強敵①
いた!
ベルナールだ。ようやく見つけた!
殺しては駄目だ。
捕える事が目標、ならまず、逃げられない様に足を狙う!
「ダイアス!」
「おう!」
ダイアスが先に飛び出し、一歩遅れてアレスが走り出す!
周りにいた敵をダイアスが相手をし、アレスはただ一点を見つめ、さらに奥へと突き進む!
「ベルナール!!」
雄叫びを上げ、ベルナールに迫る!
あと少し、もう少しで、剣先が奴の足に届く!
奴を動けなくして、アルトとアリサを助けだして、それで今回の突入は終了だ。
「!? うおっ!ぐっ!」
もうあとコンマ数秒で、ベルナールの足を貫くと思っていた剣は、届く事はなかった。
「ベルナール様、早くお逃げください。この侵入者共は私が相手をしましょう。」
「あ、ああ!助かったぞ!よくやった!ここは頼むぞ!」
アレスとベルナールの間に、二人の男が居た。
一人がベルナールと言葉を交わし、ベルナールが感謝を言い、この場を後にする。
一人はベルナールに付いていき、もう一人はこちらを見据えたままだ。
そして、アルトとアリサを抱えていた男もベルナールに続く。
「逃すかああ!」
アルト達が連れられるのを見て、アレスが血相を変えて突進する。
ようやく見つけたんだ、ここで逃げられるわけにはいかない!
しかし、
「お前の相手は私だ。」
そう言って、またもアレスの邪魔をする一人の男。
「っち!」
何度も邪魔され、苛立ちが表に出てしまう。
しかし、無闇に攻める事はしない。
アレスは直感で感じていた。
この男が、自身よりも強いという事を。
「冒険者、それにまだ若い。なのに、ここまで到達した実力は認めよう。だがらこそ、ここで私に潰されるのが惜しいな。もう少し来るのが遅ければ、もう少し、迷っていれば、死ぬ事は無かったと言うのに。」
「・・・」
今までとは圧倒的に格の違う敵を前に、アレスは返事をせず、ただ思考する。
どうすればこいつに勝てるのか。
自身だけでは絶対に勝てない。
なら、ダイアスと二人なら?
勝てる可能性は上がるが、確実では無い。
それに、ダイアスはまだ後方で複数の敵を相手にしている。
それまでは、一人で耐えなければならない。
俺が負けると、ダイアスも危ない。
アレスがそう思うほどに、たった数回、剣を交えただけで、アレスの直感が、この男に対して危険信号を鳴らしている。
「なぜ冒険者である貴様が、ベルナール様を狙う?」
「奴隷を解放させる為。」
急な男の質問にも、迷いなく答える。
「奴隷を解放して、それでどうする?あの方にとってその程度は痛手でも無い。」
「ベルナールを国に突き出す。不正の証拠はあるからな。」
アルトとアリサを早く追いたいが、俺一人じゃ無理だ。
ダイアスがこちらに来るまで、俺も時間を稼がないといけない。
「なるほど、不正の証拠を、貴様が本当に持っているのなら、ベルナール様を突き出す事は可能だろう。だが、それで英雄気取りか?あの方は確かに、やってはいけない事をしてきた。しかし、それと同時に、この国に多大な貢献をしてきた。そして今では、このオルディアで無くてはならない商会となった。もしあの方の商会が無くなれば、大勢の人間が困る。死ぬ人間まで現れるやもしれん。貴様の勝手な行動のせいでな。」




