3-17 称号
竜暦6557年11月7日
朝目覚めた俺達は昨日のミミックウルフの件が気になり朝食もとらずに冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの中に入るとクエスト掲示板を見ている冒険者が十数人いて朝から活気がある。
俺達がミミックウルフの件を確認するために受付に向かおうとすると、いつもの初老の男性に呼び止められた。
「君達に話があるから、そこの会議室にいこうか」
「はい」
そういって会議室に案内された。
初老の男性が名乗る。
「牧畜都市レウリの代表のバガワだ。今回の討伐の件ギルド代表として礼を言わせてもらおう。本当にありがとう」
てっきり事務の方だと思っていた人が代表だということを聞いて俺達は唖然とした。
『だって威厳がなかったもん』とかわいく言い訳をしたい気分だ。
「いえ、昨日説明したように討伐に関しては襲われために仕方なく戦った結果です」
「逃げようとしたが、執拗に追いかけてきたのだったね」
「はい」
「ふむ」
「それで死体の回収は行われましたか」
「ああ、魔獣の死体だが回収しておるよ。今は市民に討伐したことを知らしめるために中央公園に晒しておる」
「なるほど…」
「今回は被害者も出ておるし、口には出さないが市民の中で不安を抱えておるものも多かったのでな」
「…」
牧畜都市レウリの人々が未知の魔獣に怯えていたことを思うと次の言葉が出てこなかった。
この世界にとって魔獣の存在は大きな障害であることをあらためて見つめなおした。
代表のバガワが報酬について話しはじめる。
「あと重要な事だが情報の提供および討伐に関する貢献度から、君達に銀貨120枚を贈ることが今朝の行政庁との話で決定したので伝えておこう」
「「「え」」」
俺とサリスとアミは同時に変な声を出してしまった。
「あ、あの多すぎませんか?」
「いや行政庁としても予算は既に確保しているということなので額は問題ないぞ」
「他にも調査や討伐に参加していた地元の冒険者の方々がおりましたよね?」
「各冒険者にも相応の報酬が支払われるぞ」
「ほ、本当にそんな額なんですか?」
「もっと金額を多くしたほうがいいという意見をいうものも多かったんだが、調査や討伐に参加した地元の冒険者に支払う額を考慮するとこの金額が妥当ということに落ち着いたのじゃ。安心して受け取って欲しい」
これ以上質問をするのは失礼にあたると思い報酬を受け取ることに決めた。
「報酬の件ありがとうございます」
「私は大したことはしておらんよ。今後も冒険者として精進してくれ」
「「「はい!」」」
そういって事務の人が報酬を持ってきたので銀貨120枚を受け取った。
そこで思い出したかのように代表のバガワが冒険者証を提出してくれというので渡すことにした。
バガワは受け取った冒険者証をもって会議室の外を出て行った。
しばらくしてバガワが冒険者証を持ってもどり、俺達に冒険者証を返してくれた。
その行動が不思議に思い、理由を尋ねる。
「えっと冒険者証ですが、なにか問題でもあったのですか?」
「いや3人の冒険者証に牧畜都市レウリ代表として称号を書き込んだだけじゃよ」
「称号ですか!」
サリスがそれを聞いて驚く。
俺とアミはよくわからないので小首をかしげる。
冒険者証を裏面をよく見ると確かに今までなかった小さな判が押されていた。
これが称号だろうか。
「えっと称号って?」
「ベックは知らないのね、冒険者が偉業を達成した場合に付与されるものなのよ」
「そうじゃよ」
「なるほど」
「それで称号があるとランク昇格試験時に優遇される特典があるのよ!」
「えぇぇぇ!」
「優遇って…」
俺は変な声を出し、アミも驚く。
「ふぉふぉふぉ、まあ既に君達二人はEランクだしな。つぎのDランク時の昇格の時に少しだけ考慮されるだけじゃろう」
「それでもこれは凄いことですよね…」
「死傷者14名も出した魔獣事件を解決したのじゃから、称号を与えても誰も文句はいわんよ」
「そうですか…ありがとうございます」
「あと猫人族のお嬢さんはEランクに上がるのが早まるかもしれんな」
「えっ!」
「Fランク冒険者が称号を持ってることは、まずありえんからな」
バガワはアミに対して優しく微笑む。
「今は旅の途中という話なので活動拠点の街に戻った際にはギルドに顔をだして話をするといいぞ」
「は、はい!あ、ありがとうございましゅ」
軽く噛んだことで猫耳が紅くなるアミが可愛い。
まあ嬉しすぎて噛む気持ちもよくわかる。
「今回の件、いろいろとご配慮いただき、ありがとうございました」
「いやいや、困ったことがあったらいつでも言ってきておくれ」
「「「はい!」」」
そういって俺達は会議室を出た。
ボア討伐の報告がまだしていなかったのに気付いた俺は受付の女性に採取箱を提出しボア討伐を告げ、報酬の銀貨15枚を受け取る。
「未確認魔獣の件ではお世話になったわね」
「いえ、冒険者としての義務ですから」
「私がもう少し若ければねー」
「えっ?」
「なんでもないわ、彼女達がまってるわよ」
「はい、では失礼します」
そういって受付を離れると、受付の女性が肩を落とし聞こえないくらい小さな声で呟く。
「彼って優良物件よね…。彼女達が羨ましいわ…」
そんな受付の女性の呟きが聞こえなかった俺は時計を確認し11時になっていることに気付く。
思案してサリスとアミに提案する。
「もうお昼になるし、今日はクエストをやらずにレウリで過ごそうと思うけどいいかな?」
「それでいいわ」
「なにか食べたいですー」
「それじゃあ、街の外にも出ないし私服に着替えてから、食事に出かけてゆっくり過ごそうか」
「いいわね、ベック」
「はいですー」
冒険者ギルドを出た俺達は部屋に戻り私服に着替える。
もちろんサリスとアミが着替える時は俺は廊下で待っていた。
着替え終わり、街の中心部にあるレストランへ向かう。
サリスの私服は白いタートルネックのウールのセーターにワインレッドのロングスカート。
赤いポニーテルのサリスの姿が映える組み合わせだった。
かなり可愛い。
というか他の男に見せたくない可愛さだ。
その反則的な可愛さに俺は眩暈を覚える。
最近は冒険者装備ばかり着ているサリスを見ていたからとても新鮮だ。
アミの私服は襟付きのシャツの上にグレーのニットシャツを重ね、牛革のショートパンツとロングブーツだ。
ブラウンのショートヘアで少し先端がカールしているアミと活動的な格好の組み合わせは非常に似合ってる。
もう少し背が高ければスタイルもいいしモデルとして通用しそうだった。
しかも猫耳と尻尾がついてくる。
お買い得である。
なにがお買い得かは分からない。
でもきっと損はしないと思う。
そのくらいアミは可愛いのだ。
私服の美少女二人を見れて、ついつい俺の頬がゆるむ。
これが駄目人間の典型だと言われかねない緩んだ顔の俺がいる。
「さて着替えたし食事いこう」
「夕べからなにも食べてないし、美味しいものが食べたいわね」
「私もですー」
俺達は宿の受付で聞いた少し高級なレストランに向かう。
外観は落ち着いた雰囲気である。
お店に入るとテーブル席に案内された。
メニューを見ると美味しそうな料理の名前が並んでいる。
せっかくなので冒険者ギルドで称号を得た記念に3人でコース料理を頼むことにした。
前菜は綺麗に彩られた野菜とチーズのサラダ。
スープはカボチャのポタージュ。
魚料理はサーモンのソテー。
肉料理は牛頬肉の葡萄酒煮込み。
最後にチーズとデザートが出てきた。
美味しい料理をゆったりとした空間で食べるという贅沢な時間を満喫した。
レストランを出た3人はレウリの街を散策し羽を伸ばす。
本屋によったり、雑貨屋によったり、公園で休んだり。
3人で過ごす楽しい時間があっという間に過ぎていく。
2015/04/23 表現追加




