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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
56/192

3-10 サルリ村

 竜暦6557年11月1日


 オレア村を朝出発したときは晴れていたのだが徐々に雲が厚くなっていき、見上げると今にも雨が降り出しそうな天気になってしまった。

 次のサルリ村に着くにはもう少し時間がかかる。


「雨具用意したほうがいいかしら」

「うん、出しておいて」

「しかし天気は悪いし寒いし最悪ね」

「たしかに体が冷えるのは辛いな、もうすこし進んだら良い場所を見つけて休憩しよう」

「そうね、暖かい飲み物を準備するわ」


 会話する俺とサリスの姿が馬車の御者台にあった。

 アミは室内で編み物をしていた。


「サリスも室内にいたほうがいいよ、室内は暖かいし」

「うーん、今日はベックの隣にいたい気分なの」


 そういって肩を寄せてきた。

 こういうサリスとのスキンシップは久々だなっと思った。

 パムを出発してからずっとアミと一緒だし、寝る部屋は別だし、そろそろサリスも俺との触れ合いが無い事が寂しくなってきたのかもしれない。

 俺はアイテムボックスからシートを取り出し、風除けとして俺とサリスの体を包むように指示した。


「暖かいわね」

「うん」


 肩を寄せ合いシートに包まれる俺とサリスの姿が馬車の御者台にあった。

 シートの内側で外から見えないことをいい事に、サリスが大胆にも俺の太ももに手を置いて俺の肩に頭を乗せもたれかかった。

 あまりの近さに芳しい香りがする。


(アミがいなければ押し倒すのにな…)


 そう思いながら手綱を握る俺がいる。


 雨粒が顔にあたる。


「どうやら雨が降ってきたらしい。サリスは室内に入ってて」

「でも…」

「風邪を引くと大変だからさ」

「…」

「本格的に降るまで距離を稼ぐけど、本降りになったら俺も室内に入るから平気だよ」


 そういってシートを外し、サリスを室内に入れて俺は雨具を羽織る。


(なんとか今日中につきたいな)


 雨具を着ているとはいえ吹き込む雨で全身ずぶ濡れになった俺だが、宿屋へつく事を優先し馬車を走らせつづけ、2時間ほど経った頃ようやくサルリ村が見えてきた。

 村の中に入ったが、雨のために通りを歩く人の姿が見えなかったので、近くの民家を訪ねて宿屋の場所を教えてもらう。

 村の中央にある宿屋につき、馬屋で馬車をあずけたまでは良かったが、雨に濡れ続けたせいで宿の主人と話をしている最中にガタガタと俺は体が震えだした。

 見かねた宿の主人が部屋をすぐ用意してくれて俺は部屋に運ばれ、そのままサリスとアミに服を脱がせてもらい体を拭いたあとベッドに横になる。

 ちなみに下半身だけは自分で下着を着替え、手拭で濡れた分身を拭き取ったので、サリスとアミを恥ずかしがらせることはなかった。

 ベッドで横になって体が少し温まったところで、サリスが宿の主人に作ってもらったポトフを持ってきてくれた。


「暖かいポトフを作ってもらったの、これで体を温めてね」

「ありがとう、サリス」

「代金の件も私が話をしておいたから平気よ」

「ごめんね」

「いいわ、無理して寝込まれても大変だから」


 サリスの優しさが身に染みる。

 俺はポトフを少しづつ口にする。

 煮込まれたジャガイモやニンジンが美味しい。

 食べ終わった後、またベッドで横になる。

 ポトフの器を主人に返したサリスが戻ってきた。


「ねえベック」

「なんだい」

「アミと話したんだけど今日は私がこの部屋にくるから、ベックの面倒みるわ」

「え?」

「私を襲うだけの体力は今のベックにないしね」


 そういってサリスが微笑んで俺の手を握ってくれた。

 サリスの手が暖かい。

 その暖かさが愛おしかった。


「ありがとう」

「もう無理しちゃダメよ」


 そういって俺の隣にきたサリスが俺が寝付くまで編み物を始めた。

 その愛おしいサリスの姿をぼーっと眺めていたら、いつの間にか俺は寝てしまっていた。


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