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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
67/192

3-21 ラトスレ村

 竜暦6557年11月11日


「サリス!うしろ!」


 俺はサリスに向かって背後の注意を促す。

 サリスが振り向きざまに迫っていたレッサーウルフを撫で斬りにする。


 無事だったサリスに安堵した俺は馬車の屋根から周囲のレッサーウルフに対してマルチロッドを使って風魔石の魔力の塊を放ち牽制にあたる。


「《ショット》!…アミ!右!」


 右から襲ってきたレッサーウルフの牙を盾でうけたアミは、そのまま体を捻って左手の篭手で思い切りレッサーウルフの横っ面を殴りつける。

 殴りつけられたレッサーウルフが回転しながら飛ばされる姿を見た俺は、アミは怒らせないようにしようと少し思った。


「《ショット》《ショット》」

「やぁぁぁぁ」

「ハッ!」


 俺達の声が周囲に響く。

 次々と倒れていくレッサーウルフ。

 10匹以上の群れで襲ってきたのだが仲間が倒れていく姿をみて怖気づいたのか、レッサーウルフが次々と逃げ出した。

 その姿を確認した俺はこれ以上戦闘しないように指示をする。

 ここでの深追いは危険すぎる。


「サリスとアミは魔石の回収をお願い、俺は馬を見るから」

「はい」

「はいです」


 魔獣の襲撃で二頭の馬は怯えていたが、さすがにパムの馬屋で馬車用に躾けているだけあり混乱はしていなかった。

 混乱し暴走する馬ほど危険なものはないのである。

 馬を落ち着かせるために馬車の後部から桶をだして水を飲ませる。


「9匹分の魔石回収終わったわ」

「馬のほうも問題なさそうだよ」

「よかったですー」

「また襲われると厄介だし先に進もう。あと御者はサリス、御者の隣はアミ、俺は馬車の上で警戒する隊形で進もう」

「わかったわ」

「はいです」


 林の中の街道でレッサーウルフの襲撃を退けた俺達の馬車は、また次の予定地のラトスレ村へと進み始める。


「しかし反応が遅れたらやばかったな。林の中のレッサーウルフに気付いてくれたアミのおかげだよ」

「えへへ」


 アミが猫耳を嬉しそうに動かす。


「弱いとはいえ集団になると手ごわいわよね、レッサーウルフって」

「うん、そうだね。一匹の強さなら迷宮のウルフの方が強いけど、集団は厄介だ」

「ですー」


 しばらく進むと、ようやく林を抜け丘陵地帯が見えてきた。


「不思議な地形ね」

「ああ、なだらかな低い丘が続いているね、かなり特徴的だな」

「はじめて見たです!」

「視界も開けたし、とりあえずサリスとアミは室内で休んでていいよ。御者は俺がやるよ」

「はいですー」

「じゃあ、まかせるわね」


 そういって御者を交代した俺は馬車を操作しながら今回の襲撃を思いかえす。


(今回の旅で馬車が襲われたのは初めてだったな…)


 俺達の馬車はシャルト村を出て林の中の街道を半日ほど進んだところで、レッサーウルフの群れに襲われたのだった。

 この世界の魔獣が恐怖の存在だということが身に染みた。

 魔獣を近づけないような仕組みがあれば、街道の行き来ももっと活発になるのにと本気で思う。

 御者を交代してから2時間半ほど経ったところで、ようやく次の予定地のラトスレ村が見えてきた。


 村に入り宿屋を教えてもらおうと村人にたずねると馬屋しかないという話をきいた。


「宿のない村があるのね…」

「頻繁に人がくるなら商売としても成り立つんだろうけど」

「私の生まれたアンウェル村も宿はないです」

「あれ、父様達はどうしてたの?」

「長老の家に泊まっていたです」

「あーー、そうだね。定期的に訪れるし客人の持てなしで泊めてもらってたのか」

「はいです」


 とりあえず村の中心にある馬屋まで馬車を進めて二頭の馬を馬屋に預ける。

 馬車は馬屋の隣の空き地に置いて、今回は馬車で寝起きすることにした。


「馬屋はあるのね」

「村人も馬を利用するから馬屋はどこの村でもあるとおもうよ」

「そうなのね」

「馬車を寝泊りできるようにしておいて良かったよ」

「本当に助かったわね」

「さて調理は中でしちゃう?」

「うーん、中じゃ匂いもきついし馬車の脇で調理するわ」

「了解」

「はいですー」

「じゃあ、調理は任せていいかな?」

「野外だし簡単なもので勘弁してね」

「うん」


 そういってサリスは室内から出て、馬車の脇で調理をはじめた。

 俺はその時間を利用してラトスレ村の冒険者ギルドを訪れた。


「ほー、旅の冒険者かね?」

「はい」


 そういって冒険者証を受付の男性に提示する。


「旅をするだけあるな、その若さでEランクとは」


 そういって受付の男性が驚いた。

 俺は情報を得るために受付の男性に周辺の状況を聞くことにした。


「ラトスレ村ですが、食堂とかはありませんか?」

「いや特にないな、宿もないくらいだし。そういえば宿泊はテントかな?」

「いえ、馬屋の隣の空き地に馬車を置かせてもらえたので、その中で休もうかと」

「なるほど馬車での移動なのか」

「はい」

「ここは小さな村なので、村人用の施設が数件あるだけだからな」

「そうでしたか」


 そこまでいって俺は途中でレッサーウルフに襲われた事を思い出し話を切り出した。


「そういえばシャルト村からラトスレ村へ移動している途中で林の中でレッサーウルフに会いまして」

「え!?」

「とりあえず撃退しましたが魔石の買取はここで行っていますか?」

「無事で良かったな。そうか報告は上がっていないが、あそこでレッサーウルフが出たのか…」


 受付の男性は考え込み始めた。

 ラトスレ村から離れているとはいえ、途中の街道で魔獣が出たのだから気にしないわけにはいかないはずだ。


「ああ、悪かった。情報ありがとう、村人に注意を促しておくよ」

「はい」

「あと買取だが、数があるなら大きな街で交換してもらえないだろうか」

「わかりました」


 俺は横目でクエスト掲示板を見るが掲示はないようだ。


「クエストもこの村では少ないのでしょうか?」

「ああ、小さな村だし、あってもFランクの仕事が主だよ。冒険者ギルドといっても、ここじゃ便利屋みたいなもんだから」

「なるほど」


 とりあえず討伐クエストはないということは分かった。

 あとは観光になる場所だけでもあればいいなという期待だけが俺の心を占有する。


「このあたりで見てまわる場所はないでしょうか?」

「うーん、あったかな…」


 受付の男性は真剣に考えているようだが思いつかないみたいだった。

 観光になりそうな場所もないということで俺は落胆した。


「申し訳ないな、特に思いつかなくて」

「いえ、こちらこそ無理をいってもうしわけありませんでした」


 俺は丁寧に受付の男性に頭を下げる。


「では、そろそろ料理が出来ると思うので失礼いたします」


 そういって冒険者ギルドをあとにした。

 馬車に戻ると、ちょうどサリスが料理を完成させたところだった。

 馬車の室内に料理を持って移動し夕食を食べることにした。


「馬屋のご主人に豆をいただいたのでカスレを作ってみたの」

「いい匂いだ」

「ですー」


 豆がほくほくして美味い。

 しかも体も温まる野外で手軽に作ったとは思えない料理だ。


「あとで馬屋の主人にお礼を言わないとな」

「そうね」

「ですねー」


 カスレを食べ終えて一息ついたところでサリスが馬屋の主人に聞いた話を俺にした。


「そういえば馬屋のご主人にこの辺りのことを聞いたら、リジュモ村への街道の途中に遺跡があるって話をしてたわよ」

「遺跡?」

「うん、巨大な石が立ってるって話だったわ」

「…」


 俺はさきほどの冒険者ギルドの話と今回の話を聞いて少し考え込んでから、二人に提案した。


「ラトスレ村だけど周辺に何も無いみたいなんだ。それで本当は1日馬を休めたい気もするけど、ここは無理してでも次のリジュモ村へ向かおうと思うけどいいかな?」

「私はそれでもいいわよ」

「ベックさんにおまかせです」

「よし、明日ここを出発して次のリジュモ村へ向かおう」

「はい」

「はいです」

「あとさっきの遺跡だけど街道の脇にあるなら少し見てみたいけどいいかな?」

「まかせるわ」

「おまかせです」


 馬車の中で俺達は灯りを消して横になる。

 場所は室内の前側に俺、真ん中にサリス、後側にアミという配置で川の字を書くように寝ることになった。

 仕切りのカーテンを閉めたとはいえ、サリスの距離が近い。

 俺は少しだけ勇気をだしてカーテンの隙間から手を差込み、サリスの手を握る。

 仕切りで顔は見えないが、サリスは少し驚いたようだけで手を握り返してくれた。

 俺はそのまま幸せな気分に包まれながら夢の中に落ちていった。


2015/04/19 誤字修正

2015/04/23 語句修正

2015/04/23 脱字修正

2015/04/23 表現追加


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