3-13 スリーアイズトード
竜暦6557年11月3日
「「「ふぁぁぁぁ」」」
「「「…」」」
俺とサリスとアミの三人は同じタイミングで大きく欠伸をしたことで、その場で沈黙する。
「ちょっと夜更かししすぎちゃったかな」
「トランプがいけないのよ…」
「ですー」
そう昨夜同じ部屋になった三人は夜遅くまでトランプのゲームに熱中してしまい寝不足だった…
ちなみに遊んだのはルールを教えたばかりのポーカーだった。
「とりあえず未確認魔獣の件もあるし気を引き締めようか」
「そうね」
「はい」
そんな話をしているとスリーアイズトードがいるという沼が見えてきた。
池の透明度は低く、何が潜んでいるか全く分からない。
「スリーアイズトードって、どんな魔獣なの?」
「小型魔獣A種で、舌をのばして襲ってくるのが特徴かな、あとは目が三つあって視野が広いよ。でも迷宮の魔獣よりは戦いやすいかな、群れてないだろうしね」
「なるほど」
「がんばります」
「隊形は打ち合わせどおりで」
「はい」
「はいです」
「さて、あとはどこにいるかだな」
俺は沼の怪しい場所を分析していく。
(【分析】【情報】)
<<スリーアイズトード>>→魔獣:アクティブ:水属
Eランク
HP 99/99
筋力 2
耐久 2
知性 1
精神 1
敏捷 4
器用 4
水草の合間から少しだけ目を出しているスリーアイズトードを見つけた。
(大きさは大型犬くらいあるな)
俺は無言で沼を指差すと、サリスが小声で話しかけた。
「いたの?」
「あそこの水草の合間にいるよ」
「よく分かりましたね」
「火の玉を撃ち込むから、あとはよろしく」
サリスとアミはうなづく。
「《バースト》」
火の玉が水面から出していた目にあたると思われた瞬間、スリーアイズトードは咄嗟に水中にもぐる。
水面に着弾した火の玉は大きくしぶきをあげただけで消えてしまいダメージは与えられなかったが、突然襲われたことでスリーアイズトードは沼から這い出て一番前にいるアミに向かってジャンプして襲ってくる。
アミは構えていた盾でスリーアイズトードを受け止め、地面にたたきつけた。
サリスはその隙を逃さずスリーアイズトードに駆け寄って頭を狙って剣撃を放つと右目を傷つける。
目を傷つけられ激昂したスリーアイズトードは舌を振り回しはじめたが、サリスは落ち着いて回避して舌を切りつけ、アミは舌の攻撃を受け止め続ける。
俺はマルチロッドに風魔石をセットし、後方から手足や胴体を狙って単発の魔力の塊をぶつけていく。
徐々に傷が増えていきスリーアイズトードがたまらず逃げようと向きを変えた刹那、サリスが胴体に剣を突き入れ、横に薙ぐ事でスリーアイズトードは絶命した。
「そこそこの強さだったわね」
「結構強かったです」
「火の玉はここじゃ使えなかったな…」
「そうね、ベック」
「迷宮の外で戦う場合、場所も広くとれるし風魔石のバーストやショットが良さそうだと思ったよ」
「たしかに、そのほうがいいのかしら」
「次のスリーアイズトードは最初から風魔石でやってみるね」
Eランク魔石回収し、解体した腿肉を採取箱にいれ、また沼を探索していくと同じように水草の合間から水面に目だけ出しているスリーアイズトードがいた。
(【分析】【情報】)
<<スリーアイズトード>>→魔獣:アクティブ:水属
Eランク
HP 105/105
筋力 2
耐久 2
知性 1
精神 1
敏捷 4
器用 4
「あそこにトードがいたよ」
「準備いいわよ」
「はいです」
「《バースト》」
狙いをつけて放った魔力の塊が勢いよく飛んでいき水面から出した目に当たり、痛みでスリーアイズトードが池から飛び出した。
スリーアイズトードが攻撃を放つ前に、サリスとアミが飛び掛る。
アミは前面に位置取り、片方の盾で攻撃を防ぎながら、片方の盾で顔を殴り注意を引く。
まるでボクシングのインファイターのようである。
サリスは横から剣で胴体を切りつけ致命傷を与える。
先ほどと違い、短時間で勝負がきまった。
「今の連携よかったわね」
「ですー」
「アミはあの距離で魔獣とやりあえるのは凄いな」
「あ、それは私も思ったわ」
「そうですか?」
本人に自覚はないようだが、空手の正拳突きやインファイトのボクシングスタイルといい生粋の近距離ファイターというのがアミの持ち味みたいだ。
いま使っているナックルシールドは拳の保護もする小型の盾だが、いっそ前腕部を覆うガントレットと盾を組み合わせた防具を使う方がいいかもしれないなと頭で考えをまとめる。
(装備工房で作ってもらえるかも…)
アミ専用盾付き篭手の製作を本気で考える俺がいる。
そんな考えをしている合間に、サリスとアミがEランク魔石回収と腿肉を採取を終えていた。
「ベックが考え込んでいる間に回収おわらせたわよ」
「あ、ごめん」
「別にいいわよ」
「じゃ最後の1体を見つけようか」
最後のスリーアイズトードを探し始めたのだが2時間立っても見つからなくて今日は諦めようとしたとき、運よく水草の合間から水面に目をだしたスリーアイズトードを見つけた。
(【分析】【情報】)
<<スリーアイズトード>>→魔獣:アクティブ:水属
Eランク
HP 103/103
筋力 2
耐久 2
知性 1
精神 1
敏捷 4
器用 4
俺は好機を逸しまいと、二人に合図を送り魔力の塊をすぐさま撃ち込む。
「《バースト》!」
魔力の塊が水面から出した目をかすめる。
スリーアイズトードは池にもぐり、舌をつかって泥を吐き出してきたので俺は誘き寄せるために《ショット》を繰り返し放つ。
泥の塊を避けるながら魔力の塊を打ち続ける俺。
たまにアミが盾で泥の塊を防いでくれる。
膠着した状態にしびれを切らし、スリーアイズトードが沼から這い出てきたが、サリスとアミが突進し隙のない連携によって仕留めた。
手馴れた動作でサリスとアミがEランク魔石回収と腿肉を採取を終える。
「風魔石の魔力をかなり使っちゃったみたいね」
「コスト高いのはしょうがないよ、目をかすめたのが失敗だったかな」
「でも、すごいです!」
Fランク冒険者のアミとしてはEランクの魔獣と渡り合えるだけでも凄いことであった。
「さて報告いこうか」
「わかったわ」
「はいです」
牧畜都市レウリに戻り、冒険者ギルドに討伐の報告に向かうと昨日も話をした受付の女性が驚いた顔をして俺達を見つめる。
「えっと、もう討伐完了したの?」
「はい、これが採取箱です、あとEランク魔石の買取をお願いします」
そういって採取箱と魔石を渡すと内容と確認した受付の女性がクエスト報酬の銀貨15枚と魔石の買取額銀貨9枚を持ってきた。
「こんなに短期間で終わるなんて…」
「そうなんですか?」
「沼に潜んでいるスリーアイズトードは見つけ難くてね、慣れた冒険者でも1日に1体狩れればいい方なのよ…」
「あー、なるほど。運よく水草の合間から目を出しているスリーアイズトードがいたんですよ」
「それでも凄いわね、その年でEランクってだけはあるのね」
「では、失礼します」
俺は挨拶をしてEランクのクエスト掲示板を見ているサリスとアミの元にいく。
「明日はこのフォーンかしらね」
「かな」
「フォーンて聞いたことないですけどー」
俺は魔獣図鑑を取り出し、
「体格はゴブリンに近いよ、特徴は下半身が鹿のようになっていることかな」
そういってフォーンのページを開き絵を見せる。
「素早そうですねー」
「この下半身からでの跳躍や蹴りが脅威かもしれないわね」
「まあ、明日討伐に行けば分かるさ、とりあえず依頼を受けるのは明日の朝にしよう」
「はい」
「はいです」
「さて夕食はどうしようかな…」
「この都市のオススメ料理を誰かに聞いてみたら?」
「そうだね、ちょっとまってて」
そういって受付の女性に俺は話しかける。
「すいません」
「クエストなら依頼書を剥がしてもってきてね」
「あ、クエストではなくて、もしよかったら今の時期のレウリのオススメ料理を教えていただけないでしょうか」
「ああ、貴方達は旅の途中だったわね」
「はい」
「じゃあ、このギルドを出て斜向かいのレストランで、美味しいチーズフォンデュが食べられるわよ」
「え、チーズフォンデュがあるんですか?!」
「ええ、牧畜でとれるミルクを使ったチーズもレウリの名産なのよ、それを使ったチーズフォンデュはオススメよ」
「ありがとうございます!」
牧畜都市レウリの二日目の夜。
夕食でチーズフォンデュを楽しんだ俺達の姿があった。
2015/04/16 表現修正




