*◇ 鳥かごの姫とテラー ◇*
立体映像でピンクのハートをいくつも飛ばすアニメチックなうさぎ。
その案内で、ぬいぐるみロボたちと半壊した屋敷の『シェリンの部屋』に向かう。
「《別名、『鳥かご』・・・》」
廊下には電子絵画が額縁に大小飾ってあって、その中をアニメうさぎが移動している。
そして到着したシェリンの部屋は、壊れた壁や天井から光が差していた。
ドーム状の部屋のふちを彩るように植物たちが並んでいる。
大きな鳥かごの中にベッドが設置されていて、格子の隙間から花植物がこぼれてる。
主人を亡くした部屋は、どことなくそれ自体が寂しげだ。
ほこりが、陽に粉雪のように白く舞っていて、綺麗だ。
幻想的だとも言えるだろう。
近い将来、ほこりが舞う場面なんて、誰も見れないのかもしれない。
そういう謳い文句のひと昔前のCMを思い出した。
まぁ、その国をあげての試みは災害で失敗に終わったけれど。
「シェリンは『ヴィジョン』を保つために眠っていなかった・・・?」
ザットが、「俺もどこからかそう聞こえた」と言う。
「《正確には、休む時間がなかったんだ・・・ベッドは情緒的なものだった》」
一番近く、シェリンの部屋にある電子機器にホログラムが現われた。
その姿はハートを飛ばすうさぎではなく、スーツを着た茶色毛の黒人男性だった。
「君はもしかして、さっきのホログラム?」
「はい。私の名前はテラー。男性であるなら、マザーへの申請で変身ができる」
「「マザー?」」
「《はい、僕は電子機器ですから、マザーコンピューターが総元なんですよ》」
「ふぅん・・・なんで女子にはなれないの?」
「《それは、マザーの意思》」
「そうなの」
「・・・で?現実逃避が、なんて?」とザット。
魔法石『藏之助:くらのすけ』をぬいぐるみロボに渡された。
そして使い方を教わったあと、ナイスサイズに変わる指輪をふたりは右手薬指にはめた。
[魔法石指輪蔵之助:まほうせきゆびわくらのすけ]→その指輪の石は異次元につながっている。魔法を発動することにより、対象物質を異次元に移し保存、出し入れができる。蔵之助の石は黒い、とされているが、蔵之助は使用者の実力により『蔵伸:くらのび』と言ふ「白い石」に変じ、通信や干渉を可能とする。