2話 夜の森にて
えー。こちら、アズリナ・ラウルバーク、絶賛迷子中です。
って呑気に現状説明してる場合じゃないや。ひとまず現状整理だね。迷子になった原因は俺がリスの魔獣を見つけて追いかけてたらいつの間にかみんなが居なかった...。
あれ、これ俺が100%悪いやつじゃん。
みんな俺のこと探してるよなこれ。
俺こんなんじゃ旅に出るとか絶対に禁止されるやつじゃん。
言い訳の余地ゼロ!はいもう終わったわ。
と、とりあえず魔獣倒して持って帰るか?
いやいや、帰路がわからないから無理なんだわ。
なら先に村を探すか?
いやいや、どんどん離れてしまったら笑えないぞ。
.....
でも待っても状況は動かないしなぁ。
仕方ない。動くか。道の一本でもあればどこかの村には行けるだろ。
よく閃いた。俺。天才。
って思ってた時期が俺にもありました。
はい。
道の一本どころか獣道すら見つかりません。
もう夕暮れです。
想定しうる展開の中で一番最悪な事が起きようとしております。
そう。野宿!
はー。最悪っ!
もう魔獣狩りが云々言ってる場合じゃないよ。
命の危機だよ?
わかる?
死ぬかもしれないんだよ!?
とりあえず寝泊まりできる安全な場合を探さないと。もちろん村に戻れたら最高なんだけどこの辺にそれらしき明かりは無いんだよね。
うーん。喉が渇いた。お腹もすいた。
あれ?明かりが見える。
もしかして村か...?
いや、あれは明かりじゃない。獣の目だ。
良かった。魔獣じゃない。でもあれを明かりと間違えるなんて相当終わってるなぁ。
俺はここで野垂れ死ぬのかな?
...あれは。洞窟?
頼む。幻覚じゃなくて洞窟であってくれ!
朗報です。洞窟が見つかりました。
入り口には湧き水もあります。
神はまだ俺を見捨てては居なかったな。
ふぅ。ようやく一息つけるな。
とりあえず今日はここで一夜を過ごすとするか。
さて、寝れそうな岩場を探さないとね。
えー。こちら、アズリナ・ラウルバーク。
洞窟の中にもふもふの岩があったので掴んでみたら熊の魔獣でした。しかも俺の身長の2倍くらいあるやつ。
やばいって、やばいって。
はー。そもそも洞窟なんだから先客がいてもおかしくないよね?なんで気がつかなかったんだよ俺。
本当にやだ。俺もう俺の事大嫌い。
にしても死んだふりってのは本当に凄いね。
んでもめちゃくちゃ怖いわ。
あ、くまさん。早く寝てください。俺、すぐに帰りますんで。え、なになに?こっち来ないでくださいよ。
なんで顔近づけてくるんですか?俺死んでますよ?
俺なんて美味しくないですよ。
ちょ、俺のケツくんくんしないでください。
「ひゃぁあぁっ。」
おい熊、なんで人のケツ舐めるんだよ。
最悪じゃねぇか。
ってあれ、さっき俺声に出ちゃった....?
これ、絶対絶命?
ゆっくり後ろを振り向く。
うん。熊こっち見てるね。終わったわ。
お母さん。今までありがとう。熊の餌になってきます。