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副団長の怒り。

「フィリックス=グラントぉぉ! そこに座れぇぇぇぇ!!」


「……座っているが?」


「…………」


 エルザにぎろりと睨まれ、フィリックスは大人しく執務室の椅子に座り直した。


「今、何と言った!?」


 エルザは怒っていた。怒り狂っていた。

 新兵が魔物の襲撃に驚き、守るべき民間人を置いて我先にと逃げ出した時と同じくらい怒っていた。


 だが、そのエルザを前にして、フィリックスは緊張感のない顔でへらりと笑ってみせた。


「紫色のドレスを着たアニスは本当に美しくて、まるで妖精か女神のようで……」


「そこじゃない!」


「俺をフィルと呼んで見上げた瞳が、なんとも愛らしくて……」


「そこでもない!」


「アニスが『今日は疲れているから』と早めに休んで……」


「行き過ぎだ、戻れ!」


 正解を窺うように、フィリックスは机の前に憤怒の形相で立つエルザを上目遣いで見上げた。


「『君に妻の役割を求める事はしない』……?」


「何で、そんなあほうな事を言った!?」


 ばあんっと音を立てて、エルザが机を叩く。

 正解であっても不正解であっても、どちらにせよ彼女の怒りは収まらないらしいという事に気付き、フィリックスは首を竦めた。


「いや、だって、昨日まで名門の伯爵家のご令嬢だったんだぞ? 荒っぽい騎士団長の妻など、彼女には荷が重すぎないか?」


「……」


「それに、家の事なら執事と侍女頭に任せればいいし、アニスには好きなように過ごしてほしくて」


「…………」



「それに、その、妻という事になれば、あの……」


 フィリックスが大きな身体でもじもじとしてみせる。


「ああ、夜の方か」


「エルザ! いくらお前でも、嫁入り前の女性がそのような事を口にしては……」


 ぎろりと睨まれ、フィリックスは慌てて話を元に戻した。


「……今回の婚姻は、俺の方から一方的に望んだ事だろう? 出来れば、アニスにも俺を好きになってほしくて」


 そのために猶予期間が欲しかったのだと、フィリックスはそう言った。


 ならば、素直に言えばよかったではないか。

 あなたに恋い焦がれている。

 どうか、自分を好きになってほしいと。


 心底呆れたというように、エルザは大きなため息をついた。


「面倒な事になっても、私は知らないからな……」


「?」




 












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