援軍①
「少年、大丈夫か?」
少し高い声・・・女の人の声だ。
クラウスじゃ、ない ?
誰なのか確認しようと、視線をあげる。
バサッ!
「後は我々に任せよ。」
真紅の髪と漆黒のマントが靡く!
マントよりも深い黒をした鎧に、身を包み、1本の長剣を構えている。
ああ、直感でも分かる。
会ったことの無い俺でも、分かる。
この人は・・・
「黒鋼騎士団よ、殲滅せよ!」
「ぐあああああ!!!」
「ぎゃああああ!!」
「お、オブシディアン・ナイツが来たぞ!一斉に掛かれえ!!ぐあああ!!」
たった一つの騎士団が加わっただけで、戦況が、みるみる内に塗り替えられていく。
多くのブラッドヴァルド軍が地に伏していく。
それを成しているのは、漆黒の鎧を来た騎士達!
「「「うおおおおおおおお!!!」」」
味方の兵が、冒険者が、反撃の時だ!と言わんばかりに声を上げ、押し返していく!
「お、おおお、お、お前はあああ!!!」
アヴァルが声を荒らげる。
今までに聞いたことがないくらい、動揺していて、驚愕で口が閉じなくなっている。
さっきまでの人物とは、まるで別人かのような間抜けな顔を晒している。
「な、なぜお前がここにいる!!」
こいつはこの人を知っているのか。
「漆黒の刃姫あああああ!!!!」
漆黒の刃姫。
この人が、黒鋼騎士団の団長!
そして、王国最強の騎士団と名高い女性!!
そんな人が今、俺の目の前に居る。
「私の事を知っているようだな。」
「は!?お前、まさか、俺の事を忘れたのか!?」
「生憎だが、貴様のような間抜けな顔をした男は、記憶にない。」
「ふざけるなああ!!!いつもいつも俺の邪魔をしやがってえええ!!!!」
アヴァルが叫びならがら、剣を構え、トップスピードで走り出す!
俺と戦っていた時よりも早い!
「騒がしい奴だ。」
が、それを漆黒の刃姫は、赤子の手をひねるかのように、簡単に受け流し、長剣の一閃にて首を撥ねられる!
ザシュッ!ぶしゃあああ!!!
「・・・ぁぁ・・・・・・ぁ」
「少年、後ろに下がっていろ。後は私が何とかしよう。」
漆黒の刃姫は背を向けたまま、歩き出し、そう言った。
アヴァルには一切の興味を示さず、一瞥もせずにそのまま戦場へ向かった。
ってかつっよ!
アヴァルを一撃で倒してたぞ!?
第三者視点で見てたから、何とか目で追えてたけど、俺が対峙してたら、一瞬で殺されてた。
それをああも簡単に倒すとは。
これが、黒鋼騎士団の団長。
この街を守り続けてきた、王国最強の騎士!
「の、漆黒の刃姫だあああ!!」
「囲めえええ!」
「あ、おい逃げるな!戦え!!」
「おらああああ死ねええ!!」
「やっちまええ!」
「こいつを殺せれば大出世だあ!!」
彼女を見て、多くのブラッドヴァルドの人間が反応する。
姿を見ただけで、慌てふためき逃げ出す者。
指揮を執り、軍を纏めようとする者。
欲に目が眩み、無謀にも突撃する者。
強者と闘える事に、満面の笑みになる者。
多種多様の反応が、どれだけ彼女が有名かを知らしめてくれる。
しかし、数多くの、どの剣も、彼女に届く事は無かった。
彼女が一太刀振る度に、幾つもの命が消えていく。
あまりに強すぎる。
圧倒的だ。
クラウスですら、こんな芸当は無理だろう。
誰のどの剣も、斬りつけるどころか、かすり傷1つすら付ける事が出来ない。




