馬車の中で
9話目です。
馬車の中で
馬車中に入ると王女殿下がすでに座っていた。
オレは王女殿下の対面に座ることにした。
「失礼いたします」
「どうぞ、アイン様。アイン様は、おいくついらっしゃるのかしら?」
「その、アイン様ってのはおやめ下さい。王女殿下。わたしは平民です。年は6才になります」
「まぁ、アイン様はわたくしと一緒の歳ですのね」
「ですから、そのアイン様ってはおやめ下さい」
「あら、ならわたくしのことも王女殿下と呼ばずアーシェとお呼びください」
「そ、そういうわけには行きませんよ。アシュリー姫様でご勘弁ください」
おれは両の手のひらを王女殿下にむけてひらひらさせていると王女殿下はさらに追撃してきた。
「それならば、この馬車の中だけでいいですから、もっと砕けた話しかたをしてくださいませんか?」
「わ、わかったよ。アシュリー姫様。これでいいかい?」
オレがそう言うとアシュリー姫様はニコッと笑った。
「ええ、それでよろしいです」
オレはやっとかとホッと胸を撫で下ろしたがアシュリー姫様の口からとんでも単語が出てきた。
「アインくんも邪神認定された子供なのでしょう?」
「え?」
あまりにも意表を突いた質問だったので素が出てしまった。
「隠さなくてもいいわ、ある時期に生まれた6才の子供は皆邪神認定された子供だもの。あの襲撃者たちはアースタリアの者たちなのでしょう?彼の国は、ここ数年ある時期に生まれた6才の子供を殺しまわっているわ」
なんてこった、オレのせいで子供たちが殺されまくっていたなんて知らなかった・・・
アシュリー姫様を危険にやったのはオレだったのか。
やっぱりオレだよな、ステータスに神と名のつく銃神のクラス、スキル、称号のある・・・
「ごめんなさい、怖がらせるつもりはなかったの」
「いえ・・・違うんです。ボクが・・・ボクのせいでこの国の子供たち、ひいてはアシュリー姫様を危険な目に」
「どうしてかしら?アインくんのステータスには邪神と書いてあるの?」
「いえ・・・ボクのステータスにはクラス、スキル、称号に『銃神』とあります」
「なら、ちがうわよ。仮に本当にその『銃神』が邪神だったとしてもアースタリアのものどもが勝手に決めつけたものよ。関係ないわ」
「・・・」
「納得していないみたいね。わたしね未来予知スキルがあるんだけどね、これはとっておきの未来予知よ。あなはこの世界を救うの」
オレは呆けた顔でアシュリー姫様を見る。
「ボクが、世界を救う・・・?」
「そう!あなたはこの世界を救う勇者なのよ!そういう未来が見えたのだから誇りなさい、自分を。わたくしはね、もっと小さい頃から未来予知が勝手に発動しててどんどん見たくもない未来予知を見せられて、こんなに精神だけ大人びちゃったの。周りの子からも浮いちゃって、とても辛かったわ。でも、その未来予知のなかでアインくんが勇者として活躍する姿を見て、わたしを今日みたいに助ける姿を見てたから、今日やっと会えたことがとっても嬉しいの」
「・・・」
「だから、勇気を持って、またわたしを助けてアインくん」
「・・・わかりました。アシュリー姫様が危機な時には必ずまたわたしが助けにまいります」
「もう、また口調がもどってる!」
「あっ、ごめん。アシュリー姫様が危ない時はボクが助けに行くよ。これでいいかい?」
「よろしい」
アシュリー姫様がそう言うと、オレたちは2人で笑いあった。
同じ6才なのに、すごい安堵感を与えてくれるアシュリー姫様を好きになったのは、思えばこの時からなのかもしれない。
しかし、オレの復讐リストにまた一つ加わったな。
神聖国アースタリア、いつかぶっ潰してやる。