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観測者λ567913と俺の異世界旅行記  作者: 七氏七
少年期【迷宮編】
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2-25 テント

 竜暦6557年10月10日


 朝から料理を教わりにサリスが来ていた。

 キッチンを覗くとイネスと一緒に余ったボア肉を干し肉に加工する作業をしている。

 作業の合間にいろいろと二人で話し込んでいる姿が見えた。

 二人に声をかけ、俺ひとり雑貨店に向かう。


(イネスと話すことでサリスの不安が少しでもなくなればいいな)


 そんな考えを巡らしたところで他の件も思い出す。


(そういえばロージュ工房の件は、まだサリスに秘密にしていたな…)


 オーダーした便器や馬車の件はサプライズで驚かそうと思ってまだ秘密にしていた。

 そのために共同開発の件も秘密のままで話をしていなかった。


(写真機の売上で生活にゆとりが出来ると話せば安心すると思うけど…まだいいか、開発失敗するかもだし)


 サプライズまで保留にしておこうと考えをまとめたところで、行きつけの冒険者用の雑貨屋についた。


 雑貨屋へ来た理由は迷宮2階の活動を考慮しテントを探すためだった。

 カウンターにいた男性に話しかける。


「簡易テントでオススメあるかな?」

「こちらへどうぞ」


 テントの売り場に案内してくれる。


「これが一番人気のテントですね」


 そういって折り畳まれたテントを勧めてきた。


「何人程度が横になれるのかな」

「大人3人ですかね」


 サリスと二人なら問題ない大きさだ。


「使い方は?」

「風魔石を利用していて簡単に膨らませることが出来ますよ、そのあとは付属の支柱を伸ばして固定するだけですね」

「なるほど設置に時間がかからないのはいいな」

「ええ、なので人気なんですよ」

「値段はいくらかな?」

「銀貨4枚となります」


 マジックアイテムとはいえ、布と支柱で銀貨4枚は少し高い。


「ふむ銀貨2枚ならすぐに購入するのだが…安くならないかな」

「銀貨3枚銅貨50枚でどうでしょうか」


 少し考え込む振りをして腕を組む。


「銀貨2枚銅貨50枚ならすぐに買えるのだが…しょうがない、家族と相談もあるので今日は諦めて帰るよ」


 男性が慌てて声をかけきた。


「でしたら銀貨3枚でどうでしょうか、それ以上はさすがに私どもとしても厳しくて…」

「銀貨3枚か、私の財布も厳しいがそこまで良くしてくれるのであれば購入することにしよう」

「お買い上げありがとうございます」


 商品が売れてホッとした顔をし男性がにこやかに笑う。

 俺としても狙った価格まで値引きさせたのでにこやかに笑う。

 代金を支払い、テントをアイテムボックスにしまい店を出た。


(さて良い買物も出来たし戻るか)


 オーガント家に戻ると干し肉作りを終えたようでイネスとサリスが居間でくつろいでいた。


「ただいま」

「おかえりなさい」

「おかえり、ベック」

「母様、サリスと冒険の相談があるので俺の部屋にサリスを連れて行ってもいいですか?」

「あらそうなの、干し肉の加工はもう平気だし大丈夫よ」

「ありがとう、母様。サリス、部屋にいこうか」

「はい」


 そういって俺の部屋にサリスを招き入れた。

 机に向かい、紙に縦線と横線を書いていき枡目を作る。


「えっと迷宮2階の話なんだけど」

「うん」

「昨日方位計を見たように東西南北に通路が伸びて升目上の構造のようなんだ」

「そうね」


 そういって升目の中心に縄梯子と書き込む。


「ここが2階の開始地点ね、で北の通路を北1として魔獣の名前ガルムを記入すると」


 縄梯子と書かれた上の枡に北1ガルムと書き込む。

 その様子をサリスが見つめて目を丸くして驚く。


「確かに2階ならこういった簡易地図が出来るのね」

「うん」

「これかなり見やすい地図になるわね」

「そうだね」

「同じように迷宮1階もこう表示できればいいのに…」

「迷宮1階は網の目のようになってて簡易的には表示できないな、仕方がないさ」

「でもベックの地図を作る腕って改めて凄いわね」

「そう?」

「前からいってるけど、それだけで食べていけるわ」


 スキル【地図】があるから自分の場合、さらに詳細に把握出来ている。

 しかしスキル内容を他人にあかすことが出来ない為、意思疎通を容易にする案として簡易地図を作ったのだが、これでさえ驚かれるとは…

 ちょっと戸惑いながら話をすすめる。


「まあ、それは置いといて昨日の2階の情報を書き込むね」


 北1      ガルム

 西1      レッドキャップ

 南1      なし

 南2      十字路

 南2西1    コボルト


 書き込んだ枡目を見せて


「これを埋めていけば迷宮2階の探索が進むと思うんだけど、どうかな」

「イメージしやすいし間違いなく捗るわ」

「よかった」

「うん」

「それで明日からだけど無理に戦闘しなくてもいいので魔獣の情報だけでも埋めていきたいんだけど、いいかな」

「はい」


 活動方針を決めてから次に本題を口にだす。


「それと大事な話を一つするよ」

「なに?」

「迷宮2階で活動するとなると迷宮1階の移動も含めて時間がかかるよね」

「そうね」

「日帰りの活動は厳しいから迷宮内でテントを使って休息し長時間活動しようと思ってる」

「…えっと一緒にテントで寝るのかな」


 ちょっとサリスがなにか想像したみたいでモジモジする。

 その姿を見て不覚にも興奮してしまった。


(もじもじサリスかわいいなーーーーー!このまま押し倒しちゃっていいかな?かな?)


 居間にイネスがいるのだと不埒な妄想を振り払い紳士的に話をつづける。


「それはないよ、交代で見張りに立つ必要があるから」

「…そ、そうね」

「でも家族に心配かけさせないように、話だけはしておいたほうがいいと思うんだ」

「うん」

「俺はあとで母様に話をしておくけど、サリスも義父様に話をしておいてもらえるかな」

「わかったわ」

「休みは一日置きじゃなく不定期になるけど、それで明日から活動しよう」


 相談を終えたあとイネスのいる居間に二人で移動し事情を告げ了解を得る。

 明日から本格的に迷宮2階の活動が始まるのだ。


2015/04/22 語句修正

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