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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
乳児期~少年期
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1-6 整理

「母様、母様~」


 午睡から起きた俺はイネスのそばに駆け寄り、足に抱きついて頬ずりする。


(でゅふふふ)


 内面では邪悪な表情をしているが、そんなことに気づかない母は微笑んでから俺を抱き上げた。


「ベック、どうしたの?」

「父様、いつ戻るの?」

「うーん、そろそろ戻ってくるはずよ」




 2歳を迎えた俺は、かなりこの世界の情報を仕入れることが出来ている。


 もっといえば観測者レベルも先日レベル4まであがったのである。


 人族男性:オーガント・ベック:2歳:無職:HP11/11

 観測者レベル4

 所持スキル:【分析】


 最大HP値や耐久値が表示されるようになりました。

 怪我や病気によって弱っているとHP10/11などと表示されるので、かなーり有効ですね、はい。




 順をおって判明した情報を整理してみよう。


 時間については1分は60秒。1時間は60分、1日は24時間である。

 日付は12ヶ月365日の区分も転生前の地球にいた時のグレゴリオ暦と同じである。

 ちなみに年号については西暦ではなく竜暦を用いており今月は竜暦6549年の5月。


 時間感覚が転生前の地球と同じってのは俺としてはかなり有利である。


 あと現在住んでいるのはスタード大陸の西端の国ドルドス、その西方にある港湾都市パムである。


 他地域にあり交易している国として


 スタード大陸北端の国はアザラス

 スタード大陸東端の国はヒノクス

 スタード大陸南端の国はパラノス


 各国に船で移動する日数から逆算するとスタード大陸の大きさはほぼユーラシア大陸程度ある想定される。


 大陸中央部については魔獣や精霊が跳梁跋扈する未開の地の為に人族の国はないとのこと。


 王制の国はこの世界にはなく、各都市の代表たる豪商や大地主が代議員と集まって話し合いにより国としてのまつりごとを行っている。


 王制の国がない最大の要因は魔獣の存在である。

 もともと大陸中央部から現れる魔獣に対応するために各地域の人族が沿岸部に寄り集まり、そこでコミュニティを形成し互助会として大きくなった結果が現在の国の礎になっている。

 力をもった一部の有力者が好き勝手に混乱を起こすと、各都市からの支援がなくなるのである。

 俗にいう【村八分】である。

 そういった有力者は魔獣に対しても対処できなくなり果ては魔獣の食料になっていくのである。


 まあ魔獣が大きな障害になっている世界なので人同士が争うより、人同士で協力して魔獣に対処しようってなるのは当然の帰結である。

 人族共通の敵としての魔獣の存在ってのが人同士の争いをなくし平和をもたらしているのは皮肉だけどね~



 さて魔獣の存在については平和に貢献しているだけでなく、産業にも影響しているのである。


 というのも文明レベルは転生前の地球の西洋中世程度しかないこの世界であるが、魔獣から採取される魔石を加工する技術があり様々な生活に恩恵を与えているのだ。


 生活品の蝋燭などが代表的であり、火魔石の粉末を少量練りこみ魔力を与えることで簡易スペルで火をともす事ができるのである。

 他の生活品としては聖魔石の粉末を水に溶かした薬などもある。この薬は体力回復、解毒、消毒、殺菌などかなりの効果を有する。

 品質のいい魔石を利用すれば大幅な効果を得られる。ただし死者の蘇生などはムリらしいし人体の欠損も対処不可。

 あくまで自然治癒力の上昇および病原体などの死滅に対して効果があるというのが正しい認識である。


 ちなみに人族はマジックアイテムがなければ魔法は使えない。そもそも魔力を有していないのが人族なのだから。

 魔石加工技術で生み出されたマジックアイテムを使うことで魔法に近い現象を生み出すというのが正しい認識である。


 転生前の地球でも人は空を飛べない、化石燃料を使用した飛行機という機械を用いてなら空をとべる。

 この世界では複雑な機構を要する機械がない代わりに魔石加工技術があるのだ。



 ただし一部魔力を有した例外的な人族もいる。亜人族である。

 亜人族は太古に精霊神による加護を受けいれ魔力を有した人族であり、加護の影響で強靭な体を得ていて、それぞれ種族固有の特殊能力を持っている。

 しかし代償として妊娠する確立が極端に低下しているために人数は少ない。

 人族の学者によれば魔力の影響によって受精しにくいのではないかとの見解がある。

 人族と亜人族とのハーフも存在するが、その数は更にすくなくなるそうだ。


 ちなみに亜人族としては猫人族、犬人族、兎人族、熊人族、魚人族、その他多数。


 以前見つけたジャスチが書斎に隠していた本は、この亜人族を描写しているらしい。


 大きくなったら亜人族の里に訪問してみたいと本気で拳をにぎって思っている2歳児の俺がいる。



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