てんやわんやな救出劇
水晶から出る光が薄れて消えかけた頃、
ようやく【探知】に複数の対象が反応する。
「見つけました!ちょっと右に、…そのくらいで!あと1kmぐらいです」
よかった。間に合った。
一気に力が抜ける。
しかしまだ終わった訳じゃない。
気を取り戻さないと…
するとフィナの叫び声が
「そちらにも【索敵】に反応があります!!そんな……」
それを聞いた瞬間、何かが切れる音がした。
【身体強化】【韋駄天】【縮地】【完全制御】……【神龍紋】タイプC発動
馬ヲ飛び越エ、木々ヲ足場に前へと進ム。
【威圧】にテ動物を近寄らせなイ。
足かラは2匹の光ル龍が閃光を放チ続ける。
目の前に濃い緑色をした巨大な狼が警戒心を剥き出しにしてこちらを睨み続けている。
その背後には涙目の子供達がプルプル震えながらも、しっかりとしがみついている。
《汝は何者ぞ!》
「あーこうきたか…」
完全に体の力が消える。
スキルも全部切れちゃたよ。
この気配…幻獣だよな。
溜め息を吐くと【念話】で会話することにする。
《あー待った、待った。敵対するつもりはない。『翡翠狼』だろ?こちらはその子達の捜索者だ。何もしないからそのままでいてくれ》
そう言って何時の間にか持っていたマチェットを投げ捨てる。
…側から見たら光る男が威圧しながらマチェットと持って現れたのか。
ヒドイ絵面だ。
翡翠狼も多少は警戒を解いたのか子供達を気にしながらこちらを見ている。
《さっきの姿といい汝を信じるにはちと情報が足りん。ステータスもよく見えんしな…》
ほほぉ…さっきから嫌な気配がするのは感じていたがこれが【鑑定】の気配か。
先生が敵対するつもりがなければ使うなというはずだ。
《ああ。【鑑定】してたのか。隠蔽系スキル外すからもう1回見てみろ。あんまり人間相手に使うなよ?》
…数秒後、伏せをしてキュンキュン鳴く狼がいた。
…念話で聞いていると『すいません』とか『ごめんなさい』しか聞こえない。子供達はびっくりしたり興奮したりして目を輝かせている。
《あーもうなんで謝っているか分からないけどそこまでにして。知り合いと厄介そうなのが来るから子供達を守って》
念話の話を打ち切ると今度は子供達に注意だ。
…外見年齢あんまり変わらないけど。
「君達。街を抜け出してきた子達だよね?ウチの人と騎士様が探してるから後で怒られてね。今はその狼さんの側を離れないでね」
そう言うと「はい!」といい返事が帰ってきた。
んー後はリデルさん達への説明と奴の相手か…
少しして、リデルさんが自分を呼ぶ声が聞こえる。
生活魔法のライトで合図する。
「こら!ベル!どうして1人で行った?!俺らがどれだけ心配し……え?」
あ。翡翠狼見て固まった。
他の騎士も…駄目だな、早めに危機を知らさないと。
「フィナさん。【索敵】はどうなっていますか?この狼は仲間なので問題無いです。他の人は戦闘態勢に移行して。早く!」
「かなり強大な敵意を確認しました。魔獣です。早い ⁈ もう来ます!」
フィナさんの緊張した声が響く。
リデルさん達は半円の形で構えている。
…そうして轟音を響かせながら魔獣中位亜人型『ミノタウロス』が森の中から現れた。
「ミ、ミノタウロスだと…」
リデルさんが愕然としながら呟く。
他の人達も絶句したままだ。
自分はこの瞬間に長弓を構え【弓術】の技、(螺旋矢)を牛頭部に向けて放つ。
ミノタウロスは右眼からの激痛により悲鳴をあげる。
ここに魔獣討伐戦が始まった。
先生曰く、高位の魔獣は遊ぶことが多いそうだ。
今回のミノタウルスも会った時に邪悪な笑みを浮かべていた。
なので先制攻撃頂きました…わざとじゃ無いよ?
激昂したミノタウルスは斧をただ振り回す。
いくら中位とは言え単純な攻撃では熟練の騎士達を捉えることが出来ない。
偶に瓦礫が子供達の方にいくが翡翠狼が全て跳ね飛ばしている。
「バーディ、斧は受け流そうとするな ! 避けないとたえれん。ゾハン、相手の右眼の死角から攻めろ。サルジはバーディが危なくなったら代われ。フィナ、【索敵】怠るなよ。他にも出るかも知らん。ベルはそのまま打ち続けろ!」
1人だけ雑な命令がされてる気がします。
…数分後、全身で息をする騎士達と全身傷だらけで矢が無数に刺さるも健在なミノタウロスの姿があった。
これ以上は無理だと感じ動こうとした時、
「ベル!子供達を連れて逃げろ!13隊 ! 悪いが全員最後まで付き合ってくれや!」
「「「「おう!」」」」
…ダメだなぁ、こういうのにはホントダメなんだよなぁ…
落ちていたマチェットを拾い、ミノタウルスへと向かう。
「ベル?何やってるんだ! 早く逃げろ! 」
リデルの悲痛な声が何故か淋しく、それでもやっぱり助けたくて
「【百花繚乱】乱れ咲け…」
【完全制御】にて、全てのスキルの花を咲かせて散らせながら
「(一閃)発動 ! 」
ミノタウルスの首を切り落とす。
リデルの顔を見るのがやけにつらかった。
この話数を書くために小説始めました。




