てんやわんやな食事回
当面の問題が解決したの食事に専念するとしよう。
「おばさん。メニューは何があるの?」
とりあえず聞いてみる。
メニュー表やサンプルが無いんだよね、こちらの世界。
だから店に入って聞いてみるまで分からない。
「宿泊客は肉料理か魚料理のどちらかとエール1杯までが無料だね。大盛りも受け付けるよ」
ふむ、定番だな。
この都市は港があるから魚料理が出るが内陸部だと川魚しか無いから高くつくしね。
「ラドナ。俺はエールとツマミを」
リデルさんはさっさと頼んでしまった。
こちらも早く決めてしまうか。
「じゃあ魚料理を大盛りでお願いします」
この世界の魚は初めてだな。
ちょっと期待してしまう。
この体結構大食らいなので食事が色々楽しめる。
地球では歳のせいか油濃い料理が食えなくなってきてたからな。
おばさんが「あいよ」と言ってキッチンに向かうのを横目に見ながら、辺りを見渡す。
商人みたいな人や年配で身嗜みの整った人が多い。
やっぱ高級志向の店だよな。
「このお店、人気みたいですけどどうしてここを勧めてくれたんですか? 」
自分みたいな金の無さそうな人間にこんな宿屋を勧める理由が分からない。
まぁ今回は魔獣の報酬があったからいいけど。
「あー俺が知ってる宿屋がここくらいだしな。それにお前さんなら、ここの夫婦に気に入られると思ったからな」
ここの宿屋は主人であるロイさんと奥さんのラドナさんの2人がメインで経営しているらしい。
なんとこの2人昔は護衛専門の傭兵だったのだそうだ。
護衛時代に色々な土地で食べた食事が忘れられなくて、引退後に宿屋を始めたのだそうだ。
…いい老後送ってるな…ってやばい。
自分の流浪の民設定がバレるかも知れない。慎重に行動しよう。
そうこうしていると、赤い髪をポニテにした女性が料理を持って来た。
ポニテ自分とお揃いだなあと思っているとうれしそうな感じでで話しかけられる。
「お待たせしました〜魚料理大盛りとおつまみ盛り合わせ、エール2杯となりま〜す」
結構軽い感じで普段からこんな感じなんだろう。
自然な感じで配膳されていく。
…あぁいい匂いだ。
「リデルさん。またお酒とおつまみなんですか?ちゃんとご飯も食べないといけませんよ」
プンプンと怒る表情と頭の上で揺れるポニテが可愛らしい。
胸は揺れてないけれど。
「あれ?こちらのお客さんは始めて見る顔だね。肌の色が珍しいけど異国の人かな?」
ちょっと見すぎたかな?こちらに話が振られて来た。
リデルさんはさっさとエールを口に運んでいる。
仕方がない。出来るだけ無難な対応をしよう。
「初めてまして。ベルといいます。今日こちらの街に着いたばかりなんですよ。各地を転々と旅をしている狩人です」
そう話すと、なんか女性が固まった?大丈夫かな、リデルさんに応援を求めようとしたらいきなり頭を両手で掴まれた。
「何、この子。かわいいーー!リデルさんどこで見つけて来たの?」
大変です!女性に頭を抱えられているのに柔らかさがたりません。
そんな失礼な事を考えながらもなされるがままである。
リデルさん、爆笑する前に助けてください。
「こら!アン。お客と遊んでないでさっさと運ぶの手伝いな」
そう言いながらアンさんの腰を抱えて厨房に戻るラドナさん。
パワフルです、傭兵時代は前衛かな?
「ブプッ。笑った、笑った。…すまん、悪かった。謝るから早く飯を食え。冷えちまうぞ」
無言で睨んでいたらリデルさんが謝ってきた。
…お腹が空いたのでご飯に集中しよう。
魚料理の名前はシバの香草焼きというらしい。
青魚のようだがよく脂がのっているのが匂いだけでわかる。
香草はブレンドされているのか不思議な香りがする。
両手を組みグリムベルド様に祈りを捧げると、すぐさま魚を食べ始める。
「美味しい!」
声を出してしまったが仕方がないと思うんです。
魚の甘みをおびた脂のうまさと絶妙な身の塩加減。
香草はサッパリとしておりニラのような青臭さが脂をきっちり落としてくれる。
500gはありそうだった魚の身は骨が完全に抜かれており食べやすさがたまらない。
スープはポトと呼ばれている。
じゃがいものような芋の名前がそのままついている。
ポトの身が崩れない程度に火が通っており、スープ自体はトマトのような味がする。
酸味が強いのでどうかと思ったが、本来は添えてあるライ麦パンを浸しながら食べるのだそうだ。
試してみるとライ麦パンの香ばしさとスープの酸味が抜群に合う。
エールは流石に地球の方がおいしいかな?ただうまい具合に冷えており冷た過ぎず丁度いい感じである。
これだけの食事を出せる店なら確かに人気だろう。
満腹感で満たされた体を椅子に預けてゆったりとする。
「どうだ?うまかっただろう? 」
5杯目のエールを飲み干そうとしているリデルさん。
明日も仕事があるんじゃないんてすか?
「確かに素晴らしい味でしたね。これなら食堂メインでもいいんじゃないんですか? 」
『銀狐亭』は宿屋である。
宿屋である以上食堂のように大人数は対処出来ない。
今もほぼ満席ではあるが、20人程度が限界だろう。
「ロイ達は旅の辛さを知っているからな…だから旅人と触れ合う為この店にしたんだと」
なるほど旅の疲れを癒しす為か…お風呂があるのもそのせいか。
優しい宿屋なんだなぁ
残りのエールを飲みながら、そっとキッチンを見てしまう自分であった。
この世界では15才から飲酒可能です。
食レポは自分には出来そうにありません。
次回は街の散策かな?




