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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【バセナ旅行編】
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3-1 旅行準備

【バセナ旅行編】開始

 竜暦6557年10月23日


 東大通りのカフェの店内でコーヒーを飲みながら、俺は慌しかったここ数日の出来事を振り返っていた。


 スプリガン事件の真相だがガニデ率いるクランが迷宮2階の探索中、小型魔獣に出会い攻撃をしかけたところ、巨大な姿に変貌し苦戦を強いられたという話だった。

 魔獣図鑑によるとスプリガンは大陸中央部にいる中型魔獣A種で大きさを自在に変化させることが出来るという記述があるので納得である。

 本来は10人以上の人数での討伐が基本らしいので、今回あの状況で倒せたことは運がよかった。


 あと同じ場所に冒険者ギルドが数回に渡って調査に向かったがコボルトの姿が毎回あるだけでスプリガンはいなかったそうだ。

 たまたま紛れ込んだのだろうということで報告書が作られたが、併せて迷宮での探索の際は小型魔獣であっても充分に特徴を確認しスプリガンでった場合は逃げるように通達が出された。


 スプリガンの蹴りを受け気絶したガニデの件だが、咄嗟に受身を取ったおかげで腕の骨を折っただけで無事だったという話を、仲間の命を助けられたと感謝を述べにきた本人に聞いた。

 俺としては甘い見通しで逃げる目論見が失敗し、サリスを悲しませることになった反省から素直に感謝を受け入れられずにいたが…

 その気持ちをガニデに伝えると、確かに反省も必要だが助けられた命があったことも覚えていて欲しいと言われ涙した。


「大丈夫?」


 目の前の席で飲んでいたホットミルクティーをテーブルに置き、サリスが心配そうにたずねてきた。


「ああ、ちょっと考え事をしていただけさ」

「…よかった」

「しかしせっかくの記念日が台無しになったなー」

「記念日?」


 不思議そうな表情をサリスがみせる。


「Eランク昇格試験の最後の指名クエストが終わった日は10月14日だったよね」

「うん」

「あの日は冒険者になってから、ちょうど3ヶ月目だったんだよ」

「あ…」

「スプリガンの件がなければ二人で迷宮から出た後にお祝いしようと思ってたんだよなー」


 おどけた仕草で残念そうに呟く。

 サリスもそのお祝いを想像して、あの件がなければと少し眉をひそめた。


「さてと事件から1週間以上ゆっくり過ごして体調も戻ったし無事にEランク冒険者にもなれたから南部都市バセナへの旅の準備を始めないと」

「うん」

「明日は馬車とかの準備で俺うごくから、サリスは持っていく服とかの荷物の準備しててね」

「わかったわ」

「あと野営はしないで途中の村か街の宿を利用するから、そのつもりでお願い」

「なら、安心ね」


 そういってからサリスがなにか思案して口をひらく。


「あのね」

「ん」

「今回の旅行だけど護衛を一人か二人つけたいんだけど…」

「必要?」

「旅行の途中で問題が起きたときに二人だけじゃ心配になっちゃったの」


 たしかにEランク冒険者になったとはいえ、はたから見ると10歳の子供が二人。

 旅行の最中に野盗に狙われる可能性もある。

 そういった点をサリスは心配しているようだった。


「ふむ二人雇うのは厳しいな…」

「旅の資金?」

「うん、俺達二人だけとして計算してたから」

「期間によるけど護衛の指名クエストをEランク冒険者に依頼すれば、ひとり金貨数枚必要よね…」

「予想外の出費は痛いなー」

「「…」」


 二人で腕を組んで考える。

 しばらく考え込んで妙案を思いついた俺は


「同行する冒険者が友人として一緒に旅にいくとかって話だとどうかな?」


 と口にする。


「え?」

「友人としてなら指名クエストを発行するわけじゃないし、出費を抑えられるよね」

「そうね」

「サリスの心配は子供二人だけの旅に見えるって点で間違いない?」

「うん」

「子供でも三人以上ならさ、野盗が襲撃を躊躇すると思うんだよね、どうかな」

「……うーん」


 サリスが悩んでいるので話を続ける。


「もし襲ってきても俺とサリスはEランク冒険者としての実力があるし充分対処できると思うんだ」

「…」


 まだ悩んでる。


「それじゃあ、こう考えてみたらどうかな、遠くの街に行く子供がいる。その子供の親からEランク冒険者の俺達二人に護衛の指名クエストの依頼があった。サリスはどうする?」

「それなら指名クエストの依頼を受けて護衛するわよ。……あっ!」

「うん、そう、最初、俺が提案した内容と同じ状況だよね」


 俺の意図をサリスが把握した。


「でも同行してくれる友人の冒険者なんていないわよ…」

「たしかにパム迷宮に篭ったほうが稼げるし、ほとんどの冒険者は迷宮で忙しいよな」

「うん」


 考えをまとめようとコーヒーを一口飲んだところで、ある女の子の姿が脳裏をよぎる。


「あの子はどうかな」

「あの子?」

「猫人族の子さ」

「あーー」

「それなりに一緒に戦えることが出来るだろうし、Fランクのソロ活動で迷宮にいく資金集めをまずするとかって話だったし」

「うん」

「師範からなにか聞いてる?」

「とくにはなにも」


 ちょっと思案してサリスにお願いする。


「じゃサリスの方で話を聞いておいてくれない?俺じゃサリスに余計な心配かけちゃうからさ」

「ええ、確かにそうね…」

「あの子が駄目なら教会や道場で一緒に習った友達に声をかけてみようか」

「そうだけど、戦えないとなると厳しいわよね…」

「まあ、そのあたりはサリスに一任するよ」

「…うん」


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