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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
84/192

3-38 実戦訓練

 竜暦6557年12月14日


 俺達が南部都市バセナにきて既に2週間以上経過していた。


 約2週間の間で起こったことはたくさんあるが、その中で特筆すべきは4点である。


 1つ目は俺は釣りを覚えたこと。

 港湾都市パムでは釣りというのは漁師が船で行うものであったが、南部都市バセナでは釣りの道具も容易に買うことができ、気軽に素人でも楽しめるレジャーであった。

 転生前を含めて人生初の釣りをして思ったことは、とにかく面白かった。

 釣り竿もって旅行にいき、各地の主を釣るのも面白いなと思うほど面白かった。

 ついでに釣った食べれる魚はサリスの料理の食材に化けているので、お金の節約も出来るという素晴らしいレジャーだった。


 2つ目はパワーハンドボウによる修行である。

 まずは活動拠点の家の居間で弦をレバーでひいてフックに弦をセットし、構えてからトリガーを撃つという流れを繰り返し繰り返し行った。

 当然部屋の中では危ないのでスパイクはセットしていないが、反復練習ということでこれを毎日おこなった。

 あまりにやりすぎてトリガーが不調を起こしキュターラ装備工房に駆け込んだ記憶は新しい。


 そういえばキュターラ装備工房のカウンターの女性は、トリガー不調事件の際に分かったが店主のキュターラ・ナオスさんだった。

 ナオスさんにパワーハンドボウを修理してもらったときは本当に嬉しかった。

 壊れた理由が反復練習のしすぎということを伝えると大声で笑われたときは恥ずかしかったのは内緒にしておこう。


 その反復練習の甲斐があって、この2週間で1分あたり2回から3回ほど射撃姿勢をとることが出来ていた。



 3つ目はサリスが魚介料理を極めるために漁港に行き始めたことだ。

 なんでそこまでするのかと思ったが、食べれる魚、食べれない魚、あとどうやって調理すればいいのかを地元の漁師に教わりにいっていたのだ。

 旅をしてからサリスは本当に料理の才能に覚醒したらしい。

 冒険者としてやっていけなくてもシェフとしてやっていけるのではと思ってしまうほどだ。


 最後の4つ目はアミが精霊教会の図書館に通いだしたことだった。

 育ったアンウェル村にはあまり本がなく、本を読んだりするのは本当は苦手だったらしい。

 しかし旅の途中で入手した例の精霊に関わると思われる石との出会いから、積極的に聖地に関する様々なことを調べたいと自分から言い出し図書館にいき始めたのだ。




 ここまでが約2週間の主な出来事だが、まとめると俺達は南部都市バセナでクエストを全くせずに、毎日充実した生活を過ごしていた。

 しかしそろそろクエストに行きたいねという話になり、今日は冒険者ギルドに初めて足を運んだのである。


 Eランクの掲示板のクエストを三人で緊張感なく眺める。

 あまりにクエストから離れていたせいで三人とも気が抜けていた。


 ・ボア討伐          銀貨9枚

 ・サハギン討伐        銀貨8枚


「あまりクエストの数がないわね」

「他の冒険者が条件のいい依頼票を既に持っていったかもな」

「かもですー」

「Fランクも確認しておこうか」


 Fランクの掲示板のクエストを三人で確認する。


 ・ツーヘッドダンド討伐    銀貨6枚

 ・ウェアラット討伐      銀貨4枚


「Fランクも条件のいいクエストは少ないわね」

「とりあえず今日は久々のクエストだし肩慣らしで簡単なやつがいいんじゃないかな?」

「ベックにおまかせです」

「そうね、ベックはパワーハンドボウの実戦訓練もしたいのよね?」

「うん」


 クエストを眺めて三人でどのクエストが訓練になりそうかを思案する。


「やったことのない魔獣を条件から外すとツーヘッドダンドかボアかな?」

「ボアは討伐数1匹だし、数をこなせないわよ」

「そうしたらツーヘッドダンドかな?」

「それがいいんじゃないかしら」

「数も3匹以上だし追加報酬も受け付けてるから、ツーヘッドダンドにしよう」

「はいです」


 俺達はクエスト依頼票を剥がし、受付の男性に冒険者証を提示した。


「ほう、二人がEランクで一人がFランクなのか。クランは組んでないのかい?」

「友人同士で組んでるんですが、クランは今検討中です」

「なるほどよく考える必要があるしな」


 俺達はツーヘッドダンド討伐のクエスト依頼票を提示する。


「この採取箱にいっぱいに肉を採取してくれ。あと出身がパムだが、この周辺の簡易地図は持ってるかい?」

「いえ、まだ持っていないです」

「そうか、では少し待っててくれ」


 そういって受付の男性が地図を持ってきた。


「冒険者ギルドで配布している南部都市バセナの簡易地図だ。もっていってくれ」


 俺は採取箱と地図を受付の男性から受け取った。


「あとくれぐれも近郊の浜辺の洞窟には近づかないでくれよ」

「なにかあるんですか?」

「漁師が見かけたら討伐依頼を出してるがサハギンがたまに住み着くのさ」

「なるほど」

「弱いとはいえ、数で攻められると少人数の冒険者では厄介なのでな」

「そうですね、気をつけます」


 そういって頭をさげて、冒険やギルドを出てから地図を眺める。

 北西の丘の上の林がツーヘッドダンドの生息地らしい。


「北西の丘にいるらしいので入ってみよう」

「はい」

「はいです」


 俺達は街の外に出て丘の上の林を目指す1時間後、目当ての林にやってきた。

 落葉した葉が一面に敷き詰められているのが印象的だった。

 枯れ草の茂みも少なく視界は確保できている。

 俺はサリスとアミにパワーハンドボウの実戦訓練を相談した。


「パワーハンドボウの訓練だけど、スパイクが当たるまでサリスとアミは攻撃の為に近づかないようにしてもらえるかな?」

「ようは当たったら私とアミが止めを刺すということかしら?当たらなかったらどうするの」

「当たらなかったら逃走されても追わずに見逃そうとおもう」

「まずは当てる事が出来るかを確かめたいのね」

「うん、あとは外したあとに、どの程度で次の射撃が出来るかを確かめたいのもあってね」

「毎日訓練してたし、かなり早くなってたわよね」

「でも、やはり実戦となると違うんじゃないかと思ってね」

「わかったですー」


 俺はそこまで説明するともう一点の気がかりになっていた連携について相談する。


「あと旅の道中でもあったけど、威力のある遠隔武器を使う際の連携で提案があるんだ」

「提案です?」

「どういった提案なの、ベック」

「合図を先に決めておいて、その合図によって連携をしやすくしたいと思ってる」

「会話より簡潔な言葉のほうが指示しやすいって事ね」

「うん、提案として『攻撃』が戦闘中の集中攻撃の合図、『散開』が戦闘中に敵との距離をひらく合図までは考えてるよ」

「わかりやすいです!」


 アミには簡単な指示は好評のようだった。

 サリスのほうは腕を組んで思案している。


「なるほどね、でもそれって魔獣一体との戦闘を想定した場合よね?」

「そうなるね」

「魔獣が複数の場合も考える必要がありそうね」

「そのあたりは活動拠点の家で、いろいろな場面を想定してじっくりと合図を考えていこうか」

「はいです!」

「それがいいわね」


 二人が首を少しだけ縦に振る。

 俺はそのあと、今回のツーヘッドダンドとの戦闘中にパワーハンドボウをつかって射撃をする場合、二人に『散開』の合図を出すと告げると、それについても二人は頷いてくれた


「打ち合わせはこのくらいかな。さて捜索するか」

「はいです」

「はい」


 俺達は落葉した葉が敷き詰められた林の中に足を踏み入れる

 ほどなくしてアミが前方の茂みを指差す。


(【分析】【情報】)


 <<ツーヘッドダンド>>→魔獣:パッシブ:土属

 Fランク

 HP 85/85

 筋力 1

 耐久 1

 知性 1

 精神 2

 敏捷 4

 器用 1


 俺は無言で二人に頷き、パワーハンドボウを構えて静かに近寄る。

 有効距離20mという話だったが、出来るだけ近づこうと進むと気配に気付いたツーヘッドダンドが二つの首を持ち上げるのが見えた。

 逃げられると思った俺は、構えたパワーハンドボウでツーヘッドダンドに向けてスパイクを撃つ。


 パシュっという射撃音がして打ち出されたスパイクは、ツーヘッドダンドをかすめて外れてしまった。

 攻撃に慌てたツーヘッドダンドが逃走を始める。

 俺は次のスパイクをセットしパワーハンドボウを構えて前を向くと、ツーヘッドダンドがかなり遠くまで走って逃げていたので、これ以上の射撃を諦めた。


「惜しかったわね、ベック」

「近づきすぎちゃったよ。焦って撃ったから外してしまったな」

「もっと離れてても平気ですー」


 アミが外したスパイクを拾って俺に渡してくれた。


「アミ、ありがと。ちょっと距離に注意してみるよ」


 林の中でツーヘッドダンドを再度探しはじめると、次は俺が木陰にいるツーヘッドダンドを見つけた。

 二人に合図を送り、俺は慎重に近づく。

 20m以上離れてると思えたが、俺はパワーハンドボウを構えてから慎重に狙いをつけてツーヘッドダンドにスパイクを撃つ。


 クアッっという音と共にスパイクがツーヘッドダンドの胴体に刺さるのが見えた。

 サリスとアミが一気に駆け寄る。

 俺は次のスパイクを手早くセットして、狙いをつける。

 アミが痛みで動きが鈍くなっているツーヘッドダンドの右の顔を殴る。

 サリスは足を狙って飛ぶ剣撃を放つ。


『散開!』


 俺の指示で二人がツーヘッドダンドから距離をとる、俺は10mほどの距離からスパイクを放つと胴体に深くスパイクが突き刺さった。

 かなりのダメージだったのだろう。

 ツーヘッドダンドの動きがいっそう鈍くなった。


『攻撃!』


 命中したのを確認して集中攻撃を支持する。

 俺はパワーハンドボウを背中に担ぎ、シェルスピアに持ち替えてツーヘッドダンドに飛び掛る。

 弱ったツーヘッドダンドはすぐに地に伏した。

 刺さったスパイクを見て威力を確認した。


「初撃は距離があったから、刺さり具合が浅いな」

「そうね」

「近くで撃ったほうは、かなり奥まで刺さってるです!」

「さすがに弓より強力ね、ベック」

「ああ、あとは戦闘中は死角になる位置から撃つほうがいいな」


 アミがスパイクを見ながらアイデアを口にする。


「スパイクに毒とかしびれ薬をつけるといいかもです」

「ああ、なるほど」

「そうね、そうすると幅がひろがるわね」

「キュターラ装備工房に今度相談してみるよ」


 俺達は夕方までパワーハンドボウの訓練としてツーヘッドダンド狩りを続けた。

 成果としては5匹のツーヘッドダンドをし止める事ができ、冒険者ギルドで報酬として銀貨6枚を受け取った。

 もちろん余った肉はサリスが食材として持ち帰る。


 今日の夕食はサリスがツーヘッドダンドの肉を使って料理を作るらしい。

 アミが久々のお肉で嬉しそうに笑っていた。

 俺も夕食が楽しみだった。


2015/04/24 誤字修正

2015/04/24 表現修正


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