武闘大会ーー本戦リーグ2日目②
「それでは、2日目の試合を始めていきましょう!! 準々決勝1試合目! 初出場にして最終日まで残り、騎士団長二人に注目されている剣士、Aランク冒険者! アレーーース!!! その対戦相手となるのは、前回準優勝の武闘大会きっての魔法使い! 前大会で、相手を近づかせる前に決着が決まりまくっていた力を、新参者に見せつけてくれ! ラックスーー!!」
司会の声に応じて選手が入場する。
観客の興奮は止まることを知らない。
時間が経つにつれ、熱気は上がっていく。
「魔法使いか・・・」
魔法使いとの戦闘はほぼ初めてだ。
ガルドパーティーに同行した際に、リーナの魔法を見たのと、マナの魔法を見た事があるくらいだ。
実際に対峙した事は無い。
この闘技場は広いとはいえ、周りは壁に囲まれているため、ずっと逃げ回るなんて事は難しいだろう。
その為、魔法使い対剣士だと、剣士が圧倒的に有利なはず。
正直、相手がどう出てくるかわからない。
1日目の3回戦目の試合だけ、この人の試合を見たが、さっき司会の人が紹介した通り、相手が近づく前に、水を当てられて、凍らせていた。
滅茶苦茶やりにくそうな相手だ。
「アレスだっけか? 初出場で最終日とは、強いな。君を倒せれば、俺はさらに高みへと行けるだろう。だから、俺は君を倒す」
「俺も、負けるわけには行きませんので、出来うる限りの抵抗をします」
「ああ、共に高みを目指そう」
へえ、この人は今までのとは違ってまともそうだ。
なんか1日目の奴らは変な奴が多かった。
ラージェルとか。
「それでは、準々決勝1試合目! 対戦すたああああああとっっ!!!」
「まずは様子を見るか」
ラックスとの距離は遠くになっている。
どちらか片方が魔法使いの場合は、端が初期スタートとなるからだ。
闘技場内を円を書く様に走りながら、ラックスの方へと近づいていく。
流石に正面からだと的だしな。
「早いね」
ラックスの方角からドッチボールと同等の大きさの水球が飛んでくる。
「流石にこの距離は当たらないぞ」
水球を避けると、パシャっと壁に当たり弾ける。
まだ距離がある。
ホーミングでも無いし、この程度には当たらない。
「やっぱり当たらないよね。結構な速度あったと思うんだけどっ」
「おいおいふざけんなよ」
ラックスの周りに大量の水球が浮いていたのを見て、つい悪態を吐く。
10? 20? まだ増える。
流石にあの数は避けきれないぞ!
「くっ!」
進行方向を変え、一直線にラックスの元へ向かう!
しかし、彼も水球を作りながら移動していた為、距離は遠い。
しかし、身体能力だと剣士であるアレスの方が高く、一直線に変えたことで、すぐに距離は縮まっていく。
「一直線は格好の的だよ」
そう言って、水球をアレス目掛けて放つ。
飛来してくる複数の水球を見て、横に飛ぶ!
「このままっ!」
このまますぐ前に駆け出し、ラックスに肉迫しようと目を見据えると、さらに大量の水球が飛んできていた。
「っ!? くそっ!」
咄嗟に剣を抜き、目の前にあった水球を切り、勢いを殺す。
当たり一面が大きな水溜まりとなるほどの水球の群れを抜け出す。
しかし、水はアレスの体に当たってしまっている。
切ったら勢いは減るかもしれないが、水自体は残るため、アレスに当たっていた。
水が当たってしまった事に、内心舌打ちをしながら、さっきまでラックスがいた所を見るが、彼の姿はそこには無かった。
すぐに周りを見渡す!
既に後ろまで移動していた。
「くっそ! 何をするつもりだっ!」
ラックスが何かを紡いでいる。
何を言っているのかは分からない。
けれど、魔法使いが戦闘中に口ずさむ事と言えば、一つしか無い。
「大きいのがくる!」
バッ!とアレスが横にダイブするのと同時に、先ほどまでアレスがいた場所に大量の水が流れ、一瞬で凍てつく!
「っぶねえ!?」




