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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
64/192

3-18 エンペラーディア

 竜暦6557年11月8日


 牧畜都市レウリで過ごす最後の日を迎える。

 朝食を食べるとそのまま冒険者ギルドに向かい、Eランクのクエスト掲示板を物色する。


「レッサーウルフの群れ討伐ってどうかな?」

「今日1日しかないしきつくないかしら」

「たしかにそうだな」

「「…」」


 Eランク掲示板のクエストで手軽そうなものがあまりないのでサリスと俺は考え込んでいた。

 そこにアミが


「これはどうですか?」


 とFランク掲示板のクエストを指差す。


「エンペラーディアの討伐か」

「エンペラーディア?」

「ああ普段は大人しい小型魔獣B種で、頭に大きな角があるのが特徴かな」

「Fランクなのに1頭討伐で銀貨9枚は破格じゃない?」

「体が大きいからですよー」

「うん、アミのいうとおり小型魔獣B種でも体格はボアより大きく、ベアより小さいって感じの大きさかな」

「なるほどね」

「肉が美味しいから採取目的の討伐だね。場所も近いしこれにしよう」

「はい」

「はいです」


 俺達はエンペラーディア討伐の依頼票を手に取り、受付の女性に依頼票を持っていく。


「今日はFランククエストなのね」

「明日にはレウリを出発する予定なので、近場で済ませられるクエストにしたんですよ」

「今日までなのね、寂しくなるわ」

「旅の帰りにもまたレウリに寄りますので、その時も顔を見せますよ」

「期待してるわ」


 そういって受付の女性から採取箱を受け取って冒険者ギルドから通りに出る。


「ベック」

「ん」


 クエストに向かおうと歩き始めたサリスが俺を呼ぶ。


「やけに受付の女性と仲良く会話してたわね」

「いや、そんなに仲良くは…」

「「…」」


(あれ、なんで二人ともジト目なの?え?背中がゾクゾクしちゃうのは何故?これって恋なのかな…)


 予想外の状況に頭が軽くパニくった。


「なにか誤解してるようだけど、なにもないから安心して」

「ベックは勘違いされやすいんだから注意してね」

「ですー」


 なぜか怒られた。


「う、うん。もしかしてサリス、嫉妬してる?」

「そうね、嫉妬かな。他の女性とイチャイチャと会話してるから…」

「でもさ、アミとも俺同じように話ししてるよ」

「アミはいいの!仲間なんだから」

「あ、うん、そうなのね」

「仲間なのですー」

「とにかく安心していいからサリスやアミ以外とは仲良くなることないから。ほら遅れるからクエストいそごう」


 そういって話を終わらせレウリ郊外の林を目指す。


「さて着いたし先に打ち合わせしておこうか」

「うん」

「はいですー」

「エンペラーディアは基本大人しいから襲ってくることはない。というか人が近寄ると逃げていってしまうんだ」

「厄介ね」

「ああ、なのでエンペラーディアを見つけたら遠くからマルチロッドで狙撃してみようと思う」

「そのぐらい敏感に人の気配を感じる魔獣なの?」

「普通に倒すならまず弓矢を使うそうだからね」

「へー」

「そうですー」

「アミは倒した経験があるんだったね」

「はいです。父と一緒に狩猟したことあります」

「まあ、風魔石を使ったマルチロッドの長距離狙撃なら平気だとおもう。でエンペラーディアに攻撃が当たったらサリスとアミで接近して止めを刺して欲しい。いいかな」

「はいです」

「わかったわ」


 打ち合わせを終えた俺達は林の中に分け入り、エンペラーディアの捜索をはじめる。

 林の中で息をひそめながら慎重に捜索する。

 1時間ほど捜索してようやくエンペラーディアをアミが見つけてくれた。

 アミが林の奥を指差す。


(【分析】【情報】)


 <<エンペラーディア>>→魔獣:パッシブ:風属

 Fランク

 HP 121/121

 筋力 2

 耐久 2

 知性 1

 精神 1

 敏捷 2

 器用 2


 俺は二人に無言で合図をおくりマルチロッド構え魔力の塊を発射する。


「《バースト》」


 勢いよく飛び出した魔力の塊が異変に気付き首を持ち上げたエンペラーディアの胴体に当たる。


「キュィィ」


 エンペラーディアが呻く。

 その声を聞こえた瞬間サリスとアミは猛然とエンペラーディアに向かってダッシュする。

 痛みで反応の遅れたエンペラーディアは逃げるのを諦め、サリスとアミに向かって頭の角を突き出す形で突進してくる。

 アミが前面に立ちふさがり、盾2枚で突進を受け止める。


「ガキン!」


 角が盾にあたった瞬間大きな音がした。

 俺は大きな音にビックリしながらもサポートに徹すべくシェルスピアに持ち替えてサリスとアミに近寄る。エンペラーディアを3人で包囲することに成功した俺達は攻撃を繰り出していく。

 前面のアミは盾でエンペラーディアの攻撃を受け続ける、たまにエンペラーディアが俺やサリスを狙おうと向きを変えようとすると近距離からの拳による打撃で注意をひいてもくれる。

 左の側面に立つサリスは激しく動くエンペラーディアに斬撃で確実に傷を負わせていく。

 右後方に立つ俺は、後ろ足の蹴りに注意しながら槍を突き入れていく。

 3人での連携の精度がかなり上がっているのを実感できる。

 お互いにお互いを信頼し自分の役目を忠実にこなしていくことで戦いがスムーズになっている。

 そんな連携によってエンペラーディアの傷が一方的に増えていき、最後はサリスの斬撃で首に大きな傷をつけたところでエンペラーディアの討伐は成功した。


 地に伏しているエンペラーディアの魔石回収と肉を解体する作業を分担する。

 解体作業についてはアミの存在は非常に心強い。

 血抜きや皮の剥ぎ取り、肉の部位わけなど手馴れているのだ。

 さすが小さい頃から父親と魔獣の住む森で狩猟をしているだけあった。

 採取箱に肉と皮を入れたところで時計を見ると15時を少し過ぎていた。


「さてクエストも終わったしレウリに戻ろうか」

「ここでの活動も終わったのね」

「さびしいですー」

「いろいろな事があったしな、でも次の村でも新しい経験が待ってるだろうし先を進もう」

「…そうね」

「はいです」


 そんな会話をしながらレウリの街に向かう。

 街についた俺達はクエストの報告をし報酬の銀貨9枚を受け取ると、サリスのリクエストでレウリにきて二日目の夜に食べたチーズフォンデュをまた食べにいった。

 軽く茹でた温野菜にあつあつのチーズを絡め口に運ぶ。

 本当に美味しい。

 ここのチーズフォンデュは絶品だ。

 チーズの芳醇な香りが食欲をそそるし、溶かしたチーズに隠し味として少量加えられているミルクや葡萄酒やハーブなどが複雑に絡まりあい深いコクを生み出しているようだ。

 サリスが美味しいそうに食べている。

 頬の緩み具合で本当に大好きなんだなとわかる。

 アミは熱いのが苦手なのか、チーズを絡めた温野菜をふーふーと息を吹きかけてから食べている…

 その姿がかわいい!とにかくかわいい!俺がふーふーしてあげたいと思ってしまう。かわいい!

 ちょっと興奮している俺がいる。

 楽しい夕食が終わり宿に戻り、同じ部屋で明日の出発準備をする。


「3人同じ部屋で過ごすのも悪くなかったな」

「ワイワイ出来て楽しかったわね」

「はいですー」

「でも、やっぱりサリスとアミがいると俺つらいから次からは二部屋に分けよう」

「えっ、なにかつらかったのベック?」

「だってこんなにかわいいサリスとアミが一緒だと落ち着かない部分もあるしさ。特に男としては…ごめん」

「「…」」


 サリスとアミの頬が少し紅潮する。


「とにかく、次からは二部屋ってことにしよう。それで明日の出発は何時にしようか?」


 余計なことを言ったことに気付いた俺は話題を無理やり変える。


「…ベックにまかせるわ」

「…おまかせです」

「じゃあ、7時には出ようか」


 そういって俺達は早めにベッドに入り休むことにした。

 牧畜都市レウリの七日目の夜が過ぎていく。


2015/04/16 表現修正


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