フォルバーグ②
「それで、この手紙の内容を聞かせる為に俺に着いてこさせたんですか? それともこのドラゴ、フォルバーグに会わせる為ですか?」
「両方だ! アレスよ。お前は魔大陸に行くのだろう? なら、俺の姉と会ってやってくれ!」
「どうして俺なんですか?」
「強いからだ」
「ああ、なるほど」
確かに、さっきの手紙でもアズルムのお姉さんは強い奴と戦いたいみたいな書いてたな。
「ならドラゴンがいる事くらい先に教えて下さいよ。本当に焦ったんですから。あやうく斬りつける所でしたよ」
「それはすまない。驚かせようと思ってな・・・」
アズルムが申し訳なさそうに俯いて謝る。
「いや、まぁ、何も無かったんで、良かったんですけどね」
さっきまで姉の手紙を読んで嬉しそうにしていたアズルムに、ちょっと申し訳無くなってフォローする。
「アレスよ、あの姉は強いぞ。お前も喜ぶだろう」
「強い人とは戦っても損ないですもんね。ありがとうございます。お姉さんの名前は何ですか?」
聞いておかないと、名前知らなくて向こうですれ違いとかになったら嫌だしな。
「それは秘密だ」
「え、なんで?」
思わず敬語が崩れる。
「会ってからのお楽しみという事で取っておいてくれ! 向こうに行けば知る事になるだろうしな!」
「いやいや、名前くらい教えてくれないと探せないですって!」
「むっ! 安心しろ。フォルがアレスを見つけてくれる。フォル、この顔を覚えておけ」
ガウッと短く声を漏らし、こちらを凝視してくる。
うっ、ドラゴンに見つめられるのは少々怖いな。
「アレスよ、撫でないのか?」
「え? 撫でて大丈夫なんですか?」
「ああ、もちろんだ!」
「・・・・・・じゃあ、少しだけ」
いきなり撫でて大丈夫なのだろうか。
急に噛みつかれたりしないよな?
その場合は腕が無くなるぞ。
そうなりゃ洒落にならん。
ゴクンッと唾を飲み込み、フォルバーグを撫でると、気持ちよさそうに目を細める。
それに俺が撫でやすいように頭を下げてくれている。
・・・いい。凄くいい! 今俺ドラゴンに触っってる! すげええ!!
「どうだ? いいだろう?」
「はい・・・いいもですね」
何か、可愛く思えてきた。
「飛んでる所とか、見てもいいですか?」
「ああいいぞ! フォル、見せてやれ!」
アレスが一二歩離れるとフォルバーグが翼を広げ、羽ばたかせる。
「うおぉ、すっげぇ。かっけぇ」
語彙力が皆無になる。
やっぱ、ドラゴンってかっこいいな。
初めて遭遇したのが焔龍の時で、ドラゴンは接敵=死のクソ強いやべー生き物って認識になって、見た目を楽しむ余裕なんて無かったけど、やっぱ改めて見ると凄いかっこいい。
それもこれも襲われないからこそ見れるわけだが。
アズルムには感謝だな。
なんやかんやで数十分ほど眺めたり撫でたりしていると、アズルムが告げる。
「そろそろフォルを帰らせねばならん。朝になるまでに人里から抜け出せねばならんからな。でないと騒ぎになる」
「あぁ、はい。それもそうですね」
「フォル、ありがとう。これを頼むぞ」
アズルムが先程の紙の裏に筆で何かを書き、それを鞄に入れる。
すると、バサアッとフォルバーグが飛び立つ。
帰ってしまった。
できれば、もっと見たかったな。
ドラゴンとあんなに触れ合える機会なんて、今後あるか分からないし。
「決めました、アズルムさん」
「魔大陸に行ったら、アズルムのお姉さんに会いに行きます。後フォルにも」
「うむ! そうかそうか! あの姉も喜んでくれるぞ! では、帰ろうぞ!」
「はい!」
もちろん、もう一度フォルに会いたいだけじゃなく、アズルムのお姉さんにも興味がある。
あんなドラゴンを従えているくらいだ。
とても強いんだろう。
ああ、是非とも会ってみたいな!




