希望②
「アレス君、君は少し下がっていて。」
「え ? どうしてですか ?」
急にどうしたんだ ?
戦力外通告か ?
「君はまだ若い。こんな所で死んで欲しくない。少しでも狙われにくい所にいた方がいい。」
「そうだぜ、少年よ。君は強いけど、万が一があっては困る。クラウスさんに顔向け出来なくなる。」
心配してくれていたのか。
でも、俺が前に出なきゃこの人達は絶対に死んでしまう。
言い方は悪いが、この人達よりも、俺の方が強い。
半分程がBランクで集めれらた三番隊よりも、隊長のガルドさんよりも、Cランクの俺の方が強い。
だから、俺が前に出ないとまずい。
俺がこの人達を守らなければならない。
「皆さんの好意はとても嬉しいです。ですが、俺は前にです。」
「アレス君はそこまで1人で背負おうとするんだい?」
「え?」
「君が三番隊で1番強いのはわかってる。僕達が足でまといになってるのも。けど、君1人では勝てない。これは戦争だから。皆んなで協力しよう。」
みんなが俺のことを心配そうな目で見つめてくる。
ガルドの言葉に同感だと言うように。
「・・・そうですね。分かりました。」
「ありがとう!」
「けど、俺は前に居ます。」
「!アレスく」
「それを皆さんが、カバーしてくれませんか?」
「!?」
「俺が前で敵を止めて、皆さんが倒す。協力して、戦いましょう。」
「ああ!そうしよう!」
皆が俺の意見に同意してくれた。
そうだ、これは戦争。
俺1人ではどうにも出来ない。
協力しないとダメだ。
「黒鋼騎士団が帰ってくるまで、誰も死なないでね!」
「「「おおおお!」」」
ーーーーーーーーーーー
位置についてから結構な時間が経った。
半日くらいだろうか。
他の隊と交代しながら休憩を取っているが、いつ攻めてくるか分からないのって気疲れが激しいな。
「ガルドさん。ガルドさん達って何時からグリスヴァルドを拠点にしてたんですか?」
長い待機時間によって少し緊張感が薄れていた俺は、そんな質問を投げかける。
「う〜ん。そうだね。多分5年くらいじゃないかな。」
「結構長いですね。」
「確かに冒険者にしては長いかもね。でも、グリスヴァルドを拠点にしている冒険者は、僕みたいな人、多いんじゃないかな。」
「何でですか ?」
基本的に冒険者が一つの街に年単位で定住する事は少ないらしい。
場所によって受けれるクエストの難易度も違うし、より多くのクエストがある所に行く人もいる。
クエストの量だって、時期によっては多かったり少なかったりする地域があるみたいだしな。
「それは簡単だよ。グリスヴァルドには、近くにダンジョンがあるからだよ。」
「あ、ダンジョンか。」
そうか。ダンジョンがあるなら、クエストの量やランク、時期とかも関係無いからな。
なんせ攻略されるまでは、モンスター無限湧き出し。
そりゃ稼ぎやすいよな。
「そうだよ。僕達はダンジョンに釣られてやって来たんだよ。他の人は戦争に参加しに来る人も多いけどね。報酬が良いから。」
戦争もか。
確かそれはクラウスも言っていたな。
いや、ダンジョンの事も言ってたか?
まあいいか。
「もう一つ、良いですか ?」
「なんだい?」
「ガルドさんは、黒鋼騎士団の戦闘を直接見た事ありますか ?」
「あるよ。」
「どんな感じででしたか ?」
ずっと気になっていた事だ。
クラウスにも結局聞けてないし、そもそも黒鋼騎士団を事をあまり話そうともしない。
「そうだね・・・・・・なんて言うか、強すぎるよね。あの騎士団は、新人でさえ、強いよね。」
それは知ってる。
戦いを実際に見た訳では無いが、確実に冒険者でのBランクはある。
1番下でそれだ。
上は化け物揃いだろう。
「しかも、ただ強いだけじゃない。僕達の様な冒険者ちは違って、連携がしっかりしてる。まあこれに関しては、対人戦か対モンスターかの違いかも知れないけどね。それに、僕達が苦戦していたダンジョンも攻略しちゃった様だし、もしかしたら冒険者に勝てる所なんて無いかもね。」
「え!?」
ダンジョン攻略したのか ?
マジかよ・・・
いやでもダンジョンブレイクを止めるなら、それは1番安全か。根本的な問題を潰せばいいんだもんな。
「でも、黒鋼騎士団がここまで名を馳せたのは、それのおかげじゃない。」
「これ以上に何かあるんですか ?」
もうお腹いっぱいですよ ?
「あの騎士団がここまで名を馳せたのは、団長である漆黒の刃姫のおかげだろう。あの人は王国最強と謳われる人だ。他の騎士団の団長達よりも、強いと言われてるんだ。」
「ノクス・・・エストレア」
漆黒の刃姫!?
くそかっけえ!!
名前が既に強い!
「それにあの人は、君と同じクラウスさんの・・・」
ドゴオオオオオオンン!!
上空で爆発が起き、ガルドさんの声がかき消される!
魔法と魔法がぶつかり合った音!
この数日で何度も聞いた音!
敵襲だ!!
ドドドドドドドド!!!




