*◇ 光散る ◇*
「シェリンの愛庭獣は光になって散った・・・『ヴィジョン』のどこかに?」
「バラバラ?」
「《ええ、多分。光の姿で》」
「その時シェリンが、『ヴィジョン』の中にいたってこと?」
「《そうではありません。剥がされた瞬間、愛庭獣がヴィジョンの中で散ったのです》」
「自分の意思で?」
「《はい、おそらく・・・甘いお菓子なんていががです?クッキーやアップルパイなど》」
「「いただく」」
「《今現在シェリン姫は、別宅にて生命維持装置にかけられいます》」
「急がないといけない話なの?」
「《それが・・・ヴィジョンを護るために務めを担っていた彼女にはいい療養だ、と》」
「苦しんだりしてない、ってことだよな?」
「《はい。もちろん。苦しんでおられましたら、急を要すると申します》」
「うんうん、分かった。『ヴィジョン』には誰かいたりするの?」
「《はい、さまざまな種族が混在しております。一番珍しいのが人間かもしれない場所》」
「「・・・なるほど・・・」」
「《ヴィジョンにも色々おりまして、少数派を滅ぼすのに夢中な者が少々おります》」
「そいつらは少数派じゃねぇの?」
「《うーん・・・多分、その輩たちはそれに気づいてないですね》」
そこに黒うさぎのぬいぐるみが銀盆にお菓子を持ってきた。
「《これかな?》」
「「ありがとう」」
「《いえいえ。お安いご用》」
案内されたその屋敷の聖堂に似ている空間に、思わずザットと顔を見合わせた。
「《出発の際は必ず、体臭隠しの錠剤をお飲み下さい。人間であるとバレるとまずい》」
渡された水で錠剤を飲んで、足元の魔方陣が光り出し風を巻き起こす。
床の模様の発光と不思議な風が静まる頃、アヤナとザットの姿はいなくなっていた。