武闘大会ーー本戦リーグ2日目③
「っぶねえ! なんだあれ!?」
あんなの喰らったら流石に抜け出せないぞ。
「反応が早い・・・先手に回っているはずなのに、見た後に全て避けられる」
ラックスは内心焦っていた。
今の流れで完全に決まると思っていたからだ。
アレスの事を侮っていた訳ではない、それでも、これは避けれらないと思っていた。
だけど、避けられた。
Aランク冒険者はこんなに強いのか!?
「っ!」
アレスがラックスに向かって再度走り出す。
ラックスは冷静を取り戻そうと次の詠唱を開始しながら、アレスから距離を取るために後ろに下がっていく。
ラックスが焦っている中、アレスは冷静さを取り戻して、今の状況を再度確認していた。
さっきの水球、咄嗟に剣で斬ったけど、魔法って斬れるんだな。
なら、もう少し強引に攻めてもいいかも知れない。
俺が水に濡れてる事に、ラックスが気づいているのかは分からないが、もし凍らされたら一気に勝利から遠のく。
出来る限り速攻で決める!
「早い! さっきまでは手を抜いてたのか!?」
肉迫してくるアレスを見て、ラックスは自身が楽しくなっている事に気づく。
「やはり楽しいな、戦いは! この緊張感は、幾つになっても癖になる!」
口端を上げ、笑みを浮かべる。
「でも、簡単には負けてられない!」
「うおおおらああ!!」
すぐ目の前まで来ていたアレスの足元を、泥沼化し、足を取る!
「うおっ!? これくらいで止まるか!」
しかし、アレスは一瞬を足元を見て、泥沼になっている事を確認し、無理やり進んでくる。
そんな事はラックスも分かっている。
あの勢いを泥沼だけでは止められないと、彼の狙いは勢いを殺す事だけでは無い。
アレスが視線を一瞬足元に向けた瞬間に、他の魔法を発動する!
「ーー、土槍!!」
土で出来た複数の槍が、アレスに向かって突撃する!
「ふっ!」
しかし、視線を戻したアレスは、それをいとも簡単に対処していた。
土の槍を、斬っていたのだ。
ラックスまでの直線にある土槍を斬り、踏み込み、駆ける。
「なっ!? ぐっ!!」
杖を持っていた腕を斬られ、杖を手放してしまい、首に剣を当てられる。
ラックスの敗北が確定した。
「・・・降参だ」
手を上げ、降参の意思を示す。
「しょ、勝者! 冒険者アレスーーーーー!!!」
司会の大きな声が鳴り響き、勝者が決まり、試合が終了した。
ーーー
「アレス」
「? あ、ラックスさん。あの、腕、大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だよ、君が手加減して切断せずに居てくれたから、簡単に治ったよ」
「そうでしたか。良かったです。それで、何かご用件が?」
「ああ! 君との戦い、本当に楽しかった! ありがとう!」
「いえ、こちらこそこの大会で初めて良い勝負が出来て満足です。それに、魔法使いとの対人戦闘はした事無かったので、経験になりました」
「え!? 初戦闘であれ!? 凄いね・・・俺なんかで満足しないで、優勝してくれ。応援してる」
「ありがとうございます」
ラックスと別れ、控室に戻る。
「やっぱ魔法使いは強えな。もしあの時、・・・」
その後、ダイアスの試合が始まるまでの数十分程、対魔法使いについて独り言をブツクサと話していたのだった。




