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妖魔紀行  作者: 生田貴博
3/5

2話

声がするが無視を決め込んだ。見なけりゃいい。そう、見なければ。


そう思い通り過ぎようとしたが、自分の意思に反して首がそちらを向いてしまった。


そこにあったのは何の変哲もないどこにでもあるコインロッカー。


しかしよく見ると一箇所だけ開きかけている。


そしてそこから小さな手が出てきた。


悲鳴をあげそうになり必死で口を押さえた。


すると今度はその隣の扉が開き、今度は足が。


そしてその上の扉が開き口が見えた。


そして徐々に全ての扉が開き、その全てに口が現れる。


オギャオギャ!


オギャオギャオギャオギャ!


オギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャオギャ!!!!!!!!!!


どんどん声は大きくなり、大合唱となり、そこでその少女の意識はプツリと途切れた。




次にその少女が目を覚ましたのは駅前の交番だった。


どうやら気を失い、介抱されていたようだ。


布団に横たわったまま目線を動かしていると、一人の警察官が入ってきた。


「目が覚めたかい?びっくりしたよ。悲鳴が聞こえたから何事かと思って駅に行くと、君が倒れてたんだよ。」


「え‥あ‥すいません‥」


「いや、いいよ。別に。でも今朝あんな事があったからね?一応何があったか聞かせてもらえるかな?」


少女はありのままを話した。


正直笑われると思った。だがその人は真剣に話を聞いていた。


「なるほど‥コインロッカーで赤ん坊の幽霊を‥」


「すいません‥信じられませんよね?」


「いやいや、信じるさ。うん。」


少女は驚いて顔を上げた。自分でも何を言っているのかよく分からない事を言っているのだ。


側からみたら自分はただの狂った人にしか見えない筈だ。


「まあ警察がこんな非科学的な事を信じるのか?って顔してるけどね?俺せいぜい23年しか生きてないけど、世の中には訳の分からない事ばかりだ。」


「そして間違いなく次のターゲットは君だ。君も今朝の事件みたいに殺される。」


「どうにか‥どうにかならないんですか!」


自分が殺されるという恐怖に震えながら、その少女は言う。


「すまない‥警察は動かないんだ。僕は信じてあげられるけど、上は言い方は悪いかもしれないけど、そんな非科学的な事じゃ碌に取り合わないだろう。」


「そんな‥‥」


少女は絶望した表情を浮かべる。


しかし警察官は微笑み、少女の肩に手を置いた。


「大丈夫だ。警察は役に立たないが、助かる術はある。」と言い、デスクから一つの名刺を出し、渡してきた。


「ここに書いてある住所に桐山という名の探偵事務所がある。そこの所長の桐山 翔太郎という男を訪ねなさい。彼なら君を助けてくれる。」


少女は不思議そうにその名刺を見て、警察官に尋ねる。


「あなたは‥いったい?」


「僕かい?僕の名は照井 嶺浩みねひろ。しがない警官さ。」


「照井さん‥ありがとうございました。」


「僕の名は特に覚えなくていいや。送ってってあげるから帰りなさい。」


結局少女はパトカーで家まで送ってもらい、礼を言って別れた。


帰り際、照井が思い出したように言った。


「ああ、それと明日には必ず行くんだよ?手遅れになる。それと解決するまで駅は使わない方がいいだろう。」


「分かりました。」


「それじゃあ。」と車を走らせて帰っていった。


次の日、少女はとある建物の前にいた。


少女はその日は自転車で通学し、学校が終わるとその足で向かった。


桐山探偵事務所


(ここが‥)


少女は名刺を握りしめて階段を上がる。


コンコン


「どうぞ。」


中から声がして入室した。


中は思ったよりかは綺麗だが、見た事ないものばかりだった。


そこのソファーにその男は座っており、座るように促される。


「照井から話は聞いてるよ。君が赤ん坊の幽霊に取り憑かれた少女だな?」


「はい。」


その男は茶色のハネ毛で、黒のベストにスラックスをはいていた。


「詳しく聞かせてくれないか?」


「はい‥実h‥」


「おっと!君の名を聞いてなかったな。名前は?」


「早見 遥です。」


「早見さんね。ごめんね、遮って。続けて?」


そこから少女こと、早見遥は自分が体験した事を喋った。


話している間、その人は静かに腕を組んで聞いていた。


話終わると、桐山は口を開いた。


「それは‥コインロッカーベイビーだな。」

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