雇ってくれないか①
「ああ、アルトとアリサは俺に着いていきたいって言ってたよ」
「そうか。やっぱり、本人達はグリスヴァルドに帰りたいなんて考えてなかったな」
ダイアスが勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「そうだな。ああしたらいいこうしたらいいって、1人で勝手に決めてしまっていた。ダイアス、お前に色々言われて、あの子達と話せて良かった。ありがとう」
「別にいいよそれくらい。で、どう纏まったの? 話したのはそれだけじゃないよな?」
「ああ、とりあえず、今のあの子達じゃ魔大陸は厳しいだろうから、出発までにDランクになっておけよと。後は言語や地理、金の使い方とかの勉強もしておけって言っといたけど、どう?」
「まぁいいんじゃないか? 言語って言うと魔人語だよな? アルト達の分もアズルムさんが面倒を見るのか?」
「あっ、まだ言ってなかった」
アズルムに向き直る。
「アズルム、俺だけじゃなくてみう2人にも教えてあげてくれないか?」
「2人でいいのか?」
「ああ」
「いいだろう! 任せろ!」
ドンッと厚い胸を叩き、アズルムは快く了承してくれる。
「ありがとう。助かるよ。ダイアス、もしあの子達が無理ならここに残すから、その時は気にかけてやってくれないか?」
「ああ、もちろん」
「ありがとう」
ダイアスにお礼を言い、軽く頭を下げる。
頭を上げようとした時、扉を叩く音が聞こえた。
「会長がいらっしゃいました」
外から声が聞こえると、ダイアスが立ち上がり、扉を開く。
「ラドヴァン様、アレスが話したい事があるそうです」
「ああ。久しいな。アレス」
ラドヴァンが挨拶をしながら部屋に入ってくる。
ダイアスが職員に感謝を伝え、ラドヴァンの隣へ座る。
そういえばこいつ社長みたいなもんか。
出世したな〜。
「お久しぶりです。ラドヴァン様」
ラドヴァンと会うのは、ベルナールの作戦後の事後会議が最後だっただろうか。
武闘大会にも来ていなかったからな。
多分、こっちの事で忙しかったんだろうけど。
「それで、今日はどうした?」
「実は、ダイレス傭兵団に、この人を雇ってほしんです」
「この方は?」
ラドヴァンがアズルムの方を見る。
こんなデカイ魔族の男を見ても顔色1つ変えないとは。
恐るべし担力。
「この人は、」
「お初にお目にかかります。ラドヴァン・ダスティン殿。私は魔族のアズルム、と申します」
アレスが何かを言おうとすると、アズルムが自ら挨拶をする。
思っていたよりも、しっかりした挨拶だな。
「ふむ。何故君は彼をここで働かせようと?」
「適職だと思ったからです。彼は武闘大会でも2位を取れる程の実力者です。傭兵団となれば、荒事に巻き込まれることは多いはず、強力な戦力になると思います」
「確かに、傭兵団としては武闘大会で2位の実力を持つ彼は魅力的だ。しかし、戦力で困っている訳では無い。君も知っての通り、Aランク冒険者のダイアスが居る上に、これから多くの人がダイレス傭兵団に入る事が決まっている」
「アズルムさんはダイアスよりも強いですよ」
「何? それは本当か?」
「はい。彼に武闘大会で負けましたので」
「なるほど。それはダイアスよりも強いのか」
ラドヴァンが顎に手を添え、考える。
「アレス、君より強いのか?」
「同格です」
「いや、アレスよ。お前の方が強いだろう! 嘘は良くないぞ!」




