魔法③
「今日はこんくらいで終わっとくか?」
「もう少し練習してもいいですか?」
「ああ、いいぜ」
そう言って太陽が傾き始める頃まで無詠唱魔法の練習を続けていたが、結局帰る時間までに出来る事はなかった。
太陽が傾き始めた頃、
「じゃあ、そろそど帰りますね。すいません。長居しちゃって」
「気にすんな。俺も最近忙しくて練習する機会無かったからな、丁度よかったよ」
俺が練習していた間、ヴェイルも訓練場に残っていた、初めてここに来た俺を気遣ってくれていたのだろう。
昼からはガルドに亜人語を、夜からはアズルムに魔人語を教えてもらう為今日は帰るとしよう。
無詠唱魔法の練習は何処でだって出来るしな。
ここに毎回来ると変にヴェイルに気を使わせてしまうかもしれない。
・・・まぁ俺が緊張するからってのが1番大きいけど。
やはり冒険者が王城内に居るのが珍しいのか、それともヴェイルを見ているだけなのか知らないが、こちらを見ている人が多い。
興味、好奇心、嫌悪や嫉妬っぽいのまで、様々な視線がこちらに向けられる。
特に、無駄に豪華な服に身を包んだ、(おそらく)貴族と思われる奴らは、こちらを見て嫌そうな顔をする奴が多かった。
「じゃあな、アレス」
「はい、また」
そう言ってここから去ろうとした時、奥からヴェイルに似た服を着た数人、というか、ベルナールの作戦の時に紅焔騎士団の団員が着ていた物と全く同じ服装の集団が近づいてくる。
顔は、見た事ない人ばかりだ。
「団長、訓練場に居るなんて今日は珍しいですね。ん? そちらの方は? お客さんですか?」
1人がヴェイルに話しかける。
やはり、団員の人であってたな。
こちらを見て、ヴェイルに問いかける。
「ああ、客だ。今日はこのアレスってやつに魔法を教えててな」
「アレス、ですか? もしかして、武闘大会優勝者の?」
「いやいやあのクソ商人の基地に突撃した時の冒険者だろ」
「え? そうか? う〜ん。分からんな」
「そらお前は行ってねえんだから分からんだろ」
団員達がこちらを見て俺の正体について話し合っている。
名前が広まったのは嬉しい反面、小っ恥ずかしさもある。
「その両方ともあってるぞ。こいつは突入作戦にいた時の冒険者で、武闘大会優勝者の冒険者でもある。お前らの予想大正解!」
「え? あ、そうなんですね」
「なるほど彼が」
ヴェイルが答え合わせをすると、納得したのかこちらをまじまじと見つめてくる。
やめてくれ! 自分と同等以上のでかい人数人に目の前であんまり見つめられると、照れより先に恐怖が来る!
「あ、冒険者やってます。アレスです」
答えは出たが一応名乗っておこうか。
「アレスさん、初めまして。うちの団長の面倒を見てもらって感謝してます。この人すぐどっか行くんで、王城にいる間に見つけられてよかったです」
まさかの頭を下げられた。
しかもさん付きときた。
年上に、しかも絶対俺より偉い人にさん付けはむず痒いな。
ってか、ヴェイルは忙しくて久しぶりに来たんじゃ無くて、よく抜け出してるっぽいね。
何してんだが。
「あの、アレスで大丈夫です。後敬語も無しの方がいいです」
「そうで・・・そうか。わかった。なら、俺達にも無しで大丈夫だ」
「ありがとうござ、ありがとう」
満足したように団員の方は頷き、ヴェイルの方に向き直る。
「団長」
「なんだ?」
「アレスの剣の腕が知りたいです」
え? そんな急に!?
「あー、なら模擬戦でもする?」
「是非してみたいです!」
急展開すぎる・・・なんで何処行っても騎士団の人と模擬戦する事になるんだ。
「アレス、いいか?」
「大丈夫ですよ」




