エピローグ とある英雄の記憶
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「ついに登場です!彼こそが偉大なる英雄。機械都市ホープに生まれた我らがスター!アランディール様ですッ!!!」
「一同、偉大なる拍手でお迎えください!そしてこの英雄の誕生を目撃することができる私たちは本当に....
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「すみません。そろそろお出番です。お願いしますよ。」
「わかっておる。この狩りの功労者をそう急かすな。なぁに、わしは何処にも逃げんよ」
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わしはアランディール。52歳のじじいだがまだ現役の狩人じゃ。
何?そんな事は聞いておらん?
まぁ、いいじゃないか。この老いぼれの摩訶不思議な話を聞いてくださらんか?
いやー。世の中本当にひどいものじゃ。
英雄とも呼ばれた男を殺そうとするなんてな。
ん?お主、田舎暮らしだから知らぬのか?
そうじゃな。どこから説明しようかの。
お主、魔獣は知っておるか?この世界に存在する獣で突然変異し知能を持ち、人間を襲う恐ろしい恐ろしい獣じゃ。
時にはハムスターのような可愛い意志疎通のできる魔獣もおったりするがの。
しかしほとんどは犬や蝙蝠など人間離れした生命体がほとんどじゃ。こやつらは生まれるなり人里を襲い食糧を食い潰すのじゃ。
わしら狩人はこやつら魔獣を狩って生計をたてている命がけの仕事じゃよ。
その日もわしは魔獣を狩っておったのじゃ。しかしいつもと違う異変を感じての、その異変の正体を突き止めようと森の中に入っていった訳じゃ。
するとそこにはわしの身長の5倍ほどもある大きな熊がおったのじゃ。それも魔獣化しとるやつがな。
わしはこの魔獣が暴れるとまずいと思ってな狩ることを決めたのじゃ。もちろん今考えれば無謀以外のなにものでも無いのじゃがな。
幸いにもわしの武器はロングボウでな、熊野郎の懐に潜り込む必要は無かった訳じゃ。それに地形の理もあった。わしは木々を遮蔽物にし、熊野郎の足ばかりを集中的に狙ったのじゃ。ヒット&アウェイというやつじゃな。
あぁいうでかい獲物は動きを止めるに限るからな。
しばらくして熊野郎は転倒しおった。
わしは好機と見て矢を熊野郎の眉間にぶち込んだのじゃ。熊野郎は雄叫びを上げた後、ゆっくりとその頭を下ろしたのじゃ。これにてわしは世紀の巨大魔獣討伐の英雄となったのじゃ。
ん?なんじゃ?わしが英雄と呼ばれる事に驚いておるのか?
何?
アランディールの名を知らない?
それもそうじゃろう。わしの名を知るものは数えるほどしかおらぬからな。
機械都市ホープを知っておるか?そう。あそこじゃ。化け物どもの巣窟にしてかつて最も繁栄していたと言われるあの国じゃ。
わしはその国の出身でな、さっき話した通りで英雄になったのじゃ。もちろんその時のわしは嬉しかった。しかしの、国のお偉いさんがたはわしを恐れてしまったんじゃ。その結果でっち上げの反逆罪で命を狙われるはめになったんじゃ。
本当に腐った貴族達よ。
機械都市ホープ?あそこは滅びたはずじゃと?
あぁ、滅びておるぞ?150年ほど前に。
さて、話を戻すかの。
わしはその反逆罪をはいどうぞと受け入れるはずもなくその場でロングボウ片手に逃げ出したのじゃ。もちろん誰も殺してはおらん。
足を射て足止めくらいはしたがの。
さて、そんなわけでわしはいち都市を敵に回した訳じゃ。
わしは機械都市ホープから逃げ出そうと思ったのじゃが兵士たちが多くての、逃げ回るうちに中心へと追い詰められたのじゃ。
この時わしは覚悟したんじゃ。人を殺すという行為を......
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.....お主、聞いておるか?
全く。会話の途中で寝るなど失礼じゃな。
どこまで聞いておった?
何?追い詰められた所までか?
んー。もう一度話すのも面倒じゃな。
簡単に言うとじゃな、殺しを覚悟したとき都市の中心部から何やら紫の霧が出てきおったのじゃ。
それに触れた兵士たちしばらく棒立ちした後にはばったばったと倒れての。
しかしわしは何故か生き残ったのじゃ。
しかも不老不死という謎の力を得てじゃな。
そうしてわしは今ここに居るのじゃ。
本当に腐った連中どもじゃ。
長々とすまんかったな。こんな老いぼれの愚痴を聞いてくださって。そんなお主には申し訳ないがこの事はほとんど忘れて欲しいのじゃ。何?話し出して忘れろなどと自己中だと?
心配するな。お主は目が覚めたらほとんど忘れておるから気にするな。
さて、わしもそろそろ行かねばならん。
もう一度お主に伝えよう。
忘れられた英雄"アランディール"
お主が真に終焉の霧に挑むと言うのならばこの名はちとばかり助けになるだろう。
では失礼するぞ。
安らかに眠れ。
善き若者よ。