期待のBランク新人冒険者③
「よし、じゃあそろそろ行くわ。」
「はい。」
男がギルドの受付カウンターに行き、Bランクのギルドカードを受け取ると同時に、ガンゾ達が席を立ち、ギルドを出ようとする男の目の前に立ちはだかる。
「おいおい!こんなガキがBランクだって?しかもソロで?」
「何かの間違いだろ!ぎゃははは!!」
「親のコネで成り上がったんじゃねぇのか!?」
おいおい、あいつら俺に絡んだ時と全く同じセリフじゃねぇか。
あいつらそれしかレパートリーねぇのか?
でも何か懐かしいな。
ガンゾ達に絡まれた時は、滅茶苦茶変な奴に絡まれたと思ったが、あんな裏の事情を聞かされたら、もう良い奴にしか見えん。
「おいてめぇ!だんまりかよ!ビビってんのか!?そんなんでBランク冒険者やってけ・・・あぁ?」
誰かの腕が宙を舞う。
男の右手には、刀身が鮮血によって塗れた剣がある。
一瞬の出来事だった。
「ぐっおおおおお!!」
ガンゾが苦痛の叫びを上げて、切られた部分を止血しようと必死に抑え、前傾姿勢になる。それを見た男がガンゾの首を狙って剣を上に持ってくる同時に、間髪入れず周りの上級冒険者達が一気に動きだす!
全員が片手には武器を持っており、一直線に男の元へ走りだしていく!
1歩遅れてギルドの職員も慌ただしく動き出す。
ドゴオオオオオン!!!
上級冒険者達の攻撃によって、男は吹き飛ばされ、壁に衝突し、朝の街とは思えない程の轟音が響く。
しかし、上級冒険者達は動きを止めず、追撃にかかろうとすぐに追いかける!
「おいおい、流石に死ぬんじゃないか?」
あの男が幾らガンゾの腕を切ったからって殺すのはやりすぎじゃないか?
甘いと思われるかも知れないが、人の死ぬところなんて出来るだけ見たくない。
ガンゾ達だってこういう事が起きる事くらい覚悟していただろう。
話し合えばなんとかなるんじゃないのか?
そんな事を考えた所で、彼等は止まらない。
「おらあああ!!」
壁から顔だしたばかりの彼に剣を振りかぶる上級冒険者達を見ながら、ガンゾの元へ駆け寄る。
そこで、目を疑う出来事が起こった。
「ぐっ、っう!なんだ、とっ・・・!」
上級冒険者達の追撃を躱し、1人の腹を突き刺していたのだ!
「マジかよ・・・。」
その光景を見ていたガンゾ達も、自分より遥かに強い上級冒険者数人の攻撃を避け、反撃をした男を見て驚愕する。
「あのままだと不味いか。」
あの男、上級冒険者を複数相手しながら渡りあっている、どころか押してすらいる。
先程から少しずつ傷が増えているのは上級冒険者側。
彼等があの男に直撃を与えられたのは、最初のあの一撃だけ。
「くっまずいっ!」
上級冒険者の1人が体勢を崩した瞬間、男はその冒険者の首を目掛けて剣を突き出す!
彼は躱す事も、防御する事ももう間に合わない!
絶対絶命のその時______
「この辺で終わりにしないか?」
キィィィン!!
と剣を抜いているアレスが横から割って入り、殺されるのを何とか阻止する!
「なんだ?お前?」
その時、初めて聞いた男の声は、思っていたよりも若かった。




