護衛会議③
「アレス殿、すまないな。疑ってしまって。」
「よく分からない奴がいたら疑うのは普通の事です。だから、あまりお気になさらないでください。」
「君は、その歳で冒険者をやっている者とは思えない程強く、優しい人間だな。ありがとう。」
やっぱりこの人も悪い人じゃなかったな。
「今回の目的地はオルディア城塞都市。2週間程の移動で、基本的には馬車の移動となる。ラドヴァル様の居る馬車を中央に。隊列は我々が先頭を受け持ち、中衛、後衛にも人員を分ける。鉄の牙の皆様とアレス殿には最後尾を担当してもらいたい。」
「理由を聞いても?」
「まず、街に入る際などに許可をとる必要がある。我々が先頭にいた方が、スムーズに入れる。それに、道程は我々が決めるため、冒険者の皆様が前に居ては、進みにくいだろう。そして、実力のある者を先頭と最後尾に配置したかった為、最後尾という1番になった。」
「分かりました。ありがとうございます。」
なるほどな。
結構考えられてるんだな。
今回の護衛の中ではガラハッドさんが1番強いから先頭、その次に俺やガルドさん達が強いから最後尾。
こうすることで、大規模な集団に襲われても、突破力のあるガラハッドさんと後ろから突かれないように止められる実力がある冒険者達が配置されたと。
そして当主がいる中央に1番多くの人員を割いた。
強さで言えば1番心配な場所だが、彼らの仕事は当主の護衛。
言い方は悪いが、肉壁になってでも、当主さえ生き残っていれば、彼らの勝ちと言える。
残酷だが、仕方ない事だな。
1番良いのは襲撃されない事だけどね。
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「いやあ疲れた〜。」
あれから1時間程会議が続き、ようやく終わった。
ああいう場は本当に慣れないな。
姿勢を崩さずに長い間じっとしとくのは、俺には厳しいな。
今日は日課のトレーニングが終わってないし、丁度良いな。
体を動かしてから帰ろうかな。
「アレス。」
後ろから声を掛けられる。
最近よく聞くあの人声だ。
「はい。なんでしょうか?シルヴィアさん。」
そう。
最近なにかと関わりのある団長さんだ。
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「あの、本当にやるんですか?」
「もちろんだ。全力で来てくれ。」
今俺は、王国最強呼ばれる騎士団の団長様と対峙しております。
しかも、真剣で。
いやいやいやなんでこうなった!?って思った方、説明しましょう。
まず団長様が、俺と護衛の方の一騎打ちを見ていたらしく、その事を先程会った時に言われた。
その時に団長様は、(1年でこれ程の剣の腕とは・・・私も打ち合ってみたい!!!)と思ったそうで、俺に声をかけてきたそうです。
そして俺はこんな強い人と打ち合える機会なんて滅多にない!チャンスだ!
と思い、勢いで打ち合いに乗ってしまったということです。
問題は、俺が真剣を握っている事。
シルヴィアさんは木刀だ。
いくら実力差があるとはいえ、真剣は危なすぎでは?
「あの、俺真剣でいいんですか?」
「ああ、君のちゃんとした実力がみたいからな。それなら、普段使っている剣じゃなければならないだろう。」
「いや、でも」
「心配しているのか?安心しろ。君の目の前にいるのは、ヴァルグレイ王国最強の騎士団の1つ、黒鋼騎士団の団長。漆黒の刃姫だぞ。」




