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てんやわんやで異世界転生  作者: いんふぃ
第2章 コルカ王国
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てんやわんやなお友達

「格闘技というと打つ・蹴る・投げるぐらいかと思っていたが『極める』か…なかなか変わった技よな」


 勝負の後、辺境伯がしきりに感心しているのを見て、少しだけ申し訳ない気持ちが出てくる。


 テレビでよく見ていた技なので覚えていたが関節技は手加減が難しい。


 今後は悪人で研究しよう。


「なかなか面白い技だった。相手が1人なら使えそうだな。しかも手足なら殺さなくて済むから遠慮なくいけそうだ」


 騎士団長のノートンさんが的確な使い方をしてくれてますが、なんでここにいるんですかね?


「裏の人間が使う技に似てますが、あちらは手の関節が多かった気がします」


 そんな情熱的な目で自分を見ないで欲しいな……副団長のアバスト君。


 リデルから同じ年齢だと聞いていたけど裏の世界を何故その年齢で知っているのやら…


 そんなこんなで練武場での戦闘が終わり、執務室に連れていかれ、事情を説明させられている。


 神器と楽天使の使徒さんの事は多少は濁したが神鯨さんの事は話す。


 島がなくなったしね。


「神獣の一角、神鯨に会うとは。お前さん本当に自分の事隠す気があるのか? 」


 真面目な顔で言われた。


 そうなんだよな。


 これじゃ自分が呼んでると思われても仕方ないかも。


「そろそろほとぼりを晴らすために幻影の森で自然生活をしようかと思っていましたよ。ここにいると対人関係で疲れますし」


 やれやれといった感じを出しながら辺境伯にそう告げる。


 香辛料と穀物を市場で買わないといけないなぁと思いながらここを出ることを考えていると辺境伯に手を振られる。


「駄目だ駄目だ! もう遅い。お前さんの偉業は既に王都まで広がっているからな。王都からの呼び出しはまだ無いが周辺国からの諜報員は来てるだろうな」


 えぇ、まだ2〜3日しかたっていないじゃないですか。


 それなのにどんだけ広まってるの ⁈


「驚くのも無理はないが、コルカ王国でも有数の都市だからな? ここは。草の1人や2人くらい何処の国でも入れているだろうな」


 すでに全周囲包囲網が敷かれている件について。


 他国に逃げようとしても指名手配されているのか…


「これはもう、世捨て人しか無いじゃないですか。さて、準備を始めるか」


「だからそれをすると幻獣の森が戦争になっちまうだろうが! 」


 どうすればいいというのだろうか、この人は。


 こうなれば違う大陸に行くしか……


「実はサラムーン海運がブラウマウ大陸に通商の為1隻行くことになっていてな。それの護衛としてついていってみんか? 何、2ヶ月ほどの航海予定じゃから戻って来る頃には噂も無くなっておるだろうしな」


 ふむ…自分的には問題無い。


 島流しのような扱いだが国家レベルでの争いに巻き込まれるぐらいならそちらの方がいい。


 問題なのは…


「それは王国からの話とみていいのですか? 」


 執務室が静寂に包まれる。


 ようは国外退去なのかどうかと聞いたようなものだ。


 国外退去ならもう戻って来るなという事などで分かりやすい。


 最悪航行中の事故も考えなくてはいけない。


「そういう訳では無いから安心しろ。と言うかそんな事をしたら儂が民衆に恨まれるわ」


 辺境伯がそこまで言うなら問題無いか。



 それにしても西大陸か。


 グリムベルト様の選んでくれた所で2週間でこれだ。


 自分この先大丈夫なのか?


「いく場所の事についてはフェルマルから聞いてくれ。奴がよく知っておるはずじゃからの。いる物は全てこちらで用意するから書類にして出しておいてくれ」


 話が終わり銀狐亭に戻る。




 店主のロイさんにサラムーン海運の場所を聞き、その場所に向かう。


「で、なんでリデルはついて来るんだ? 」


 領主館からずっと無言のリデルくんである。


 空気が重すぎて話しかけたが何か思うことがあるのだろうか?


「すまないベル。お前が悪い訳じゃ無いのにこんな事になって…」


 苦悩の表情を浮かべ話し出すリデル。


「俺が子供達の救出の為お前に助けを求めなければこんなことには…」


 独白するリデルを遮るように言葉を紡ぐ。


「もしそうなら俺たちは友達になってなかっただろうな。そうなれば俺は1週間程でここを出る予定だったから色々な意味でお前と友達で良かったよ」


 そう言って笑いかける。


 その未来は子供達が死んだ事を知っても大して動揺しなかっただろう。


 なぜなら地球にいた時もそうだったからだ。


 遠く離れた場所で誰かが死んでも気にしない。


 いや、そこまで考える事がなかったからだ。


 こちらの世界に来て自分が当事者になったからこそあそこまで動けたのだ。


 我ながら自分の小ささに笑ってしまう。




「そ、そうか。それなら良かった。自分の行動でお前に迷惑をかけたのかとずっと考えていたから」


 照れ臭そうに笑いながら俺に拳をぶつけるリデル。


 俺の考えていることよりずっと前を向いている。


 50年近くの経験者よりずっと前向きなこの男を見ているとこの世界には来て良かったと本心で思えた。







「お前に会えて本当に良かったよ」







 今日も異世界は良い天気です。








 







 






 


 




いい友達とはどういうものか?自分ではこんな感じかなと思っています。

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