ダスティン家①
「すうう、はあぁぁ。」
思いっきり息を吸い、吐き出す。
いよいよ館が近づいてきた。
内側の壁の中に入ると、ガラッと雰囲気が変わる。
普段暮らしている場所、外側の壁と内側の壁の間を一般区、内側の壁の中を貴族区とでも呼ぼうか。
貴族区に入ると、冒険者や一般の人も居るには居るが、極端に減っている。
その代わり多く見られるようになったのは、高貴な服を身につけた婦人や護衛を引き付けている人。
服をびっしりと決めた商人などが多く、一般区と比べると騎士の数が多い。
後、一応ガルドに言われた通り上から羽織れる物を買ってきた。
普段使いの装備も綺麗に使っているつもりだが、傷は等はどうしても直らないし、念の為見えないようにね。
ここを歩いていると場違い感が凄いな。
普段冒険者が通らないから珍しいのか、すごく視線を感じる。
「っと、あれだな。」
正面に見えた大きな建物。
この貴族区の中でも大きい方だ。
まぁ真ん中にそびえ立つ白亜の城には勝てないけど。
「止まれ!何用だ!」
館の前までやって来ると、2人の門番に止められる。
「ラドヴァン・ダスティン様にご用件があって来ました。」
「そうか。名は?」
「冒険者のアレスです。」
そう言いながらクラウスからの手紙と、俺の冒険者ギルドカードを渡す。
それを受け取った1人の門番が、奥へと消えていく。
暫くすると、許可が下された。
「先程は失礼を。どうぞお入りください。」
「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」
「彼女が案内します。」
「客室までお連れします。」
門番がそう言うとメイド服を着た人が現れる。
黒と白を基調としたロングスカートのメイド服。
やっぱメイド服っていいなあ・・・
「ここで暫くお待ちください。そちらの物は自由にお食べ下さい。では。」
そう言って一室へと案内され、メイドが出ていく。
一人ポツンと部屋にあったソファに座る。
・・・貴族と言えば豪華絢爛な自分の権力を見せつけるかの様な、趣味の悪いのか良いのか分からないイメージの部屋だったけど、ここは違うな。
案内されたこの部屋は、置いてる物自体は多くない。けれど、一つ一つの物は物凄く高価なんだろうけど、丁寧で落ち着く雰囲気がある。
というか、この館全体がそんな印象を受ける。
テーブルの上には美味しそうなお菓子も用意されている。
いつ始まるのかという緊張にソワソワしながら待機していると、ドアが開く。
「すまない。遅くなったな。」
そう言って入ってきたのは、ダスティン公爵家当主、ラドヴァン・ダスティンその人だった。




