魔法②
それにしても、詠唱は必要ないのか。
大切なのは想像力・・・
「あっ、そういえば杖持ってないな」
今更思い出しても遅い気はするが、
「杖は無くても魔法を使えるぞ。杖の役割は魔法の威力を増幅させる物だからな」
「あっそうなんですね」
そういえば、初めてヴェイルに会った時も杖なんて使ってなかったな。
っていうか今も杖を持たずに剣を腰に差してる。
ならあの時に使っていた魔法は、ヴェイルの素の威力があれって事か?
素の威力でリーナの杖ありよりも威力が高かったが、そもそもあれが全力なのかも分からない。
シルヴィアさんの時もだけど、騎士団の団長ってのはどいつもこいつも化け物しか居ないな。
「と、言うわけだから。アレス、早速魔法の練習をするか! 魔力を一点に集めて、そこからドーン! って感じだ!」
う〜ん、なんと雑な説明か。
まっとりあえず、やってみようか。
出来れば無詠唱で使ってみたいな。
無詠唱ってのはロマンがある!
詠唱を言ってからド派手に使うのも良いけどね。
簡単に発動出来るようになれば、戦闘にも活用出来るかもしれない。
最近伸び悩んでるしな。
「じゃあ、やってみます」
右手を前に突き出し、目を閉じる。
深呼吸をする。
感覚を研ぎ澄ます。
初めて魔鎧を使えた時の感覚を思い出せ。
あの血液が全身を巡っているような感覚。
「・・・」
全身の血液が右手に集まっていくような感覚を覚える。
魔法を想像しろ。
火、火と言えば、コンロ? ライター? 手の平の上に火が現れるイメージを。
数分後。
「あああ!! 出ねえ!」
「はははは!! まぁそんな簡単には出ねえよな!」
アレスが目を開き、腕を振って叫び、それを見てヴェイルが笑う。
「まぁ、魔大陸に行くのはまだ先なんだろ? なら、時間はある。ここでなくても練習は出来るんだから、焦る必要は無い」
「ですね・・・」
「そんな落ち込むなよ、アレス。そもそも無詠唱なんて簡単に出来るものじゃない。俺だって出来ないしな。どうしても魔法ってのは詠唱が必要だっていう意識が根底にあるからな。もっと早くに知っていれば、俺も使えたかもしれないが」
「そう・・・ですね。頑張ってみます」
ヴェイルさんでも無理だったんだ。
俺がすぐに出来るわけなんてない。
こっちに来てから、何度か死にかけたりなんてあったが、案外なんでも上手くいっていた。
剣だってクラウスに教えて貰って、すぐに上達した。
冒険者になって、2年程でAランクにもなった。
ここで1度くらい、躓いてもいいか。
というか、それが普通だ。
こっちに来てから色んな人に助けられて、何でも上手く進んで、楽しく過ごしてきた。
今までが異常な程上手くいってただけで、躓くのは普通の事だ。
そう。気にする事じゃない。
焦らずに頑張ろう。




