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はしがき

 噓と失恋の多い人生を送っています。自分には恋愛というものが見当つかないのです。


 自分は西日本の田舎の一般家庭で生まれ、 貧しくも無ければ裕福でもない、 そんな家庭ですくすくと育ち家族から愛されて育ちました。 ですが、 同年代の女子からは忌み嫌われ嫌悪の対象となっていたのです。 彼女達には自分の姿が異形の怪物に見えていたそうです。


 顔は深緑色の髪に左目が隠れている。体つきは細くその上、 身長も高い。なのに何故だろう? 自分は特殊なフェロモンを放っているのでは?と思ったりしました。


 それから、 中学、 高校でもまともな恋愛はできず何度も失恋ばかり。 皮肉な事に努力は報われなかったのです。 大学に入ってからは少し積極的になり、 10人にアタックしたが、 全員彼氏持ちでした。 自分には恋愛運が無さ過ぎたのです。チクショー!


 8月のある日、 高橋川という家から遠く離れた川で釣りをしていました。 ボーとしていると地雷女子がもがきながら流されていました。 すぐさま、 救急車を呼び飛び込んだ。 川の流れはそこまで強くなく難なく彼女を抱きかかえた。 (まだ体温が温かいまだ生きてる!)そう考えながら川岸に戻りちょうど来ていたに救急隊員に彼女を渡しましたがもう死んでた。 亡骸には絞殺の跡があり入水前に殺されたそうだ。 しかも、 殺されたのは数時間前ではなく昨日だと言う。あの動きは何だったのだろうか? あの温もりは何だったのだろうか? 幻覚でも見ているのだろうか? 自分の頭の中がそれでいっぱいになった。 その後、 自分は事情聴取を受け指紋を取られました。 せっかくの釣りが台無しなり、 尚且つ溺れている人を救ったかと思いきや、 まさかの死体……踏んだり蹴ったりだ。 でも、 あの温かさは忘れられなかった。


 それからもあの温かさが忘れられない……酒を飲んで忘れようとしてもダメでした……あの感触、 あの温度今になっても忘れられません。 自分は浴びる様に酒を飲み、 あの日の事を忘れようとしました。 ですが、 忘れられないのです。 精神病に行ってみましたが、医者からは「激しい思い込みですね、 お薬を出しておきます」と言われた。 その言葉を聞いて、 自分は(的外れな回答だ)と思いました。 渡された薬は精神安定剤だけで、 食後に1錠と書かれていました。 薬を取り出し一口飲むとあの感覚が忘れられ、 自分はあの()()から解放された! と思ったのもつかの間。 蘇ってしまった、 その上脱力感が半端ない。 その後も、 自分は無性に薬を飲んで忘れようとしたが、 ダメでした。 むしろ効果が薄れてきたのです。


 自分は頭を抱えながら近所のバーに入り、 水割りの()()()()を飲み干しました。 この酒を飲むことで気持ちが晴れたが、 時が経つにつれ記憶が再び蘇る。 そして、 また酒を飲んで忘れる……とんだ依存症ですね自分は……


 それから月日が経ち、 就活に悩んでいた自分に合う仕事がわからない、 その仕事でやっていけるのだろうか、 そんな不安がこみ上げて来た。 3月頃、ペット用品を販売している会社に就職できた。 その時はとても嬉しかったです。 念願の会社へ就職、 これほど嬉しいものはなかった。 そのうえ、 論文の提出も早めに提出し、 暇な時間が増えました。 その事を知った会社の社長が話をかけてきたのです。 社長は40~50代の外見で、 尚且つ茶色のスーツを着服しています。


「津島 十字君! 私の研究を手伝ってくれ! 」


 社長は有名な研究者で、 世間では()()()()()() ()()()と呼ばれています。 その博士が、 自分に()()()()の繁殖を手伝ってほしいと頼んで来たのです。 無論暇だったので快く引き受けました。 一見簡単そうに見えるが、 実は輸入されたカマキリが大半で、 中でもオオカレエダカマキリとニセハナマオウカマキリ、 メダマカレハカマキリは1万以上します。 そのため、 共食いに気をつけなければなりません。 博士からは「メスを満腹にさせてからだとやりやすいぞ」と仰っていましたので、 早速やってみました。 10時間後、 何とか出来ましたがめっちゃ疲れました。 オオカマキリはとても簡単でしたが、他の個体は餌の選り好みが激しかったので難しかったです。


「よくやった! 十字君! 今日は私の奢りだ!」


 博士がご飯を奢ってくれるので自分はとても嬉しかったです。 日も暮れており、 博士の行きつけの居酒屋へ行きました。 一見普通の居酒屋だが酒の種類が多すぎる。 博士は赤ワインを頼んでいましたので、 つられて赤ワインを頼みました。 実はアブサンよりも赤ワインの方が好きで、 よく肉と一緒に食べています。


「博士~結構疲れましたよ~」


「だろ! カマキリってのは世界中に散らばっており、 色んな種類がいるんだ!」


 博士はとても熱く語った。 そのせいか、 自分の頭の中はカマキリによる知識で埋め尽くされあの感覚を忘れ去ることができました。 話を聞いているうちに自分もカマキリの知識を得ようと博士に様々な質問をしました。 時はあっという間に過ぎいつの間にか9時を過ぎ、 一緒に店を出ることにしました。


「十字君! また飲みに行こう!」


 その言葉を聞いて、 「はい!」と返答しお互い別れました。 それから月日が経ち、 別の大学の友人がイベントをやっているとの事でボランティアをする事になりました。 来場者にパンフレットを渡して道案内をするだけという簡単な仕事です。 ずっと働きぱなしという訳ではなく、 ちゃんと休憩時間もあり学校内を見渡していました。 その時、 自分好みの女の子が目の前に現れました。 「道に迷っておりますので、ご教示頂けますでしょうか」と嘘をつき彼女に近づきましたが、 目や口から大量のカマキリの子供が湧き出る幻覚を見たのです。


「どちらに行かれますか?」


「広場に出たいですね」


 またカマキリを吐き出す幻覚を見ましたが、 先ほどより数が少ないです。 恐らくですが、 半分本音で半分噓だから数が少なったのでしょう。 噓をつく事が発生源という事がわかったが何故このタイミングなのかが見当もつかない。


「こちらへどうぞ!」


 彼女から後光が照らされた、 その姿に心を奪われ誘われる様についていきました。 それから2人で楽しく会話をしていましたが、 ある発言で全てが壊れた様な感覚に襲われました。 その発言は「私彼氏いますよ~」一瞬で鬱となり自殺したくなりました。 希望など抱くものではなかったと後悔しています。 広場に着くと彼女は手を振って見送ってくれました。 とても最悪だ……今すぐ自殺したい……大きな河川へ向かいハリガネムシに寄生されたカマキリの様に入水自殺を図ろうとしましたが、 こんなことで死ぬなんて馬鹿らしいと思ってしまいました。 入水直前だったので服はまだ濡れてない。 自分は空を見上げて生きようと決意したその時、 背中に強い衝撃が走り、 突き飛ばされました。 一瞬ですが車の姿が見えましたがそのまま進んで水没しました。 体が動かない、 態勢も変えられず水面に叩きつけられそのまま沈みました。 水の中が梅の様な赤色に染まる様に見えてきました。


 ――あぁ……自分も……梅干しの様に甘酸っぱい愛情に包まれたかった……――


 そうして自分は目を閉じ永遠の眠りについたと思いましたが、 手術室の様な部屋で目を覚ました。

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