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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
85/192

3-39 プレゼント

 竜暦6557年12月22日


(あさっては転生前ならクリスマスイブか…)


 俺は釣りをしながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。

 竿にぴくぴくと反応がある。


(お!)


 俺は竿を反応に合わせてうまく竿を引き上げる。

 釣り糸の先に小さなピンク色をした魚が針に食いついていた。

 釣れたのは小型の鯛であった。

 ムニエルでもポワレでも、どちらでも美味しく食べれる。


(醤油と米があれば、鯛茶漬けとかも出来るのにな…)


 転生前の世界との共通点も多いので、この世界にも醤油と米がある可能性が高いと俺は考察している。

 可能性としては東端の国ヒノクスが位置的にも可能性が高いだろう。


 魔獣や魔石など転生前と異なる部分も多いとは思うが、旅をして思ったのは転生前の地球に近いという感覚だった。


 未来の地球?

 過去の地球?

 それとも平行世界の地球?


 俺の中では最後の平行世界パラレルワールドの地球というのが一番しっくりくると考えている。


 俺はそんな事を考えながら、釣り針にゴカイをつけて海に投げ込む。

 海を眺めると沖合いに漁をしている小型の船がいくつか見える。

 のんびりと釣り糸をたらしながら頬の撫でる風を楽しむ。


 そういえばクリスマスのことを考えていたなと思い出す。

 クリスマスといえば宗教だなと考える。


 この世界の宗教は精霊をあがめる多神教である。

 人々は良いことがあると精霊に感謝をし、悪い事があると精霊のせいだと不満の捌け口にする。

 その程度の関わりあいをしている宗教である。

 特別に精霊に願いをしたりしない。


 そういう関わりも魔獣がいると納得もできる。

 すごい力が精霊にあるなら、すでに魔獣は世界には存在しないであろう。

 魔獣の脅威に晒される人族にしては、過度な期待を精霊にしていない。


 また亜人族の現状を知っている人族の間では、精霊とは何らかの力はあるが対価を要求される存在としての認識がある。

 精霊神の加護で力は得たが、出生率の低下という種の存続が綱渡り状態というのは見ていて辛い。


 そういった中で精霊教会の立ち位置は「良いことあったら精霊に御礼をいいましょうね」という緩い組織となっている。

 あとはお布施を用いて図書館の管理と子供への教育に対して熱心に取り組んでいる組織という側面のほうが最近の主流になっていた。


 そういったことから、この世界ではクリスマスという概念がない。

 ないけれど俺としては、日頃のお礼をこめてプレゼントを送るにはクリスマスっていいなと思っていた。


(お歳暮とクリスマスを合わせた感じで、サリスとアミにプレゼントでもしてあげようかな…)


 そんな事を考えていると竿に反応がある。

 タイミングを合わせて竿を引き上げたが餌のゴカイが取れていた。

 魚のほうが今回は勝利したようだ。


 再度釣り針にゴカイをつけて糸をたらす。


(プレゼントなら何がいいかな?)


 俺は竿の先を見ながら考える。

 女性だしやっぱりアクセサリーかな?

 アクセサリなら指輪は重たいかな。

 いずれサリスには指輪を送りたいけど…

 無難にネックレス?

 普段私服を着ないし、ちょっと高すぎるのかな。

 なかなかいい考えが浮かばない。


 竿先が少し揺れている。


(おっと!)


 俺はタイミングよく竿を引き上げる。

 釣り針に先ほどと同じ種類の鯛が掛かっていた。

 今回は俺の勝ちだったな。

 俺は釣った鯛を袋に入れる。

 袋を見て、プレゼントはバッグとかでもいいかもなと思った俺がいる。


 今日はこれ以上は釣りに集中できないようなので釣りをしていた桟橋をあとにして活動拠点にしている家に戻る。


 サリスとアミが家の中で編み物をしていた。

 サリスに釣った魚を渡すと俺は買物にいってくると告げて街に出た。


 なにかプレゼントに良いものはないかと雑貨屋に行ってみる。


「いらっしゃいませ」


 俺は声をかけてきた店員にオススメの贈り物がないか聞いてみた。


「それでしたら、これはどうでしょう」


 そういって小さな聖魔石の欠片を使ったブレスレットだった。


(【分析】【情報】)


 <<ファインブレスレット>>

 聖属

 魔力 15

 耐久 30/30


「これってマジックアイテムですか?」

「そうですね、毒除けになってます」

「毒除け?」

「ええ、毒になると自動で解毒してくれるんですよ」

「凄い!解毒薬がいらないなんて」

「いえ、1度きりの使い捨てなので…」


 俺が勘違いしたことで店員が申し訳なさそうな顔をした。


「すいません、俺が早とちりしてしまって」

「いえいえ、デザインも可愛いですし万が一、魔獣に襲われて毒になっても一度だけ身を守ってくれるので贈り物として人気があるんですよ」

「高いんじゃないですか?」

「解毒薬を作る際に出る欠片を使用してますので、それほど高価ではないんですよ。これで銅貨20枚です」

「なるほど」


 俺は少し考える。

 デザインも可愛いし実用的な部分もある。

 値段も安い。

 俺は3つ購入を決めて、それぞれ包装してもらった。

 代金を支払い、包装してもらったブレスレットをアイテムボックスにしまう。


(あと用意するものあったかな?)


 俺は他にクリスマスに因んだものはなにかと考えてみるが、やはり定番はチキンもしくは七面鳥、あとはケーキだろうと思った。

 たしかこの辺りにパティスリーがあったよな?


 通りを歩くと探していたパティスリーを見つけた。

 初めて中に入ってみたが、イートインスペースも併設されていて、かなり雰囲気の良い店だった。

 棚にある商品を見るとカップケーキとタルトが目立つ。


 店員にオススメの商品を聞いてみた。


「今の時期ならラズベリーのタルトか、マロンを使ったカップケーキが美味しいですよ」


 勧められた商品を見るが、みずみずしいラズベリーをたくさん使ったタルトはホールで頼めば三人で食べても問題ない大きさだった。

 マロンのカップケーキも良かったが、クリスマスの俺の中だけの雰囲気では、ちょっと合っていなかったので明後日はラズベリーのタルトを購入しようと決める。


「明後日ラズベリーのタルトを買いに来たいのですが予約できますか?」

「大丈夫ですよ、お名前は?」

「オーガント・ベックです」

「先にお会計だけお願いできますでしょうか」

「あ、じゃあ今日持ち帰りでマロンのカップケーキを3つ追加でお願いします」

「では銅貨29枚ですね、包装しますので少々お待ちください」


 そういって店員がマロンのカップケーキを袋に持ち帰れるように袋にいれてくれた。


「ではラズベリーのタルトは明後日とりにきますね」

「では、そのときはこの札をお見せください」


 交換用の札とマロンのカップケーキの袋を俺は受け取った。

 店の外に出ると俺は交換用の札をアイテムボックスにしまう。


(あとはチキンか七面鳥か…)


 俺はそう考えると、先日のツーヘッドダンドのお肉が残っている事を思い出した。

 まだサリスが料理につかっていないはずなので、明後日はツーヘッドダンドの料理をお願いしようと思う。


 明後日のパーティが楽しみだなとお土産のマロンのカップケーキの袋もってニヤニヤしながら活動拠点の家に帰る俺がいる。


2015/04/24 誤字修正


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