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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
79/192

3-33 クレイパペット

 竜暦6557年11月23日


 カルオ村の冒険者ギルドを訪れた俺達はEランクの掲示板のクエストを確認する。


 ・クレイパペット討伐     銀貨15枚

 ・ボア討伐          銀貨12枚

 ・ジャイアントサーペント討伐 銀貨5枚


「クレイパペットとジャイアントサーペントはじめて見る名前ね」

「わたしも初めてです!」

「クレイパペットは3体の討伐、ジャイアントサーペントは1体討伐ってことは報酬から考えるとどちらの難易度も変わらないみたいだね」

「ベック、ジャイアントサーペントはどんな魔獣なの?」


 俺は魔獣図鑑を取り出し、ジャイアントサーペントのページを開いて二人に見せる。


「見た目は大きなスネークだな、毒はなくて締め上げてくる攻撃をするって書かれてるね」

「クレイパペットはどんな魔獣です?」


 アミが聞いてきたので魔獣図鑑のクレイパペットのページを開いて見せる。


「土で出来た大きな人形で、核となる魔石を取り出さないと復活するって書かれてるな」

「前に戦ったトレントに近いのね」

「書かれてる内容ではそうだね」


 掲示板の前でどのクエストをやるかで俺達は頭を悩ませた。

 金額で見ると手馴れたボア討伐がいい。

 しかし初めての魔獣との戦いも修行になる。

 修行の場合はクレイパペットをやるか、ジャイアントサーペントをやるか。

 サリスの新しい魔獣と戦いたいという強い主張が通り、最終的にクレイパペット討伐を行うことに決める。

 ジャイアントサーペントという話もあったが締め付けで密着されるというのはアミと相性が悪いだろうという理由で却下された。


 受付の男性にまず冒険者証を提示する。


「ふむ、偽造もないな。その年でEランクとは修行に余念がないようだね」

「はい、これをお願いします」


 そういって受付の男性にクレイパペット討伐のクエスト依頼票を渡す。


「討伐証明は殻の破片を提出してくれ。あと旅の途中ということなのでカルオ村周辺の簡易地図を渡しておこう」

「ありがとうございます」


 カルオ村を出てオリーブ畑を歩いて西の岩場を目指す。

 2時間ほど歩いたところに岩場があるが、ところどころで動く影が見える。


(【分析】【情報】)


 <<クレイパペット>>→魔獣:アクティブ:土属

 Eランク

 HP 173/173

 筋力 2

 耐久 2

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


(粘土の固まりが動いてるのか)


 クレイパペットをよく観察すると、ずんぐりとした粘土の胴体から太い腕が二本生えている。

 形状は子供向けの人形劇などに使うハンドパペットがあるが、それに非常に似ている。

 しかし身長は2mほどの高さがあるので威圧感がすごい。

 体表にはところどころ岩も貼りついているのが見える。

 右奥のクレイパペットが移動しているので足元を見ると、ずるずるとナメクジやカタツムリのように動いていた。


「あれがクレイパペット?」

「そうだね」

「スライムを大きくして手をつけて泥をまぶしたって感じね。あまり素早そうじゃないわね」


 サリスの言葉は的確だった。


「魔力を元に体を動かしているし、そういう意味ではサリスの言うようにスライムに近いかも」

「大きいですー」

「とりあえず一番手前のクレイパペットと戦ってみよう」

「ベック、マルチロッドは使う?」

「効くかどうか分かんないけど最初に火魔石を使ってみようか」

「じゃあ、お願い」

「はいです」


 俺はマルチロッドを構えて30mほど離れた場所のクレイパペットに火の玉を撃ち込む。

 火の玉は胴体にあたると弾けて胴体がえぐれるのがみえた。

 攻撃をうけたクレイパペットが俺のほうに体を滑らせて向かってくる。

 襲いかかる際のクレイパペットの移動はかなりの速さのようだ。


 アミが前に立ち塞がり二枚の盾でクレイパペットを受け止める。

 足を止められて、太い手を振りかざそうとしたとき横から太い腕を狙って鋭く剣を振るう。

 ドスっという音ともに腕が切断して地面に落ちる。


 腕を落とされたのを見て、アミがクレイパペットの胴体に右腕を振るい打撃を加える。

 しかし打撃であたった場所は凹むだけで特にダメージはないようだった。


 俺もシェルスピアに持ち替えて胴体に突きをするが、ズブっと胴体にめり込むだけで手ごたえがない。

 どうやら粘土状の体に有効なのは、切り落とすか、削るかであるらしい。


 切断された腕が盛り上がり再生した。

 粘土状の体を移動させて復元したらしい。


「サリス、腕の切断を優先して!」

「わかったわ」


 アミが近距離から打撃を放ち、クレイパペットの気を引いてるあいだにサリスが切り落とされては再生する腕を根気よく切っていく。

 俺もシェルスピアを本体を削るように槍の刃を振るいつづける。

 徐々にクレイパペットの胴体のサイズが縮んでいく。

 腕の再生につかう粘土状の体の移動のせいだった。


 アミが体表の岩を殴って砕いたときに何かにきづく。


「ここに何かあります!」


 見ると砕いた岩の陰に黒くて丸い殻がみえた。


「アミ、それを砕いてくれ!」

「はいです!」


 そういってアミが渾身の力をこめて篭手で殴りつけた。

 ガキンと大きな音がして殻が砕け散った。

 中から魔石が地面に落ちる。

 その途端クレイパペットは活動を停止した。


「大変だったわね、お疲れ様。アミ、ベック」

「ああ、こいつは大変だ」

「でも弱かったですー」


 そうアミのいうように確かに弱い。

 しかし倒すとなると時間がかかり大変なのだ。

 サリスがそれでも存分に剣がふるえた事に満足したようでアミの言葉に応じる。


「たしかに動く案山子って感じで良い修行になったわ。次はマルチロッドを使わなくてもよさそうね、ベック」

「うん、次は使わないようにしてみるよ」


 討伐証明の殻の破片を回収し次のクレイパペットを狙う。

 夕方までかかり、俺達は修行という名目で岩場にいた8体のクレイパペット全てを討伐してからカルオ村に戻った。


「これが討伐証明の殻の破片と買取希望のEランク魔石6個です」


 そういって俺は3体分の殻の破片と魔石をカルオ村の冒険者ギルドの受付の男性に提出した。


「ん、魔石6個って…。指定討伐数以外倒したのか!」

「はい、修行になったので岩場にいたクレイパペットを8体倒してきました」

「他のクレイパペットの殻の破片は回収してあるかい、あるなら一緒に提出してくれ」


 俺は言われたようにアイテムボックスに保管していた5体分の殻の破片を追加で提出した。


「…うむ、全部で8体分、確かにあるな」


 そういって受付の男性は奥にいき、報酬を持って戻ってきた。


「追加討伐分を含めた報酬銀貨40枚と魔石の買取額銀貨18枚だ、受け取ってくれ」

「ありがとうございます」


 そういって報酬を受け取る。


「しかし全て倒してくれたとは助かったよ。定期的に数を減らすために倒しているんだがオリーブ畑に入り込んでくるクレイパペットは村人にとって脅威でな」

「そうでしたか」

「8体も減らしたとなると当分は安心だろう。本当にありがとう」

「こちらも修行として存分に戦いましたので助かりました」


 そういってから冒険者ギルドをあとにし、夕食をとるために宿屋の前の食材屋兼料理屋に向かった。


「いらっしゃい」


 女性店主が大きな声で迎えてくれた。

 サリスが女性店主に何か話をしてから俺にいう。


「ここの厨房を食材を買えば貸してもらえるそうだから、今日は私が料理を作るわ」

「サリスの料理か、楽しみだな」

「わーい」


 アミが尻尾を振って喜ぶ。

 俺は奥のテーブルにつくとサリスが女性店主と話しながら食材を購入している姿が見えた。


(何を作ってくれるか、楽しみだなーー)


 そんなことを思いながら、書きかけの旅行記の記事の続きを書いて食事が出来るのを待っていた。

 30分ほどしてサリスとアミが料理をテーブルに運んでくる。


「ボア肉のソテーとカスレよ」


 いい香りがして気付く。


「サリスこれって」

「カオリダケを少量削って岩塩を削ったものと合わせた香り塩を使ってみたの」

「なるほど、それで香りがいいのか」

「ハーブと塩を合わせた香り塩を参考にして自分で考えたんだけど、どうかしら」


 俺は肉を一切れ口に運ぶ。

 肉汁と香りが口いっぱい広がり深い味わいを感じる。


「これはいい組み合わせだね」

「美味しいですー」


 俺とアミが絶賛するとサリスも肉を頬張る。


「予想以上に香りが引き立ってるわね」


 そこに女性店主が店内に漂う芳しい香りに気付いて声をかけてきた。


「これは良い香りだね、なんて食材の香りだい?」

「カオリダケですね」

「初めてきく名のキノコだね」

「ここより北のほうの村で取れる貴重なキノコなんですよ」


 俺はそういってアイテムボックスに保管していたカオリダケを取り出し女性店主に見せる。

 女性店主がカオリダケを見て匂いを嗅いで驚く。


「すごいきつい香りだね、でも嫌な感じがしないね」

「ええ、なので少量だけ使うんですよ」

「たしかにこの香りの強さなら少量で十分だね」

「はい」

「しかし世の中にはこういった食材もあるんだね」


 女性店主が見たことのない食材に興味を示しながら笑う。

 美味しい料理に使える食材は人を惹きつけるようだ。

 俺達は夕食を堪能し宿に戻る。

 明日は港湾都市バセナのひとつ手前のモタル村へ向かい出発だ。


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