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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
42/192

2-26 粉塵爆発

 竜暦6557年10月11日


 午前中迷宮1階を進み、スライム3匹との遭遇のみで迷宮2階に辿り着いた。

 縄梯子を降りる。

 俺はアイテムボックスから升目の書かれた紙を取り出す。


「まず東1、南3、南2東1の順で移動して魔獣を確認しよう。戦闘は後回し」

「はい」


 東1の通路を進むとすぐに魔獣の気配がした。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・ゴブリン>>→魔獣:アクティブ:闇属

 Eランク

 HP 76/76

 筋力 4

 耐久 4

 知性 1

 精神 1

 敏捷 2

 器用 2


(2階にもゴブリンいたのか、少しだけ体力多いな)


「あそこにいるのって…」

「ゴブリンだね」

「ここにもいたのね」

「ああ、記入も終わったし南3に行こう」


 縄梯子のある最初の十字路に戻り南3を目指し進むと、壁に張り付く魔獣が見えた。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・スライム>>→魔獣:アクティブ:無属

 Eランク

 HP 61/61

 筋力 2

 耐久 8

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


(このスライムも少し体力あるのか…)


 同じ魔獣でも迷宮2階のほうが体力が多い傾向があるようだった。

 サリスに注意を促す。


「昨日はいなかったけど、スライムが3体、右の壁にいるよ」

「左側の壁沿いを進めば戦闘を回避できないかしら」


 サリスが提案してくるので、少し考えて倒すことに決めた。


「いやスライムなら焼いておこう、逃げ道の確保にもなるし」


 そういって火の玉を撃ち込む。


「《バースト》!」


 スライム3体の体は燃えて、あっという間に床の染みとなった。

 魔石を拾う。


「2階でもスライムのEランク魔石なのね」


 少し残念そうにサリスが呟く。


「スライムだしね」


 そう言ってから先を目指して進み南2十字路に辿り着く。


「まずは南ね」


 南3通路の魔獣の確認で先に進んだが姿は見えず、結局その先の南4十字路まで辿り着いてしまった。


「他の冒険者に倒されてたかな」

「そうみたいね」

「いま18時か、まず、南4東1、南5の調査をしてからテントで休息しよう」

「はい」


 西に進むと天井に張り付く魔獣が見える。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・スライム>>→魔獣:アクティブ:無属

 Eランク

 HP 65/65

 筋力 2

 耐久 8

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


(ここにもスライムか)


 サリスに合図を送り天井のスライムを指差す。


「南4西1はスライムだったね、次は南4東1を確認しにいこうか」

「はい」


 東を目指し歩き始めると、南4十字路に見覚えのある冒険者達の姿が見えた。


「お、珍しいところで会ったな」


 ガニデが声をかけてきた。


「「こんにちは」」

「たしかFランクだったよな、君達は…」

「えっと昇格試験で2階を探索することになったんです」


 そういって依頼票を見せる。


「なるほど、異例の早さでEランク昇格試験を受けている若者がいるとは聞いていたが君達だったか」

「「はい」」

「さて俺達はもう戻るところだが頑張れよ!」

「「はい」ありがとうございます」


 そういってから転移石でガニデのクランが迷宮外に転移していった。


「2階までくる冒険者って少ないって聞いてたけどガニデさん達はここまで来てたみたいだね」

「うん」

「クエスト受けていたのかな」

「確かにクエストがないと2階にくることはないわよね」


 パム迷宮の場合、多くの冒険者が金を稼ぐために集まって来ているが迷宮奥地に踏み込まなくても1階の弱い魔獣を相手にするほうが安全に稼げる環境であった。

 その環境の中で2階に下りてくるのは何らかのクエスト目的を持った冒険者であり、数も少なく冒険者同士遭遇することは非常に稀である。


「さて南4東1を見に行こう」

「はい」


 魔獣の確認作業を俺達は再開し先に進むと、また壁に張り付くスライムをサリスが指差す。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・スライム>>→魔獣:アクティブ:無属

 Eランク

 HP 60/60

 筋力 2

 耐久 8

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


「今日は…スライムデーかな…」

「たしかにスライムばかりね」

「戻ろうか」


 南4十字路まで戻ってきた。


「あとは南だね、慎重に進もう」

「はい」


 南の通路を進んだところで先に蠢く影が見える。


(【分析】【情報】)


 <<ラビリンス・レッドキャップ>>→魔獣:アクティブ:火属

 Eランク

 HP 110/110

 筋力 8

 耐久 4

 知性 1

 精神 1

 敏捷 1

 器用 1


 サリスに合図を送り小声で話す。


「レッドキャップ3体がいるね」

「倒しちゃう?」

「目的の魔獣だし倒そう」

「はい、で、どんな魔獣かしら」

「小型魔獣A種で、赤い円錐形の帽子に見える大きな角が特徴の魔獣だね」

「注意点はあるかしら?」

「基本はゴブリンやコボルトと一緒かな、魔獣図鑑によると角による攻撃が危険らしいね」

「たしかにあの角で突かれると…」


 サリスが危険な相手であることを認識する。


「作戦だけど1階では使ってこなかった闇のバーストを使ってみようと思ってるんだ」

「あれって微妙だったわよね」


 俺の使っているマルチロッドだがセットする魔石の種類によって追加効果が発生する。

 以前1階でサリスと検証した追加効果のだが


 ・火魔石 火の玉による攻撃で辺りに火をばら撒く

 ・土魔石 土塊による攻撃で辺りに泥をばら撒く

 ・風魔石 魔力の玉による長距離攻撃

 ・水魔石 水塊による攻撃で辺りに水をばら撒く

 ・木魔石 魔力の玉による攻撃で追加効果はいまだ不明

 ・空魔石 魔力の玉による攻撃で追加効果はいまだ不明

 ・聖魔石 光塊による攻撃で追加効果はいまだ不明

 ・闇魔石 闇塊による攻撃で辺りに黒い粒子をばら撒く


 となっている。

 追加効果が判明していない木魔石、空魔石、聖魔石については特定の魔獣に効果があるのだろうと想像しているが、まだそういった相手に出会っていなかった。

 結果としては迷宮1階で活動するにあたり火魔石、土魔石の使用率が高まっていったのである。


「闇のバーストってさ、黒い粒子が飛び散るけど行動阻害できないかと思ってね」

「それなら泥でいいんじゃない?」

「素早い敵なら泥でいいと思うけどレッドキャップは素早くないし一撃が怖いタイプだよね」

「うん」

「それで泥よりもあの黒い粒子のほうがいいかなと思ってね」

「うーん」

「反対?」

「以前話したよね、黒い粒子だけど目に入ると涙でちゃうし吸い込むと息苦しくなるのよ」

「うん」

「敵にも効果あるけど、私としたらあの黒い粒子の中に突っ込むのは遠慮したいわ」

「そっか…」


 マスクと防塵眼鏡があればなと、ちょっと考え込むが持ってないのだし別の案を提示してみる。


「じゃ、闇のバーストしてから魔獣が混乱したのを見て火のバーストしてみようか?そうすれば黒い粒子を吹き飛ばせるよ」

「それなら私が突っ込んでも平気かな…」

「素早い魔獣では、きついと思うけど鈍いレッドキャップならいける作戦だと思う」

「わかったわ、それで行きましょ」


 作戦も決まり実行に移す。


 レッドキャップ3体に闇塊を撃ち込む。


「《バースト》」


 レッドキャップに闇塊があたり黒い粒子を散布された。

 突然の攻撃で驚くレッドキャップだが黒い粒子の影響で目から涙を流し、息苦しく咳をし、その場を離れようともがく姿が見える。

 さっとマルチロッドに火魔石をセットしなおして火の玉を撃ちだす。


「《バースト》」


 火の玉が着弾すると今まで見たことのない大きな爆発が起こって俺とサリスがビックリした。


「え?!なにこれ!」

「驚くのはあとにしよう、サリス。今は先に止めを刺そう!」


 少し呆然としていたサリスだが俺の指示にハッと気付き、止めを刺すためにレッドキャップに斬り込んでいく。

 そこには既に事切れそうなレッドキャップが3体いたので、サリスが次々と致命傷を与えていった。

 戦闘が終わった。

 3体の死体からDランク魔石と帽子を回収する。


「粉塵爆発が起こったようだね」


 俺はそうサリスに話す。


「粉塵爆発?」

「細かい粉に火がつくと次々と連鎖的に火がついていくんだよ」

「怖いわね…」

「1階の検証の時に粉塵爆発がおきなくてよかったよ…」

「…あっ」


 サリスがそのことに気付いて、恐怖から体がぶるっと震えた。


「効果は高いけど、使う場面は注意しよう」

「うん、お願い…」


 時間も時間だし、青ざめた顔のサリスもいるので南4十字路に戻り休むことにした。

 昨日かったテントを取り出して手早く設置する。

 サリスがアイテムボックスから食事を取り出す。

 迷宮内で食べる夕食はバゲットサンドである。

 バゲットに飴色に炒めたオニオンとチーズと焼いたボア肉を挟んでいるサンドだ。


「オニオンが甘いし、ボア肉の肉汁もバゲットに染み込んでて美味しいな」

「どういたしまして」


 食事を終えるとアイテムボックスの水筒から紅茶をコップにいれる。


「紅茶美味しいわね」

「用意してよかったよ」

「今日は疲れたし、まずは俺が見張りにつくからサリスは先に寝ていいよ」

「そうさせてもらうわね」

「2時に起こすから見張りを交代しよう」

「うん」

「「おやすみ」」


 そういって軽い口付けを交わし、サリスがテントの中に入っていった。


(魔獣や冒険者が来ないなら、襲っちゃても…………)


 不謹慎な思いが沸き起こるが目の前に広がる迷宮2階の通路が視界に入り、俺がサリスを守るんだと気を引き締める。


2015/04/22 表現方法修正


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