G7で話題になったトウモロコシは買って正解! 原因はツマジロクサヨトウ
G7で、安倍首相がアメリカからトウモロコシを追加輸入する算段を付けてきた事を、なんだか怒っている人が居る。
「トランプから言われるがままに、元は中国向けだったトウモロコシ買うのはミットモナイ! オマエはポチか!」ってね。
主に『革新系』って分類されるヒトたちですかね?
N〇K・BSもちょっと批判的な論調で報道しているんだが、この害虫のことを分かって報道しているのか不安になっちゃいますよ……。
社内には科学系の報道・解説を行う部門があるのだから、『昆虫すごいぜ!』のディレクターさんとかと連携を取って欲しいものなんだが。
さて今回問題になっている害虫は『ツマジロクサヨトウ』という蛾だ。
今年に入ってポツポツと報道はされているから、「あれのせいだよねェ」と気が付いている人も多いだろう。
元は南北アメリカ大陸に生息していた虫らしい。
クサヨトウという名前から、夜盗虫の仲間なんだろうな、とは予想がついていたのだけれど、昔なじみの夜盗虫、すなわちヨトウガの学名は
〇Mamestra brassicae
である。イネ科以外のほとんどの農作物を食い荒らす農家の宿敵。
たしか福島のダッシュ村でも、これの被害が問題になった回があったように記憶している。
でも今回大騒ぎになっているツマジロクサヨトウの学名は
〇Spodoptera furgiperada
だから、同じヤガ科でも属の段階から違うワケ。
そしてその食性(食害性)は、サトウキビ・トウモロコシ・イネ・豆類・いも類・野菜類であり、ヒッジョーに不味いことに、最悪『コメ』をやられる可能性がある。
仮にコメが壊滅したら、ただでさえ心細い食料自給率が……どうなる事やら。
さてこのツマジロクサヨトウ、農林省のHPにプレスリリースがあるのだが、日付は令和元年7月9日付。
日本でその存在が確認されたのが7月3日ということだから、確認後6日で発表がなされているという事になる。
7月10日付けの奄美新聞に、その調査結果が出ているのだけど
〇トウモロコシほ場 49/93(発生ヶ所数/調査ヶ所数)
〇スイートコーンほ場 4/10(発生ヶ所数/調査ヶ所数)
と、コーン関係のおよそ半数がすでにやられていたのだと。
幸いなことに、コーン以外の田畑にはクサヨトウは見つかっていない。(ちなみに「ほ場」とは漢字で書けば「圃場」で、農地の事です。常用漢字を減らすと意味が解り難くて困っちゃいますねぇ……。)
「奄美の離れ島なんか、本土には関係ねぇよ!」
などと軽く考えるのは大間違い。
8月21日付け毎日新聞のサイト。(最終更新時 9時47分)
『害虫ガ「ツマジロクサヨトウ」幼虫、茨城と高知でも確認』
という記事が出ている。
茨城のトウモロコシ畑で幼虫が採取されたのが8月14日で、専門機関でクサヨトウと同定されたのが20日とのこと。
この性悪昆虫について分かりやすくまとめられた記事が、ヤフーのIT・科学分野にある。
8月21日付の国藤保晴氏の署名記事で
『世界蔓延の厄介害虫が茨城へ到達、全国拡散か』
というもの。
その記事をもとに、かいつまんでクサヨトウの拡散スピードを見てみると
〇成虫(蛾)は、100~200㎞/日を飛翔する能力を持つ。
〇クサヨトウがインドにまで到達したのが2018年8月。
〇その後、ミャンマーを経由して中国に侵入。(2019年1月)
〇中国では2019年6月までに、黄河南岸にまで生息域が拡大。
〇同じく6月、台湾侵入。
〇南西諸島から島伝いに奄美へ進出。(2019年7月)
〇(今のところ福岡県を除く)九州全域に生息域を拡大。
〇2019年8月茨城県にまで生息域を拡大。
という段取りであるようだ。
なお、この蛾は世代サイクルが1か月程度と短く、日本全国に生息域を広げるのは時間の問題であるようだ。
AFP通信の記事に、世界食糧機構がアフリカ大陸南半にこのクサヨトウが蔓延して食料供給の危機だとしたという記事が2017年に掲載されているから、その後2年で日本もクサヨトウの危機にさらされることになった、というわけですな。
前述した農林省のHPによれば、農地の作物が小さい間であれば農薬散布で退治出来ると、有効な農薬が記載してある。
けれども、或る程度作物が育ってしまった段階では、作物を刈り取って圃場を鋤き返してしまうよりないらしい。もちろんその圃場の作物は収穫できない。
しかも蛹が地中に残っている可能性があるので、直ぐに次の作物を植えることが出来なく、何度も鋤き返しを繰り返さなくてはならないようだ。
う~む……。厄介。
クサヨトウが食った残りカスは、人間が食べても問題はないみたいなんですけど……ねェ?
それにね、この蛾が面倒臭いのは、世界中のあっちゃこっちゃで様々な農薬に晒されたせいで、結構な農薬耐性を獲得しているみたいなんですわ。
僕は農薬のことは殆ど知らないから、ちょっと当てずっぽうの勘繰りになってしまうのだけど、遺伝子導入して食害に強い農作物を作ったのってあるじゃないですか。
「あれ」の対象の(少なくとも)一つが、このツマジロクサヨトウというバケモノなのではあるまいか、と。
で、今のところ日本では、コイツの食害はトウモロコシに集中しているわけ。サトウキビもイモもコメも無視してトウモロコシを食っているという。(先はまだ分かりませんけど。)
こうなると、ただでさえ家畜飼料の殆どを外国に頼っている日本だ。
「買わんという手は無いやろぅ?」ってわけです。
どっちみちブラジル産トウモロコシは、アメリカ産をキャンセルした中国が、札束で顔を叩くようにして買いあさっている。
値段も跳ね上がっているし、日本は品薄で買いそびれる可能性もある。(南米産の養殖サーモンなんかも、そうだったですよね? 養殖に尽力したのは元々は日本の商社だったのに。)
中国だってね、前述したようにクサヨトウの猛攻に遭っているんだ。家畜を餓死させたくなかったら、詫びを入れてアメリカ産を買うか、それが嫌なら札束を積んで他所から都合するしかないわけで。
今回のG7では、アマゾンの大火災(放火?)も大きく取り上げられているけれど、その大火の背後には世界的な穀物不足が、それも「アメリカ産を除く」という条件で、影を落としている気がしてならない。
世界がブラジル大統領を非難して、ついには大統領が重い腰を上げて軍隊に消火を命じても、コーンや大豆の価格が高止まりする限り熱帯雨林のジャングルは灰になって農地転換されていくだろう。
もう一度確認します。
買って正解、買わんという手は無いやろぅ?
違いますか?