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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
54/192

3-8 オレア村

竜暦6557年10月30日


馬車の室内で横になって寛いでいると、馬車が止まった。

御者台のサリスとアミが俺を呼ぶ。


「ベックいいかしら」

「なにかあった?」

「ベックさん、この先どちらに向かえばいいです?」


アミが前方を指差す。

指差した前方を見ると街道が二手に分かれている。

案内らしきものは書かれていない。

俺は方位計とドルドス国内の簡易地図を取り出し確認する。


「方角的には西だね」

「はーい」


そう指示して室内に戻ると、すぐに馬の蹄の音が聞こえて馬車が動き出す。

俺は先ほどまでと同じように馬車の車窓をボーっと眺めてふと思う。


(旅の合間の娯楽が欲しいな…)


そう俺は暇を持て余していた。

サリスとアミは毛糸と編み針を持ってきており、それで時間をつぶしていたが、俺は宿で読む本くらいしか持ってきていなかったのである。


(失敗したな。しっかり移動時間のことを考えておけばよかった…)


腕を組み考える。

この世界で調達できそうな娯楽はなんだろうかと思いを巡らす。

多人数で遊べて場所をとらないとなるとテーブルゲームが頭に浮かぶ。

やはり定番はトランプだろう。

しかしこの世界にはトランプは存在しない。

存在しないのならば作れば良いと考える。

この世界でトランプに使える紙の調達はどうするか…

まずは厚みがそれなりにあること。

あとは裏面は傷など付かないこと。

品質の悪い紙では長期間は使えないだろうし…

紙以外の素材も考える。

コインを利用する?木片を利用する?陶器を利用する?

なかなか良いアイデアが浮かばない。

統一した大きさで薄いプレート。

プラスチックなんかあれば最高だけど無理だし…

そこまで考えたところで頭の中にひっかかる感覚があった。


(どこかでそんなプレート見たことあったよな…。どこだっけ?…)


「あぁぁ!!」


思い当たるプレートが頭に浮かんだ瞬間、おもわず大声を上げてしまった。


「ベック、どうしたの?」


御者台から心配そうな声がかかった。


「い、いや、ちょっと寝ぼけてただけだよ」

「そう、大きな声がしてビックリしたわ、気をつけてね」

「うん、ゴメンね」


俺は落ち着きを取り戻して、先ほどのプレートの事を考える。


(冒険者証のプレート、あれならトランプに使える!)


そう冒険者証の金属製プレートなら印字も可能だし、簡単には折り曲がることもない。

でも売ってもらえるのかが気になった。


(次の街の冒険者ギルドに言った際に聞いてみよう)


そう思い別の暇つぶしのアイテムを考える。

他に実現できそうなのは麻雀かなと思い浮かべる。

麻雀牌なら木片もしくは成形した陶器でも良い。

遊びの道具をあれこれ考え込んでいると、いつのまにか今日泊まるオレア村が見えてきた。


村の人に案内され馬屋のある宿屋兼酒場に宿泊することが出来た。

料金はセルレ村と同じだった。

この街道沿いでは、あまり値段に差がないようだ。


今回は103号室がサリスとアミ、104号室が俺という部屋割りだった。

荷物を置いてから、入口と受付が設置されている宿のホールに向かう。

ホールは酒場としても使えるようにテーブルがいくつか置かれているので、壁沿いにあるテーブルの一つに俺達は腰掛けた。


「ちょっと夕食について聞いてくるよ」


そういって宿の主人に夕食について聞いてみる。


「このオレア村では、ここ以外に食事ができる場所はあります?」

「ここだけだな、すまんな」

「いえいえ」

「そろそろ夕食をと考えているのですが特産品を使ったオススメ料理はなんでしょうか?」

「特産品は蜂蜜だな、料理にいろいろ使ってるね。今日はハチミツを使ったガレットなんてどうだい?」

「料金はおいくらでしょう」

「三人で銅貨30枚でどうかな」

「お願いします。」


俺は宿の主人に食事をたのんだ。


「そういえば、この村の冒険者ギルドはどこでしょう?」

「宿を出てまっすぐ北にいった街の中心部にあるよ」

「ありがとうございます」


二人の待つ席に戻る。


「今日の夕食はハチミツを使ったガレットだよ」

「デザートじゃない?」

「どうだろう、オススメしてきたから平気だと思うけど」

「甘いもの大好きです!」


数日過ごしてアミは俺やサリスに心を開いてくれたようで、最近ニコニコしてることが多い。

やはりパムの街で過ごしていたときに見せていたキリッっとした表情は、一人で生活するのに毎日緊張していたせいかもしれない。

こういったあどけない表情を見せるアミのほうが素の性格らしいなと思う。


テーブルで明日の話などをしていると主人が厨房からガレットをテーブルに持ってきた。


「キノコと卵のハチミツがけガレットと薬草茶だ」

「美味しそうですね」

「ああ、得意料理さ」


そういって料理をおいて主人がカウンターに戻る。


「「「いただきます」」」

「ん!これは香りがいいな」

「生地にもハチミツ使ってるわね…」

「甘すぎないし食べやすいですね!」


予想以上に美味しいガレットの美味しさに食事が進む。

適度な糖分は疲労回復にも役立つ。


お腹が膨れた俺達は、そのまま部屋に戻り明日に備えた。


2015/04/23 表現追加

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