てんやわんやなリデルくん
「…使徒ですか?御伽噺などではよく耳にしますが…」
いきなり危険球を投げてきましたー。
この腹黒爺め。
「そうだな。わしも幼い頃よく両親に話をせがんで聴かせてもらった。英雄であり神の使い。時に君はどの神様を信仰しているのかね?」
…ある程度確信を持って聞いてきているよね。
「俺は聞かれたくない話が多いと念を押したんだがな?リデル。話を通してないのかな」
と、振り返らずにリデルに確認する。
別に怒っている訳ではなく疑問だからだ。
もし自分が真っ当な使徒でこんな態度をとったら自分の領地がどうなるか考えられないほどの人ではないはず。
「ま、待ってくれベル。リナイデル様!この件に関しては言ったはずです。彼は詮索される事が好きではないと、ノートン団長からも言われている筈です」
ふむ。団長さん。本当にしてくれたんだ。
律儀な人だよな。
上の人が絶対しちゃいけない事だろうに…
「馬鹿はお前達の方だ。お前達騎士団の本来の務めはなんだ?国を守り人を守る事だろうが! 確認もせずどうやって守るのだ? 」
正論ですな。
なぁなぁで済ませちゃいけない所だ。
「確かにあんたがいう事は正論だがそれで良いのか? もし俺が使徒であったならあんたがしている事は喧嘩を売っていることになるんだが」
そう言うと肘をテーブルに付き顎を乗せ、テーブルをトントンと指で叩く。
こんな感じだっけ?ついでに【畏敬】と【演技】も発動。
2人は驚いた表情でこちらを見ている。
辺境伯は気付いたかな?リデルは信じられない感じで見てるな。
「べ、ベル。確かにこちらに非があるのは認めるがその態度は…」
リデルさん、焦り過ぎです。
辺境伯はこちらをじっと見たまま何か考えているかな?
「ようやく馬脚を現したな、小僧。手前がどんだけの者が知らないがテメエ如き俺が潰してやるよ」
そう言うと、闘気を剥き出しにして立ち上がる。
筋肉がひと回りは大きくなってるな。
流石は武闘派。
部屋の温度が3℃は変わっているんじゃない?これ
「何かあったらすぐ腕尽くか?ジジイ。年寄りの冷や水ってやつをたっぷり教えてやろうか?」
そう言いつつ【畏敬】を【闘気】に変更。
気を部屋中に撒き散らす。
部屋の中の護衛騎士が身を震わせながら武器に手をかける。
秘書さんは気を失ったかな?
「いい加減にしろ!親父!やり過ぎだ。リデル!お前も止めろ!」
リデルくんが先に切れた!
ってか親父?
いきなり大きな爆弾を落とさないで欲しい。
「リデルくんのパパなの?」
辺境伯に尋ねてみる。
「うむ。パパじゃ」
分かり易い返答ありがとうございます。
「よく見れば目元とか確かに似てますよね」
「そうじゃろ。そうじゃろ。歳をとってから出来た子じゃからのう。かわいいもんじゃ」
「遅れて出来た子はかわいいとよく聞きますしね」
「リデルにも早く嫁を見つけろとは言っておるんじゃかのぉ」
「待て ! 2人共そこに座れ! 」
二人で世間話をしているとリデルが切れてしまった。
所謂ガチ切れである。
鉄分足りないのかな?
「なんでいきなり仲良くなっているんだよ? さっきまで戦闘体制入ってたじゃねえか! 周り見てみろよ大惨事じゃねえか! なのになんでそんなに和気あいあいとしてんだよ? なんで不思議そうにこっち見るんだよ!」
すばらしい早口である。
こちらに意見を言わす時間を与えない。
辺境伯と目を合わせどうやって止めようか考えて見る。
「おたくのお子さんでしょ?止めてくださいよ」
「ここまで怒ったのは見た事がないからのぉ」
「なんでこんなことになっているんだよ ⁈ 」
大惨事継続中である。
「何やっているんですか。外まで聞こえていますよ。そこまでにして下さい」
結局止めてくれたのは副隊長のアバストさんでした。
「で、どうしてこうなったんです?私は団長に言われて昼から待機させられていたんですが分かるように説明して下さいね」
アバストさんがピリピリしています。
リデルはびびって一言も喋っていません。
辺境伯はニヤニヤしながらこっちを見ています。
爺働け。
仕方がないので自分が答え合わせをしないといけないみたいです。
「ようするに辺境伯自身での私の見極めでしょうね」
溜め息をつきながら説明する。
まだ分からないのかリデルくん。
「たとえ騎士団長が認めても一番偉い人が認めなければ意味が無い。だから辺境伯自身が確認したんですよ。」
「でも最初から険悪な雰囲気だったぞ?」
リデルくんはまだ納得出来ない様子。
これ以上まだ話しを続けないといけないのだろうか?
爺働け。
「辺境伯がしたい事は私の性格。もっと言えば『どれだけやれば切れるか』を知りたいって所ですかね。だから自分は分かってますよと言う意味で挑発し返したわけです」
分かったかなリデルくん?
「それじゃあ…二人共分かっててやってた? 」
「そうですね。茶番ともいいますね」
ソファーに倒れ込むリデルくん。
巻き込まれてご愁傷様です。
「話しが終わったんで帰らせていただきます」
そう言ってこの場を去ることにする。
ここまで付き合ったんだからいいでしょ?
「まだ試しておらぬ事があるのぉ。戦闘力をみんとな。先ほどの佇まいを見るからに『出来る』のじゃろ?血が滾るわい」
こちらの肩に手を掛けたまま獰猛な笑みを浮かべる老将が此処にいた。
爺仕事すんな。
多少は書くのが慣れてきた気がします。




