情報共有①
ガルドの部屋の前で立ち止まり、コンコンと扉を叩く。
「ガルドさん、今居ますか?アレスです」
さっきあった事を伝える為に、冒険者ギルドに一度戻ったが既に居なかった為、宿まで帰ってきた。
迷惑かもしれないが、情報共有は出来るだけ早い方がいいだろうしな。
暫くすると、扉が開く。
「やぁいらっしゃい。アレス君。どうぞ入って」
「あ、はい。お邪魔します」
「うん」
ガルドの部屋に入ると、ベッドに座って自前の長槍を手入れしているグレンも居た。
「よお!アレス!どうしたんだ?もうダスティン家行ったのか?もしかして・・・追い出されたか?」
「いえ、そんな事は無いですよ。しっかりと役目を果たしてきましたとも。」
「おっ!?ってことは協力してくれるって事か!?」
「まぁまぁグレン。一旦落ち着いて。ほら、アレス君。ここに座って。」
そう言ってガルドが椅子を出して、座るように促してくれる。
「ありがとうございます。」
「どういたしまして。じゃあ僕も気になるし、話を聞こうかな。
「はい。まずは、協力を取り付ける事に成功しました!」
「おお!流石だね。」
「信じてたぜ、アレス!」
そう言いながら二人はパチパチと手を叩く。
「結構あっさりいったので、俺も驚いてます。ただ、中々に大きな規模になっているような気がしてまして・・・」
「と言うと?」
「ダスティン家当主であるラドヴァン・ダスティン様が、へ、陛下?王様にもこの話を持って行くって言ってたんです。」
「えっ!?」
「はっ・・・まじかよ・・・」
二人とも揃って鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。
まぁそうなるよなあ。
王族、それもこの国のトップである王様が、協力してくれる可能性が出てきたんだけどだから。
これで驚かなかったら俺がその事に驚きだ。
「でも確かに、ダスティン家は王族に信頼されている上に、どちらも奴隷制度撤廃に動いているからね。冒険者が主体として動いてくれるこんな絶好の機会を逃す訳には行かないか。恐らくラドヴァン様も、より盤石にする為に行ったんだろうね。これが成功すれば、確実に奴隷制度撤廃が一歩前進する。」
ガルドがなぜラドヴァンが王様の所へ行ったのかを分析する。
「なぜ冒険者が動けば絶好の機会となるんですか?証拠があるなら、兵を率いて攻めればいいんじゃ?」
「それが出来れば良いんだけど、今はそうも行かないんだよ。今は多くの兵が国境付近に配備されて、あまり戦力がいないんだ。それに、グリスヴァルドがまた攻められ始めたから、そっちに兵力を割いてるようだしね。」
「なるほど。でもそれならダスティン家が戦力を出すのじゃダメなんですか?」
「確かにダスティン家は多大な戦力を保持している。けど、相手はベルナールが雇っている商団の護衛相手だけじゃ無いんだ。ベルナールの裏にいる貴族が、彼を守る為に兵を動かすだろうから、そうなれば流石にダスティン家も簡単には攻められない。ダスティン家が攻めらあぐねるくらいだ。ベルナールと繋がってる貴族は結構多いだろうね。」
「貴族がベルナールの味方になれば、それを裁け無いんですか?犯罪者を守ってるとかで。」
そんな法令があるかは知らんが。
「彼らもそこまで馬鹿じゃ無いと思うよ。傭兵やら盗賊団やらの格好をして、完全に身分を隠してベルナールの伏兵として忍ばせるだろうから。ただダスティン家のリスクが大きすぎるから。攻められないんだと思うよ。」
「なるほど。」
「じゃあ、この話は明日皆んなにも共有しないとね。」
「そうですね。あ、後これ貰ったんですが。」
そう言ってダスティン家の紋章をガルドとグレンに見せると、また鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。




