2.甘い誘惑は身近に!?
アクセスありがとうございます。
長いですが少しずつでいいのでどうぞ最後までよろしくお願いします。
わたしが異世界に転生していることに気がついてから1週間が経った。
わたしが転生したのは乙女ゲーム「ルベライトが微笑む世界で」(通称ルべせか)に登場する悪役令嬢エーデル・リバランスだった。元一般平民だったわたしは貴族の知識がボロボロだったため侍女のフィールによって1週間の礼儀作法、マナー特訓をすることになった。
そして、ついに1週間の地獄の特訓が終わった。
「お疲れさまでした。ですがエーデル様、まだまだ勉強していただくことはございますので頑張ってください。」
そういうフィールの顔はニコリともしていなかった。フィールって最恐?
「ねぇフィール。婚約ってどうやったら回避できるかな?」
「そうですね、とにかく拒否し続ければよろしいのではないでしょうか。貴族間での婚約は当事者の同意が無くては出来ませんがね。まぁ、王族からの命令だったりしたら無理だとは思います。ですがエーデル様がどんな場所に行ってもついて行きますから。」
命令か。エリック様の性格上命令はしないと思うけど。でも何が起こるか分からない。常に最善の選択が出来るように準備をしておこう。
「エーデル様。間もなくエリック殿下がいらっしゃる時間ですので準備致しましょう。前回みたいな服装ではいけませんよ。
今日は気合いを入れて着替えましょう。」
あ、もうそんな時間なのか。エリック様も暇なのね。婚約なんてしたくないからどうしよう。今回は婚約の話では無いことを祈りますか。
「エーデル、エリック殿下が...いやなんでもない。くれぐれも失礼のないようにな。リバランス公爵家の一員らしくな。」
「わかっています。ご心配なくお父様。」
もしもの時の作戦を準備しているから問題なんてない。わたしらしくわたし自身のストーリーを創るんだ。わたしはエーデルから未来を託されたんだから!
王族の馬車が来た。気合い入れなきゃ。手の平に「心」を3回書いて食べる。わたしの前世からやって来たおまじない。心なのは尊敬する人が「心があればどんな事でも少しは先に進めるようになる。」と言っていたから。やっぱりこの言葉いい言葉だな〜。
「エーデル嬢。お元気そうで良かったです。」
「先日は失礼致しました。もう体調も良くなりました。ご心配ありがとうございます。」
ぺこりとお辞儀をした後、顔を上げてにこりと笑って見せる。貴族のご令嬢らしく出来ていたかな?それよりなんだか緊張する。王族の圧って言うのかな手汗がすごいし震えも少しある。
「エーデル、どうしたんだ。」
あ、お父様。危ない危ない、緊張し過ぎて目の前に王太子がいるのを忘れてた。気を引き締めて、わたし!しっかりするのだ。
せっかくということでリバランス公爵家ご自慢のお茶会をすることになった。要するにあの時のリベンジらしい。
侍女や執事たちのおかげですぐに小さなお茶会会場は準備された。仕事が早い!わたしも見習いたいな。フィールにしごいてもらおうかな。恐そうだけど。
わたし達は緊張しながらもミニお茶会をスタートさせた。
「先日はご迷惑をおかけして誠に申し訳ございませんでした。王太子であるエリック殿下に多大なご迷惑をかけてしまったことをここでお詫び致します。本当に申し訳ございませんでした。」
まずはとにかく謝り倒した。今までのエーデル上から目線な態度でご令嬢と接してきた。きっとこのような態度だったことはは王太子殿下の耳にも届いいるだろう。今からでも少しでいいからイメージを良くしなくては。
「いえいえ、エーデル嬢が無事なだけ良かったです。それより、その婚約の件なんですが、どうしてもお話ししておきたいことがあるのですが。」
どっちだろう。わざわざ公爵邸にいらっしゃているくらいだから婚約しようの話かな?それともどんな事があっても婚約はしないの話かな?どっちにせよ準備は出来てる。さぁ来い、どっちなんだ。
「エーデル嬢、貴女がよろしければ私と婚約していただけませんか?」
え?婚約。なんでだ。...きっと国王陛下からのご命令なのかもしれない。でもこっちには切り札がある。
「ありがとうございます。ですがわたしにはそのような大役務まりません。どうか別の方をお探しください。キャロル男爵家のご令嬢、クララさんが適役だと思います。クララさんならきっとこの国を素晴らしいものへと導いてくださると思います。いかがでしょうか。」
そう、ヒロインをお勧めする。それがわたしの作戦。ヒロインならなんだかんだでエリック様のことを支えてくれるだろうし、美男美女&100%ピュアの2人がお似合いだろう。もしかしたらヒロインがやばい奴かもしれない。だけど賭けられることには賭けてみよう。ヒロインには押し付ける形になってしまって申し訳ないけれどこれが最善の選択なんだ。
わたしが1人で満足していると、エリック様が静かに質問してきた。
「エーデル嬢はそれでよろしいのですか?」
は?よろしいも何もこれはエリック様のためだ。別にわたしがいいと思っているし全然問題は無いだろう。何か困ることでもあるのかな?
「はい、わたし誰かと婚約する気はありませんから。」
先生になりたいのに婚約なんてしてたら可能性低くなってしまうもの。目指すは「先生」ただひとつ。
「そうですか...」
エリック様は子犬みたいにうるうるとした目でこちらを見つめている。
そんな風に見つめられても折れ...ませんっ!今のわたしのガードは固いんですからね。先生を目指すため仕方がないの。王太子の婚約者は他のご令嬢にお任せします。だからその顔で見つめるのやめて~。
わたしは前世乙女ゲームの製作者だった。もちろんエリックルートのストーリーは暗記している。でもこんな顔しているスチルなんてなかった。くそ~ヲタクに対して辛すぎる(幸せすぎる)顔をしないでくれ。自分がヒロインだと錯覚してしまうでしょ。あぁ、我慢出来ない。
「ご無礼お許しください。」
ぎゅっ
わたしは我慢出来なくなって思わずエリック様を抱き締めていた。これはヲタクから来てしまった行動だ。ダメだとわかってる。でも、身体は咄嗟に動いていた。恥ずかしいとか不敬罪だとかそんなこと言ってたらわたしの思いを伝えられない。伝わってくれわたしの気持ち。
「(わたしのストーリーに)生まれてきてくれてありがとう、リー様。」
おそらく1分エリック様を抱き締めたあと、わたしはそっと優しくまるで壊れ物でも扱うかのようにエリック様から離れた。
わたしはそーっとエリック様を見てみるとぼろぼろと大粒の涙をこぼしていた。
うわぁぁ!何?わたし何かしちゃったかな。これって王族への不敬罪にあたるのか。どうしよう。
近くにいたエリック様の従事者っぽい方がわたしたちのもとへやって来た。
「リバランス嬢、殿下に何をされたのですか。」
ぎっとわたしを見つめてくる。ものすごい鬼の形相で。フィールより恐かった。
わたしが謝ろうとしたとき、エリック様が手でそれを止めて喋りだした。
「あ、ありがとうエーデル嬢。なんだか懐かしい気持ちがあふれてきてしまって。醜い姿を見せてしまって本当に申し訳ない。」
懐かしい気持ち...。わたしも1週間の間に何度も前世のことを考えていた。もう会えないかもしれない数少ない友達、厳しくも優しくて憧れだった先輩、どこから見てもかわいい後輩、いつもお世話になってたアパートの大家さん、出来ることならもう一度会って感謝の意を伝えたいと思った。でもここはエーデルがいる世界だ。過去の思いに浸ってめそめそしてはいけないと思った。きっとわたしの懐かしいとエリック様の懐かしいは違う懐かしいかもしれないけれど、それでもわたしは。
「エリック様、辛い気持ちや悲しい気持ち、懐かしい気持ちになったらいつでもわたしのところに来てください。あなたの婚約者候補だとか、お世辞だとか、家の為だとかそんなものではなく、ただ純粋にあなたが笑顔で生きていてほしいから。」
わたしは今度こそ王族への不敬罪を免れないかもしれないという覚悟で腕を大きく開いて何かを待った。
だが、エリック様は立ち上がることはなかった。ただそこにじっと。
「申し訳ございません。エリック様の気持ちも考えず。」
しばらく微妙な空気が流れた。誰も何も喋らず目が泳いでいる。
するとエリック様が使用人を全員さげてほしいと頼んできた。頼まれた通り近くにいる使用人たちには屋敷の中かここから離れたところにいるようにと指示をした。エリック様の従事者たちも玄関のほうに向かっていた。どうしてこんなことをするんだろう。
「私は王太子です。ですが1人の人間でもあります。それは貴女も同じ。はい、私のところに来てください。」
今度はエリック様が腕を大きく開き何かを待っていた。
ここでわたしがエリック様のところに行ってしまったらエリック様に惚れてしまいそうで怖い。わたしは先程エリック様に対してひどいことしたのにそんなわがままなことはこれ以上できない。
「ごめんなさい。わたしは殿下にこれ以上ひどいことをして傷つけてしまいたくありません。わがままな人間で本当に申し訳ございません。」
「なんでそんなこと...言うんですか。貴女は知らないんですか、わがままだって言わないと壊れてしまう。だからせめて友達としてでもいい、私にも頼ってください。」
頼る。それは出来ない。わたしにはそんなことをしてもいいとは思えない。わたしは自分の為にエリック様の愛する人を邪魔していたという1つの過去がある。身勝手で自分のことしか考えていないわたしにはエリック様の為というわがままな口実で自分だけ助かろうとした。ひどい人間だ。
「私もわがままな人間ですよ。私は貴女と婚約するのは国王陛下からの命令でした。失礼ですが、貴女とは婚約したいとは思っていませんでした。貴女は地位と名誉に執着するご令嬢と噂を聞いていたからです。そんな人が本当に国を守る『国母』に向いているのかと思っていました。ですが、噂とは事実と異なることもあります。エーデル嬢は地位と名誉に執着する様子は全く見られませんでした。それどころか私のことを優しく抱きしめてくれた、私に手を差し伸べてくれた。卑怯かもしれないですが、私と婚約していただけませんか。」
やっぱり噂はエリック様の耳に届いていたんだ。なのに婚約を申し込んでくれるなんて。
「わがままですが、友達になりたいです。まだ婚約はちょっと。」
「わかりました。それでは1か月間私にチャンスをください。1か月の間に貴女が私に惚れていただけるよう精進します。それでよろしいでしょうか。」
その顔は先程の子犬のような顔ではなく、1人の決意ある男性の顔をしていた。
その後、少し会話した後エリック様は王城へ向けて出発していった。お互い顔は赤くなっていた。緊張やら恥ずかしいやらであまり目を合わせられなかった。
顔が赤くなっているわたしを見たフィールが早く休んだほうがいいと準備をしてくれた。
わたしはベッドに入り、モヤモヤと考えていた。
1か月間で惚れさせる!?婚約してほしい!?一体どうして。でも1か月という猶予がある、その時までにエリック様が失望すればいいかも。でも失望させるといっても何かいい方法は。
仮の婚約者をつくる!
わたしに婚約者がいればエリック様は失望するかもしれない。でも婚約者を探すのはめんどくさい。これはやめよう。もう諦めてエリック様と婚約する?いや、王族との婚約は国の未来を動かす重要なもの。よく考えて準備しなくちゃ。
あぁ休めないよ。とりあえず目をつぶってみよう。
あれ、ここはあの時の場所。確かエーデルに未来を託された場所。でもどうしてここへ?
「貴女、今とても迷っているでしょう。」
この声ってエーデル!?
「はい、いい選択肢が見つからなくて。」
「私から1つ助言よ。婚約は1つの未来に過ぎないってことよ。」
え?それってどういうこと...
あ、朝だ。あの後ずっと寝ていたみたい。あの時は確か夕方くらいだったから夕食を食べ損ねてしまった。お腹ペコペコ。
さすがに何か食べないとやばそうだった為、ベルを鳴らして侍女を呼んだ。来たのはやはりフィールだった。
「おはようございますエーデル様。何を準備すればよろしいでしょうか?」
「朝食の前に何か食べらるものを用意してほしいな。」
「かしこまりました。どのようなものがよろしいでしょうか。」
「じゃあフルーツを。」
フィールはすぐに部屋を出て行ってしまった。。きっと仕事が早いからすぐ帰ってくるだろう。わたしも何かしようかと思ったらすぐに帰って来た。仕事が早い。用意されたものはリンゴだった。フィールはさくさくとリンゴの皮を剝き、綺麗に8等分していた。包丁の使い方がお上手!
「ありがとう。ん~リンゴおいしい。」
これからいろいろ考えなくてはならないことがあるけれど、わたしがこの世界でしたいことが1つ見つかった。それは、「この世界のフルーツをいっぱい食べること」
やっぱり疲れた時はフルーツが1番!
作者都合により再投稿になってしまい、アクセス数稼ぎのような結果になってしまい申し訳ありませんでした。以後気を付けてまいります。
誤字脱字、言葉の使い間違いなどご指摘どんどんお待ちしております。
評価、ブックマーク、コメントお待ちしております。貰えると小説を書く励みになります。
すぐ投稿サボるダメダメユーザー兼矛盾多すぎ怪文書製造者ですが皆さんを頼りに小説書いていこうと思っています。
もしよければキャラクター達を愛してあげてください。
エーデル・・・腰くらいまでのロングヘア&チョコレートブラウンの髪&ハーフアップ&縦ロール&日替わりのリボン(赤か黄緑率 高)