武闘大会ーー本戦リーグ1日目③
「お疲れ様、アレス」
「ああ、ありがとう」
控室に戻ってくると、ダイアスが座って寛いでいた。
「アレスの試合、見たよ。相手の人、あんまり強く無かったね」
「そうだな、特に何もされなかったし・・・それにしても、この大会のルールで楽しんでいる奴らが怖いよ」
人と人がほの殺し合っている様なものだ。
それを見て楽しむとか、残酷すぎる。
「そう? 戦いを見るのはみんな好きでしょ? アレスは違うの?」
「戦いを見るのは好きでも、殺し合いを見て楽しむ趣味はない」
「殺し合いじゃないじゃん」
「いやまぁ、それはそうなんだけど、そうじゃ無いっていうか」
う〜ん。
この世界だと、あまり気にならないのか?
これが普通?
・・・・・・そういえば、中世ヨーロッパでもコロッセオで人と人を殺し合せたりしてたんだっけ?
なら、あまりこの世界も地球も、考えは変わらないのか?
俺が日本っていう平和な国に居たからか。
「なんか難しい事考えてるね。とりあえず、勝てれば良いんだよ」
「・・・まぁ、そうだな」
「失礼します。ダイアスさん、そろそろ出番です」
「はい。じゃあ行ってくるね」
「おう、見にいくな」
「見逃さないでね、すぐに終わっちゃうから」
ダイアスと軽口を交わすと、彼は部屋を退出していった。
そろそろダイアスの番らしいし、俺も見にいくか。
少し遅れて、アレスも待合室を出て行った。
ーーー
「おお、まじで人多いな」
観客席の最上段から、下を見下ろす。
「会場から見てる時も多いとは思ったけど、こっちにくるともっと多く感じるな」
そう小さく呟きながら、周りを見ると、席に座れなかった人が、立って見ている。
彼らに並んで、アレスも手すりも捕まり、ステージを見下ろす。
「ダイアス、結構楽しそうだな」
俺の相手よりも強そうだ。
ダイアスが常に先手を打って、有利に動いているが、相手もしっかり打ち合えている。
「まあ楽で良かったんだが」
「「「うおおおおおお!!!!」」」
「勝者、ダイアス選手!!!! 初出場で1回戦突破! 今年の冒険者は強い!!!」
どうやら、ダイアスが勝ったようだ。
俺も戻ろう、
「おっ? もしかして、さっき出てたにいちゃんか!?」
と歩き出そうとしていたら、元気そうなおっちゃんに声をかけられた。
「にいちゃん!さっき出場してた冒険者だよな?」
「あ、はい。そうです」
「やっぱりな! さっきの試合良かったぜ! 初出場で本戦に出れるって中々ねえからよ! 応援してるぜ!」
「あ、ありがとうございます!」
そう言っておっちゃんは何処かへと去っていった。
案外知らない誰かに応援されても、結構嬉しいな。
そう思うアレスだった。




