Aランク①
「アレス君、宿は取った?」
「あ、取ってなかったです。」
「この時間だともう取れるところは少ないかもだし、僕達のところに来るかい?もしかしたら部屋が空いてるかもしれないし、空いてなかったら僕とグレンと同じ部屋で良いななら歓迎するよ。」
こんな夜中はもう空いてるところなんて無いか。
昇格の件やら絡まれた件やらで宿の事はすっかり忘れていたな。
このままだと野宿になっちゃうし、ここはガルドの優しさに甘えて、とりあえずに付いて行った方がいいか。
「ごめんなさい、ありがとうございます。」
「うん。気にしないで。」
「アレスも一緒の部屋に来るのか!?宜しくな!」
「宜しくお願いします!」
「グレン嬉しそうね!」
「たまには違う奴とも一緒に過ごしたいだろ!ずっとガルドじゃあ飽きるからな!それに、アレスと一緒の時間が増えれば、何でこんなに強いかが分かるかもしれねえだろ!」
「まだ決まったわけじゃ無いし、その期待が崩れ落ちるかもね。」
「んな事言うなよぉ!」
「あはは!」
やっぱこのパーティーの雰囲気は良いな。
物凄く仲が良いのが伝わる。
俺がパーティーに入る事はあるのか知らないけど、もしパーティーに入る事になったらこんなパーティーが良いな。
やいのやいのとグレンとリーナが言い合い、カナがたまに話に入り込む姿を見ながら彼らの後ろを付いていってると、ガルドがこちらに寄ってくる。
「さっきはごめんねアレス君。急に変なのを入れちゃって。それに僕達が来る前に絡まれていたようだし・・・」
「ガルドさんが気にする事では無いですよ。最終的には俺が決めたんですし。まあ絡まれたのに関しては面倒臭かったですが、事情があるようですし、それを聞いてから決めます。」
「ごめんね。さっきも言った通り、それについて説明しようか。」
「はい。お願いします。」
「彼らがああやってBランクになったばかりの冒険者を狙ってやってるのはね、ギルドからの依頼だからだよ。」
「え?」
だから俺が絡まれている時、ギルドの職員が仲裁に入る事は無かったのか。
それに狙っているのはBランクなりたてだけ。
ただの新人では無く、狙うのはあくまでBランクの新人。
一体何故そんな事を?
「アレス君も知っての通り、BランクからはAランクのクエストも受けられるようになるよね?」
「はい。」
「Aランクからはクエストの難易度が一気に跳ね上がるんだ。Aランク認定されている魔物って覇気?殺気?みたいなのを放つんだ。それを直に感じるのはそれまでの魔物では基本無いから、初めてだと立ちすくんだり、尻餅をついたり、戦意喪失する事が多くて、そのまま全滅。なんて事が多発したんだ。」
「なるほど。クエスト受ける前に知れてよかったです。」
それはクラウスから教えられなかったな。
Aランクのクエストを受ける前にこの話を聞けてよかった。
「まぁ格下相手なら感じにくいだろうし、アレス君はあまり関係ないかもね。焔龍の時もあまり感じてなさそうだったし。」
「え!?焔龍の時もあったんですか?」
「もちろんあったよ。多分、昔話に出てくるような強力な個体じゃ無かったけど、それでも最低Aランク最上位、もしかしたらSランクに掠ってたくらいには強かったと思うよ。」
「まじすか・・・でも結構怖かったですよ。足が竦むくらいには。」
「それはそうだよ。君はあのダンジョン行くまではゴブリンとかの弱い魔物としか戦った事無いだろう?それなのにその程度の恐怖で、力は及ばずとも、しっかりと戦っていただろう?皆必死だったからあまり気にしてなかったけど、よくよく考えれば異常だ。」




