たんだね。先にアレス君を呼びに来て良かったよ」
「アルト! アレス! お前らの早く行くぞ!」
グレンがガルドの横から顔出し、2人を急かす。
「すいません、準備出来ました。行きましょう」
ーーー
宿を出て街の中を散策しながら良さそうな場所を探す。
見つからなければギルドの酒場だ。
「う〜ん」
最後尾を歩いているガルドが、周りを見渡しながら小さく、曇ったような、悩んでいるような声を出す。
「どうしたんですか?」
疑問に思ったアレスが、ガルドに話しかける。
他のメンバーは特に気していなそうだ。
というか気づいて居ないだろう。
グレンとアリサがずっと話していて、声がデカイから、1番近くにいた俺にしかガルドの声が聞こえなかったんだろう。
「いやちょっとね、違和感があるんだよね」
違和感?
街に入る前は少し感じたが、入ってからはあまり感じなかった。
至って普通の街に感じるが・・・・・・
「違和感、ですか?」
「うん。結構街の中を歩いたけど、この街、衛兵が居ない。いや、居なくなってる。数年前に来た時は居たんだけどな」
「! 確かに言われてみればそうですね」
どうして気づかなかったんだ。
言われてみれば、この街に入ってから衛兵を見ていない。
他の街だと、それこそオルディアやグリスヴァルドでも衛兵は居た。
でも、ここだとまだ1度も見ていない。
「それに、一般の人に明らかに格差がある。貧富の差が凄い」
そう言われ、周りを歩く人々を観察をする。
荒れている冒険者、態度がデカイ亜人、綺麗な服を着て、口悪く指示を出す管理職っぽい人、その指示を聞いて怯えたように従う、汚れた服を着た人。
冒険者が荒れているのはどこでも一緒だが、こんな大きい都市の中で、ここまで格差があるのは見た事がない。
それに、指示を出している人間はそれを隠そうともしない上に、傲慢で、横柄な態度だ。
まるで奴隷を扱っているかのように。
「見ていて少し、気分が悪いですね」




