奴隷①
ドゴオオオォォン!!
「暴れてるなあ・・・」
廊下に響き渡る、爆発したかのような轟音を聞きながら、そんな事を呟く。
「なぁアレス、これ何の音だろう?」
「多分騎士団の人達だ。冒険者の後衛組は地上で待機してるから、突入組でこんな魔法を使えるのは、騎士団の人達くらいだと思う。」
二人で並行して走りながら、声を少し抑えて話す。
「でも、こんな地下で魔法使いまくって、大丈夫なのか?その、ほら、崩れたりしない?」
ダイアスが心配そうに問いかける。
「確かに心配だけど、ま、騎士団の人達なら大丈夫だろ。実践経験も多いだろうし。」
「まぁそっか。」
「そうそう、あんま心配し過ぎてもどうしようもできないし・・・お、開けた所に出るぞ。」
廊下を突き進むと、開けた空間に出る。
しかし、そこには息を飲むような、異様な光景が広がっていた。
「っ!?」
そこは、大広間だった。
そこは、暗く、変な臭いがした。
そこには、沢山の大きな檻があった。
檻の中には、何かが動く影が見える。
一瞬、息が詰まり、止まったような感覚に陥る。
同じ光景を隣で見ているダイアスも、目を細め、険しい顔をしている。
「・・・ここ、は?」
答えは分かっている。
それでも、ほんの少しの、救いの可能性に掛けて、自身が想像している物とは、違う物だと言うことを言って欲しくて。
「奴隷を・・・」
「いや、ごめん。やっぱり大丈夫。」
ダイアスの言葉を遮り、歩き出す。
檻の中には、まだ小さな子供から、成人している大人、色んな人がいた。
檻の中からこちらに視線を向けられる。
死んだような目、怯えるような目、恨みが籠ったような目。様々な視線が向けられる。
しかし、その中でも特に多いのが、生きる事を諦めたような、そんな目。
「ぁぁ・・・」
ここがどういう所か分かって入ったはずなのに、実際にこうして見ると、あまりに酷い有様で、心が、痛くなる。
ガシャアアアン!!!
「ああああ!!!死ねええ!!!」
「っ!?」
檻の隙間から血だらけの手を突き伸ばし、こちらに向かって叫ぶ1人の少女。
俺達を、ベルナールの仲間だと勘違いしているのだろうか。
「お前らのせいで!!!私達が何をしたって言うんだ!!!殺してやる!!!絶対に!!!殺してやる!!」
少女の後ろには、何人もの子供が倒れている。
息は・・・しているのだろうか。
まだ若い。後ろで倒れている子達は、さらに幼い。
「大丈夫。」
たじろくアレスの横を通り過ぎ、ダイアスが少女の手を握る。
少女は一瞬ビクッと体を震わし、ダイアスを引っ掻くが、ダイアスは片手を握ったまま、構わず話す。
「君は、君達は、もうすぐ出れるよ。俺達はベルナールの仲間じゃない。ベルナールを倒しに来たんだ。」
「誰がそんな事っ!!」
「俺達は冒険者だ。国の兵も、君達助けに来たから、だから、待っていて欲しい。必ず、助け出すから。」
「そんな事!信じられるわけない!お前も!あいつも!どうせ私達に酷い事をしに来たんだろ!!」
少女から発せられているとは思えない程の、叫び声。
仲間や、大勢の人間が殺されていく様を見てきたんだろう。
急に現れた、よく分からない男二人が、助けに来ただなんて、そんな事簡単に信用出来るはずも、信用出来る環境でも無かった。
「違う!俺達は、」
「いたぞ!あそこだ!」
「おい!奴隷共を解放しようとしてるぞ!!!早く止めろ!!」
奥の通路から敵が現れる。
「ダイアス、やるぞ。」
「ああ・・・待ってて。必ず、解放するから。」




