てんやわんやなステータス
「待たせたようじゃな。では、まずは肉体との同調を取るとするかの」
笑顔満々な神様を見ていると、どうしても不安が拭えない。
神様、その左手に持っているものは一体何なんでしょう?自分には棺桶にしか見えないですが…
「だいぶ前に創ったものじゃからな。何処に有るのか探すのが大変じゃったわい」
創ったって何ですか神様!自分サイボーグみたいな感じから始まっちゃうの?
ターミネーターなの?!
「神様?自分は異世界転生じゃないんですか?異世界再起動とか自分にはレベル高すぎるんですが?」
神様の肩を持って激しく問い詰める。
今ならまだクーリングオフきくよね?!
「違う、違う。何を考えてるか良く分からんがそんな変な物じゃないわい」
そう言うと、軽々と自分を振りほどいて棺桶の確認をし始める。
「異世界転生じゃが、御主の魂は地球産じゃ。こちらの人間の身体に入れても体が拒否反応ですぐ死んでしまうじゃろうな。魂のクリーニングをすれば可能かも知れんが、そうすると今度は記憶が飛んで真っ新になってしまうしの」
そう言いながら、「トンカン!ガチャ!…バリバリ…」と生物には出ない音を立てながら人間?の身体を弄り回している。
「その点、これなら安心じゃ。天使や識天使でも[降臨]出来るよう創ったからのぅ。御主の魂でも適応出来るじゃろ」
そうこう言っている内に棺桶の中身がご開帳である。
随分細いなぁ…等身では向こうが圧倒的に優位だけど…女の子じゃないよね?この上、T Sとかは要らないからね?
「神様、随分細っそりとした身体ですね?背も余り高くないし女性体ですか?」
恐る恐る神様に聞いてみる。女の子なら覚悟を決めないと…
「ん?これは両性じゃよ?」
予想外の攻撃が帰ってキター!両性具有?
何それ?そんなハイレベルな人生おくりたくないよ!
「あぁ…言い方が悪かったの。これは魂が入るまでニュートラルな状態なのじゃ」
ニュートラル?中立って事?ニューハーフ?!
「面倒じゃの…説明するよりやった方が早いか?それ入らんか」
混乱状態の自分の頭を片手で掴むと、そのまま棺桶の身体に叩きつけられる!
あれ?当たった感触がない?寧ろ心が休まる…
「うむ。問題無いようじゃな。身長差があると違和感が出るからのぅ…霊体同期問題無し。霊気圧も良し。さて…スロットの方じゃが…5か。本当に一般人じゃのぅ。1つは空けておかんと神の箱庭はきついかも知れん…次に入れるのは百花繚乱でええじゃろう。」
段々と改造されている現状にひたすら耐えるしか無い自分。
そりゃ安心安全な体にしてもらっているんだから感謝こそすれ文句を言うのはおかしいとは思うのだが、…やられる本人にもう少し説明が欲しいなぁ…と。
「百花繚乱は取り扱いが難しいからのぉ…完全制御を入れて扱いやすくするべきじゃな…後は一芸が欲しいと言っておったから…神龍紋で良いかの」
神様に入れられた『何か』によって、自分の体はパンパンである。
確かにこれ以上は何も入らない。
完全制御は何となく分かるんだか、神龍紋?入れ墨かな?まさかの極道入りである。百花繚乱も訳が分からない。
花でも自由に咲かせられるのだろうか。
まぁここまではいい。
でも、神の箱庭。
きみは駄目だ!間違いなく危険な香りがプンプンする。
「これで完了じゃな。適応するに多少時間が掛かるから寝ておくとよいぞ」
満足げな神様の離れる気配を感じながら、絶対後で問い詰めてやると考えながら眠りについた。
適合完了しました。これより起動開始します…
これ完全に人間の目の覚まし方じゃないよね?意識が戻ると同時に頭の中で声が聞こえた。
自分の体にはすでに妖精さんがいるのだろうか。
そんな事を思いながら目を開けると…1人の少女がこちらを見つめていた。
10代前半ぐらいだろうか。
金色とはこんなに輝くものなのかと思うほどの美しい金の髪、腰辺りまであるストレートな髪は絡まれることがないのか流れるように背中に落ちている。
「主人様。お客様が目を覚まされましたよ〜」
そう言ってとてとてと襖がある方向に歩いて行く。
あ、コケた。…デジャヴを感じる。
「フミィ〜!」
襖を通り抜けていく少女を見ながら、後を追いかけようとした所『グゥォン!』と、激しい音と共に4、5m移動してしまっている。
「何…これ?…」
余りの動きの速さに自分がついていけない。
自分の体なのに危険過ぎる!
「お客様!スキル完全制御を強くイメージして下さい」
かけられた声に無意識のまま従い、完全制御と思い続ける。
そうすると体の動きが自分の思い通りに動く事が確認出来た為、気が抜けたのか座り込んでしまった。
「問題無くスキルは発動された様ですね。お怪我がなくて何よりでした。」
聞いた事のある声の持ち主を探して見ると20代ぐらい、銀髪を首元辺りで切り揃え、眼鏡を掛けた女性教師といった美人さんを見つけることが出来た。
「ラシャンさん?」
一応、合っているとは思うのだが確認の為、名前を呼んで見る。
「はい。そうですよ。主人がお待ちしておりますので、どうぞこちらに」
そう言って微笑む彼女の瞳は菫色だった。
「どうやら問題なく適合したようじゃな。それではその体の説明をしようとするかの」
お茶を啜りながら話し始める神様。
問題ありまくりですよ?そう思いながらも、ラシャンさんに出してもらった姿見の鏡で自分を見ている。
身長は170cmはなさそうだなぁ。
スラリとした体ながら細身の筋肉はついているようでやんちゃな感じになっている。
ただ肌が思った以上に浅黒くなっており、健康的ではある。
髪の毛は黒のままか。
ポニテのようにしてまとめている。
意外と髪が長く、邪魔なって仕方がないからだ。
ちなみにちゃんと男の子でした。
「その身体は神造体といって天使や儂などが地上で使う為の身体なのじゃ。その為かなり強力に創っており、病気や毒などは殆ど効かぬじゃろう。御主のレベルは地球で育っておる為Lv1のままじゃろう。じゃが、その状態でもオーガと素手で殴りあって勝てるはずじゃ」
神様、いきなりブッ込んできましたね。
やっぱり改造人間じゃないですか。
え?人間にだってそのぐらい出来るのはいくらでもいるって?…分かりました。
それで寿命はどうなっているですか?魔力によって変わるから一概には言えないと?じゃあこの体の特長を纏めてみますね。
[神造体]
特記事項
病気・毒無効化
超生命回復能力
超魔力回復能力
限界上限値無し
不老
うん。
神様、ちょっといいかな?…不老ってどういう事かな?
老化を止めたくなったら自分の意思で止めれるの?じゃあいいか。
限界上限値無しは大丈夫なの?某サイ○人じゃあるまいし…レアスキルに似たようなものがあるから問題ない?
「そろそろ良いかの?ではスキルについて説明するぞい。まずはスキルスロットについての説明じゃ。この世界の生命はみな魂にスキルを使う為の場所、スキルスロットを持っておる。こればかりは魂の資質による為、儂でも増やすことは出来ん。普通の人で4〜5つ、多い人だと20を超えるものもいる。まぁスキル自体習得するにはかなりの時間がかかるからのぉ。20を埋めるのは大変なはずじゃ…話が逸れたの。御主のスロットは5じゃったよ。」
あらま。5個しか覚えれないのか…もう4つ埋まっているよね?しかも今の状態でも一杯一杯だったよね…
「それに関しては霊格を上げる事によってスロットが増加する事が出来る為問題無い。所謂レベリングというやつじゃ」
なるほどレベルを上げるということは魂の強化にも繋がるですね。
分かりました。
「それでは御主のスキルの内容を教えるぞ…とはいっても『ステータスオープン』と言ってステータスボードのスキルをクリックするだけなんじゃが」
何と!自分のステータスが見れるのか。
やってみよう。
「ステータスオープン」
おぉ。確かに出た。…出たんだが…
(スキルスロット) 4/5
「ゴッドスキル」
・神の箱庭
「ユニークスキル」
・百花繚乱
・完全制御
・神龍紋
うん、この時点でステータス閉めたくなったよ…
駄目なんだよね。
ダメージの少なそうなこれからいってみよう。
・完全制御
自分自身の体を完全に制御することが
出来るスキル。
自分に関する全ての能力を制御するスキルの為、スキルを制御する統括スキルとしての一面もある。
意識しないと発動しない。
完全制御先生!今後ともよろしくお願いします。次は…極道は後に回すか。
・百花繚乱
エクセレントスキル以下のスキルを全て
使用することが出来る。
ただしレベル7までとし、エクセレントスキル以下のスキルは覚える事が出来なくなる。
神様。自分に何か怨みでもあるんですか?これじゃ自分スキル覚える事出来ないじゃないですか!
「でも、かなり強力なスキルじゃろ?スキルスロットの少ない御主には最適だと思うのじゃが…」
まぁ…確かにそうですねぇ。完全制御先生との組み合わせはかなりの反則ですね。…次の問題児を見るかぁ。
・神龍紋
発動により白き龍の紋章が体に巻きつき
大幅な存在強化を施す。
タイプは3種類に別れる。
最大連続使用時間は1時間。
使用時間の3倍の冷却時間を必要とする。
タイプA
ステータス3倍・スキルの効果を25%U P
タイプB
ステータス5倍もしくはスキルの効果を50%U P
タイプC
ステータスの一つを10倍もしくは一つのスキルの効果を100%U P
界○拳かな?効果としては完全に補助型だが他のスキルとの組み合わせを考えると恐ろしい。
デメリットもクールタイムだけだし。
さて…全て見終わったしステータスボードを閉じるとするか。
「こりゃ、こりゃ。1番大事なスキルを見落としているではないか。スキルの1番上を見てみんか」
「あのね。神様…とりあえず聞きますけどゴットスキルとは何ですか?」
溜め息をつきながら質問する自分。
どう考えても厄介な事でしかないが得意気な神様の顔を見ると質問せざる得ない。
「うむ。よくぞ聞いてくれた。これは神だけが使えるスキルでの。この世界では生き物としては御主が始めての人となったのじゃ。おめでとう!」
とりあえず神様のドヤ顔は置いといて、効果を確認しよう。
平常心、平常心。
・神の箱庭
神様が創り上げた領域で如何なるものも許可無く入ることが出来無い。
直径3km四方の大きさで、家、畑、川、小さな湖、小さな森、小さな山、その他色々が積み込まれた箱庭。
何か説明が雑過ぎる気が…
「そのスキルに関してはここから出た後に詳しく説明する事になるのでな。申し訳ないが後々の楽しみとしておいてくれ。『ステータスクローズ』でステータスボードは仕舞えるからの」
「これで一通りの説明は終了じゃ」と小声で呟く神様。
どうやらお別れの時は近づいて来ている。
色々あったが別れとなるとやっぱり寂しいな。
そう思う自分であった。
駆け足ですが次が神様とのお別れ回です。