3.人は違った輝きに惹かれる
アクセスありがとうございます。
長いですが少しずつでいいのでどうぞ最後までよろしくお願いします。
1ヵ月の間、それはそれは大変だった。
エリック様は週3~4のペースでリバランス公爵家に来ていた。公務は大丈夫なのか?やって来る度に言うのが「エーデル嬢は素敵です。」だった。素敵って一体どういうことなんだろう。
「フィール、明日着る服ってどれだっけ?」
「こちらのドレスになります。何か変更がございますか。おそらく今なら間に合うと思います。」
明日...。そう、明日は王族主催の未成年貴族だけが参加するお茶会がある。王族が未成年参加のお茶会を開く主な理由2つ。
①貴族令息、令嬢の顔や交流関係の確認
②王族のイメージアップ
わたしは公爵令嬢であるため参加が義務となっている。正直言って面倒くさい。ゆっくり今後について考えたいのに、優雅にお茶会とは。まぁ、美味しそうなスイーツが食べられると思うと我慢は出来る。それに今回のお茶会でゲームに登場するキャラクターを確認することが出来る。このチャンス、絶対に逃すものか。
「フィールは参加するの?」
「いいえ、わたしはエーデル様の侍女ですので。それに、きっと弟が一家の代表として参加するはずですので。」
へぇ~。フィールって弟がいたんだ。初耳だった。わたしも侍女になればこういう行事に参加しなくてすむのかな。
ついにお茶会の日が来た。そしてエリック様と約束した日から丁度1ヵ月が経った。早いものだった。エリック様に心惹かれていないと言えば嘘になるけれどもこの気持ちはファンだからというものなのかもしれない。つまり、エリック様に惚れてはいない。婚約もしない、はず。
馬車から降りた後、手短に受付を済ませて会場に入った。
本来お兄様と参加する予定だったが、学園で少し問題が起きたため今回は不参加になってしまった。どんな兄だったけ?
近くにエリック様がいたので挨拶をしておこう。
「本日はお招き頂きありがとうございます、殿下。エーデル・リバランスでございます。」
やはり貴族の挨拶には馴れない。挨拶は基礎だけれども、こんな挨拶前世ではしてこなかったから本当に出来ているかなど不安になる。
「来ていただきこちらも嬉しいです。」
後で会いましょう。耳元でそう囁かれた。少しドキドキしてしまった。これがイケボ!攻略対象の1人だけあって一言一言の破壊力と行動のカッコよさがえげつない。この人の婚約者は一体誰になるんだろう?
近くにいたご令嬢と雑談したり、王宮お抱えパティシエが作った美味しすぎるスイーツを食べて時間を潰していた。時が進むのがとても長く感じる。
あ、あれって
「アイラス・ジェシー!」
思わず声を出してしまった。慌てて周りを確認する。幸い周りに人が少なかったお陰で特に誰も気にしていないようだ。よかった。
ここ声をかけるかかけないか?難しい選択だな~。でも思い立ったら吉日。当たって砕けろ。とにかく声をかけてみよう。
「初めてジェシーさん。エーデル・リバランスと申し上げます。よかったら少しお時間よろしいでしょうか?」
振り替ええたアイラスの顔は色白いというより青白かった。アイラスは少し考えるそぶりを見せた後、返事をしてくれた。
「リバランス様?はじめまして、アイラス・ジェシとー申します。」
「せっかくですし、わたしとお話ししてくれませんか。」
「いいですが、こんな私でよろしいのでしょうか?私は存在価値の無い人間ですし。」
「そんなことないよ!なんでそんなにかわいいのにそんなこと言っちゃうの?それを言ったらわたしもそうだよ。」
あ!しまった。言い過ぎたかも。さすがにこれはよくなかった。アイラスってこんな子だったけ?ゲームではもっと強くてはっきりと物事を言っていたような。
「...めて。こんなこと言われたの初めてです。」
アイラスはぽろぽろと涙を流しながら、しゃがみこんでしまった。
わたしも慌ててしゃがみ込み、目線を合わせた。
「何か辛いことがあるなら言ってください。あって間もないばかりで信用できないと思いますが。」
「でしたら、私を殺してください。」
「殺して。」どうしてアイラスがそんなこと言うの。ゲームでは婚約者にとにかく執着していた。理由はわからないが、とにかく婚約者が必要だと言っているような感じだった。
もしかしてこのことがアイラスの発言と関係があるのかな。
アイラスは急に顔を真っ青にしてごめんなさい、ごめんなさいと謝っている。アイラスが謝ることではないのに。
「ジェシーさん、ここでは言いにくいことがあると思います。ですからわたしの屋敷に来ませんか。そこなら心置きなく話せると思いますから。」
「いいのでしょうか、こんな私が。ご迷惑ではないのですか?」
「そんなことないよ。今決めましょう、いついらっしゃるかについて。」
「リバランス公爵家の邸宅までジェシー侯爵邸から約半日くらいだったと思います。」
そんなもんなんだ。それならこちらも準備があるし、
「3日後とかどうでしょうか。」
これならこちらもゆっくり準備ができる。
「わかりました。3日後ということでよろしいのでしょうか。私は大丈夫ですが。」
「そんな心配しなくてもいいですよ。ジェシーさんはお友達の家に遊びに行く感覚でいいのですから。」
「友達...。」
最後にアイラスが言ったことはよく聞こえなかったが、とりあえずこちらで準備できることはいっぱいしておこう。アイラスの未来がかかってるかもしれないからね。
最初にあった時よりアイラスは明るい表情をしていた。
わたしは3日後のことを考えてウキウキしながら馬車のほうに向かった。
暗黙のルールで会場に1時間以上いれば帰ってもいいことになっている。そういうところは親切だよね。でもなんか忘れている気が...。おいしいスイーツはいっぱい食べたし王宮の庭園がどんなものかこの目で見ることが出来たし、アイラスに会うことも出来た。なんだ気のせいか。
待機していたフィールに声を掛け、受付に挨拶を済ませて出ようとしたら後ろからある最近聞きまくった声が聞こえた。
「待ってください、エーデル嬢!」
あっ!忘れていた。そういえば最初にエリックに声を掛けられていたのを忘れていた。怒ってるかも。というか帰る気分でいたのにどうしよう。わたしの頭の中で「危険!危険!」というサイレンが鳴り響いていた。
そうか、ひっかかっていたのはこれだったのか。
わたしはロボットのようなカクカクした動きで苦笑いを浮かべながら例の人物のもとに体を向けた。
「あはは。エリック様何か御用でしょうか。」
「後で会おうって約束したじゃないですか。勝手に帰らないでくださいよ。」
まさに子犬!かわいい。じゃなくてこんなことされたら断れない。ここは仕方がない。
「ここでもよろしいでしょうか。」
「...、ちょっと移動してもらいます。」
はぁ、まぁいっか。イケメンの顔を見放題だと思えば何とかなる。
わたしは頷いた後、フィールに少し休んでいてと指示をした。
エリック様は少しもじもじした動きをした後、意を決したように声を掛けてきた。
「エーデル嬢、少し失礼します。」
きゃ!
目線が高くなったというか浮いているようだった。
「大丈夫でしたか。問題ないようでしたらしっかり掴まっていて下さい。」
とりあえずぎゅっとエリック様にしがみついた。そして少し怖かったので目をつぶっていた。
もう大丈夫ですよと言われtのでゆっくりと目を開いた。
ここはどこ?部屋みたいだけど。それよりもしかして「お姫様抱っこ」なのか。
「何か問題はありませんでしたか?」
近くのソファに降ろしてもらった。ソファはとてもふわふわだった。きっと高級品なのだろう。
「ここはどこなんでしょうか?」
「ここは、私の執務室です。」
執務室?って、つまりここは王太子宮の中っていうことなのか!?
「どうしてこんなところに?婚約もしていない小娘がこんなところに入ってもいいのでしょうか?」
「私が連れてきたのですから問題はないです。それより、返事をください。1か月前の婚約の返事を。」
婚約の返事、どうしよう。適当なこと言って変な空気になってしまうのも嫌だしな。ここは正直に言おう。嫌われてもいいと投げやりな気持ちで正直な気持ちを伝えた。
「わたしには秘密があります。それに先日もお話しした通りわがままな人間です。」
エリック様はうんうんと頷いてくれている。
「わたしには前世の記憶というのがあるんです。この世界で言う平民でした。わたしはゲームというものを作っていました。」
「ゲームって試合のこと?」
「えっと、いろいろ種類があるんですけど、わたしが創っていたのは音声がある映像を中心に主人公、あ、この場合の主人公っていうのはゲームをする人のことです。色んな選択をしながらハッピーエンドを目指すっていうものです。あ、恋愛がテーマのゲームです。」
はぁ、全然説明出来なかった。プレゼン能力をもっと上げなくちゃ。プレゼンの技術があれば何かと助かることが起きるかもしれない。
「そしてこの世界が前世のわたしが創っていた恋愛ゲームの世界なんです。」
「主人公って男性?それとも女性?」
「キャロル男爵令嬢が主人公なんです。主人公と恋愛する可能性がある登場人物が5人いてそのうちの1人がエリック様なんです。」
喋りすぎたかな?つい興奮して話しすぎてしまったかも。
「エーデル嬢はちなみにどんな役で登場するの?」
「エーデルは主人公とエリック様の恋愛を邪魔する悪役令嬢です!」
「そっか...、エーデル嬢は私のことが好きだったから邪魔をしたのですか?」
「まぁ、婚約者だったので、ね。」
でも今はエリック様と婚約していないから悪役令嬢にならない。はず。原作通りにいかなければの話だけどね。
「そっか、でもそれはあくまでゲームの中の話なんだよね。じゃあ可能性あるよね。エーデル嬢、いえエーデル、私と婚約していただけませんか。貴女が抱える不安を私にも持たせてください。なんなら全部持たせてください。」
え!?エリック様さっきの話聞いてたよね。こんなどこから来たかもわからないようなわがまま人間に婚約を申し込む人間なんているの!?
※エリックがいます。
「婚約の話ありがとうございます。ですがわたしはエリック様に全て持たせることなんてできません。身勝手な人間はだれかにたくさん迷惑をかけたと思います。ですからこれからわたしは今までしてきたこと懺悔し謝罪し償わなくてはいけないんです。」
「懺悔」、謝罪、償い?そっれて全部ゲームのエーデル嬢なんでしょう。だったらしなくてもいいのでは。」
「確かにそういう意見もあるかもしれません。ですが、公爵令嬢として新たな『生』を受けた以上前世の分も合わせて出来ることは全部したいんです。」
「わがままだよ。私のこと無視して。あの時、婚約の挨拶に行ったとき、私は一目惚れをしたんです。貴女が優しく『リー様』と言ってくれた時、とても暖かい気持ちになりました。そしてその時貴女を人生のパートナーにしたいと思いました。」
リー様。前世のわたしがエリック様のことを呼ぶときはいつも敬愛の念を込めて呼んでいたっけ。懐かしい。もしかしたらわたしが言ったその言葉がエリック様に届いたのかもしれない。
「わたしもエリック様を好きなのかもしれないと思ったことがありました。でもその気持ちは前世のわたしが創ったからかもしれません。」
「でしたら、私と婚約してくれませんか?わがまま同士、『愛』がわかりきっていないもの同士として。最高のパートナーになれると思います。いかがでしょうか?」
「よろしくお願いします。最高のパートナー様。」
直感でこの人となら未来を楽しいものに出来ると思った。あの時のエーデルが言っていた「婚約は1つの未来に過ぎない」という言葉が脳裏をよぎった。わたしってバカだ。婚約するとゲームと同じ未来になるかもとか考えてしまった。そんなこと誰にも分らないのに。
わたしたちは握手をした。お互い晴れやかな笑顔を浮かべている。「契約成立」が今の状況と合っているだろう。エリック様とはいい未来を創れそう。
あの後、外を見ると夕日がこの世で一番なのではというくらい眩しく輝いていた。
エリック様に瞬間移動魔法で馬車のところへ送ってもらった。もちろんお姫様抱っこで。恥ずかしい///
「ありがとう、エーデル。」
「こちらこそありがとうございました。あ!エリック様襟が。」
襟を整えるふりをして耳元でそっと囁いた。
「エリック様は素敵です。」
エリック様は夕陽に負けないくらい頬を紅く染めていた。
馬車に乗る前、エリック様から「エーデルも素敵ですよ。」と言われた。今度はこちらが頬を紅く染める番だった。
こんな不意打ちずるいです。パートナー様。
夕陽ってこんなにも未来を照らしてくれるんだ。今まで生きてきた中で一番眩かった夕陽だった。
その後、フィールに質問攻めされるのはお決まりだった。
あの夕陽みたいに未来を輝かせますから!
誤字脱字、言葉の使い間違いなどご指摘どんどんお待ちしております。
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すぐ投稿サボるダメダメユーザー兼矛盾多すぎ怪文書製造者ですが皆さんを頼りに小説書いていこうと思っています。
もしよければキャラクター達を愛してあげてください。
エーデルの好きなものは?・・・フルーツタルト!(フルーツ全般大好物、栄養豊富)