今日は都会で”功雪”です
シンシン……シンシン……
魔法があるとしたら、私は誰かの役に立つことをしたい。でも、そーゆうのに毎日を付けたらいつもじゃんってなってしまう。
神様にお願いしたんだ。
シンシン……シンシン……
本当に頑張った人を助けたい。そんな力があったら、私を能力者にしてください。
◇ ◇
「雪でーす!のんちゃん、大好きでーす!」
阿部のんは雪も大好きな少女である。カマクラを作ったり、雪だるまを作ったりと大はしゃぎ。
「雪なんて迷惑一辺倒だよ。やってらんねぇ」
「まーまー。そーいう日もある」
雪が降る。それは確かに厳しいこと。辛い事ばっかりだ。しかし、決して嫌な事ばっかりではない。なんというか、運とでも言うのかな?
「広嶋くんは仕事だね」
「お前に屋根の雪かきを頼まれたわけだが」
「そーいうこともある」
珍しくよく降った。なんだか嬉しくなったのは、今日は雪の影響でお店を休みにしたことだ。
無理に営業してもしょうがない。喫茶店の店主のアシズムはそう思っていた。
不幸そうに思えるが、その実。運が働く事もある。
「雪が降った時だけ、能力者の住む地域限定って奴なんだけど」
「あ?」
「随分と前に、”功雪”って能力を上げたんだ」
「なんの能力だ、そりゃ」
出会ったその人は真面目だし、誰かの幸せで自分も幸せと思える人だった。特に人ができていた。
「頑張った人だけが助かる能力があったら、羨ましいと思ってくれるなんてよく考えた人だって」
「……まーた、変な能力を人にあげてんのかよ」
「別に危険になるもんじゃないよ。あーいう能力が私にとっては、世界中で起こって欲しいかなと」
◇ ◇
シンシン……シンシン……
雪が降る。それは交通渋滞も、お店も大混乱である。
『今日の雪は朝から夜まで降り続けます。外出は控えましょう』
はい、そうですと。天気予報を見ながら、暖房の利いた部屋でゆっくりと寛ぐ。”功雪”の能力を持つ女性。みかんを食べて、温かいお茶も飲んで、幸せな気分だ。
会社から電話が掛かってきて、今日は雪の影響で仕事はなし。自宅休養。無理もなし。できないことはできない。それが幸福の一つ。無謀なことをしないのは、成功の証でもある。
「降って欲しくはないけれど、喜ぶ人もいる」
私とか、私とか。
「こんな時くらい、ゆっくりさせてと願います」
”功雪”は常日ごろ、マジメに働いた者達を休ませる。運のようにやってきた休日をもたらす能力。
大変なところもあるけれど、そんな日常と社会で役立つようにと、彼女は思って頼んだのであった。
◇ ◇
「そーいう能力もあんのか」
「そうだよ」
その話を聞いた広嶋は、すぐに思った。
「じゃ、俺とのんは店に入って温かい物でも飲んでいるな」
「いやいやいや!雪かきはしてよ!今年の雪、多くてやらなかったら潰れちゃうかも、危ないんだけど!」
悪天候の中でこそ、仕事に取り組む人がいる。それを忘れてはならない。