アルトとアリサ
「はっ、はっ、」
廊下を走る。
アレスの思考は悪い方向へ考えがいってしまう。
男との戦闘に時間を掛けすぎた。
ベルナールに逃げられたのだろうか?
アルトとアリサは、連れていかれたのだろうか?
もし、既に逃げられたとしたら・・・後一歩と言うところまで、追いつけたと言うのに。
見つけた時に、ベルナールを捕えられなかった事に、それで逃げ切られてしまったらと、自責の念を感じるアレス。
しかし、その思いは、杞憂であった。
広い空間に出る。
人がいた。
それも、大勢。
冒険者に、兵士、そして、紅焔騎士団の団員。
見しった顔も数名。
その中に、騎士団の足元付近で倒れて、縄で縛られているベルナールの姿を見つける。
「皆!」
ガルドが大きな声を上げると、視線が集まる。
「今は、どういう状況かな?」
ガルドがアレス一行の考えている事を代弁したかのように、質問を投げかける。
すると、騎士団の1人が前に出て、状況を説明してくれる。
「ベルナール・バドルを捕らえた。彼に連れられていた、金髪の少年と少女も救った。あの子達は、彼の助けたかった子達と特徴が一致していた。確認してくれないだろう?」
そう言ってアレスの事を見る。
アレスが頷くと、騎士団の人は歩き出す。
アレスも続き、アルトとアリサが保護されている場所まで連れていかれる。
「アルト、アリサ・・・」
2人は未だに眠っている。
「この2人で間違いないな?」
「はい。ありがとうございます」
「気にする事はない。見つかって良かったな」
そう言って騎士団の人はアレスの肩にポンッと手を置く。
すると、アレスは、今思い出したかのように、騎士団の人に質問する。
「あのっ、ベルナールを捕まえてくれたのは、騎士団の皆さんですか?」
「ん?まぁそうだな」
「あいつの近くに、強い奴が居ませんでしたか!?そいつはどうなりましたか!?」
「中々強い奴が2人居たな。少し苦戦してしまって、1人に逃げられた。倒せたのは1人だけだ」
「2人も・・・そうですか」
俺が会った時は1人だけだったよな?いや、アルトとアリサを連れていた男の事か?それなら、数も合う。
やはり、ベルナールに付いて行った男も、俺達が戦った男と同等の強さがあったと思われる。
「なにか?」
「いえ、僕達もその内の1人と対峙したんですが、強くて苦戦したので、その、他のパーティーが彼らと鉢合うと不味いと思ってたんですが、騎士団の方達で良かったです」
「そういう事か、それなら、1人逃がしてしまったのは不味いな」
「いや、守るべき相手も捕らえられたから、逃がした1人はここから逃げてると思います」
「本当にそう言えるのか?」
「確定とは言えませんが、俺達が戦っていた男が、ベルナールを守るのは、ベルナール以外の他の人の指示だと言っていました。守るべき対象は捕まり、騎士団や冒険者、兵士達が多く集まった今、諦める可能性が高いかなと思いました」
「なるほど・・・逃した1人に関しては、地上班に任せるしかないか」
「はい」
アレスが頷くと、騎士団の人は指示を飛ばした。
「基地内部の敵兵は残り少ないだろう!これより!捕まっている奴隷達を解放する!我々だけでは数が足りない!数名は地上に戻り、地上班から増援を呼んでくれ!斥候役の冒険者がいるパーティーは、地図の開拓を進めてくれ!」
「「「「おう!」」」」
騎士団員が指示を出すと、誰も異議を唱えることなく、すぐに動き出し始めるのだった。




