ダスティン家②
「すまない。遅れたな。」
スッと立ち、挨拶をする。
「初めまして、Bランク冒険者のアレスです。」
「ラドヴァン・ダスティンだ。座れ。それで、用件は?」
「はい。今日はベルナールから奴隷を解放するために動いている我々と協力をと思って、足を運びました。」
敬語これであってんのかな。
貴族と話す事になるとは思ってなかったから、緊張で手汗は凄いし、少しでも気を抜くと足が震えそう。
「ふむ、やはりその話か。アレス。何故君はベルナールを潰そうと考える?普通に考えれば、一介の冒険者が大商人を襲うのは自殺行為だ。」
「仲良くなった知り合いが居るからです。それに、僕はベルナールを襲うというよりかは、そちらの救出が目的です。」
「ただの知り合い、友達の為だけに、そこまですると言うのか?その後お前はもうこの国どころか、指名手配でもされれば、人間の国では暮らせなくなるかもしれないんだぞ?」
「仲の良くなった彼らが、地獄を見るのを、俺は見てられません。それなら、助け出したい。それに、人間の国で暮らせないなら亜大陸か魔大陸で暮らせばいいと、そう思ったからです。」
魔大陸や亜大陸も元々行こうと思ってたし、そこで暮らす事になるのも、悪くないかもな。
どうせ何処かに定住する気はあまり無いし。
「そうか・・・いい覚悟だ。分かった。協力しよう。」
「良いんですか!?」
「ああ、元々ベルナールやそれと関わっていた貴族達は我々や王族にとって邪魔な存在だ。奴隷制度には私も反対だからな。いずれは潰す気で居たんだ。それが少し早くなるだけだ。証拠は私が集めておこう。陛下にも話を通し、協力を仰ぐ。それまで少し待っていてくれ。」
「あ、え?は、はい!分かりました!」
待て待て待て陛下って!?王様!?
王様に協力を仰ぐ!?
少し意味がわからない。
なんだがどんどん規模が大きくなっている気がするんだが・・・うん。もう考えるのは辞めよう。
「私はすぐに出る。3日後、またここへ来て欲しい。君だけじゃなく、他のリーダー格も連れてくるといい?居るんだろう?」
「はい。居ます。連れてきます。」
「では、私はこれで。おっと、これを君に渡しておこう。ダスティン家の紋章だ。君なら悪いようには使わないだろう?」
「もちろんです。」
即答すると、ラドヴァン・ダスティンは少し微笑む。
「話は以上だ。私はすぐに王城へと向かう。」
「ありがとうございました!」
バタンッとラドヴァン・ダスティンが部屋を出ていく。
「ふう。緊張した〜。」
なんか色々凄いことになってきたな。
ダスティン家の紋章も貰っちゃったし・・・こんな代物、本当に俺が使っていいのか?
っていうかこんな良く分からん冒険者に、いきなりこんな物渡すのって大丈夫なのか?
うぅ、プレッシャーがヤバいな。
「はぁ、とりあえず帰るか。」
ガルド達にも報告しないといけないしな。




